官産学の三つを経験(伊藤園入社〜大学教授)
笹谷: はい。その後、農林水産省に戻り大臣官房審議官などを経て退職。その後、ご縁があって、伊藤園という会社に入社しました。『おーい、お茶』の伊藤園です。そこでは経営企画部長や取締役を経験したのですが、その時に「もっとお客様との接点を強化したい」という経営の意向があって「それなら企業と社会のあり方をもう1回考え直しましょう」ということになりました。
それが2010年ころだったのですが、当時、ちょうどできたのが『ISO26000』、ISOは日本語でいうと国際標準化機構による「社会的責任に関する手引き」です。ご存じだと思いますが、例えば環境であればISO14000シリーズ、品質であればISO9000シリーズというふうに、ISOが定めた規格があります。これらを満たしていれば、認証されるという仕組みです。いわば、きちんとルールを守って経営している会社であるというお墨付きがもらえるということです。
社会的責任に関する手引きは、160以上の国が10年がかりで喧々諤々議論して、いわゆる企業の社会的責任というのはいったいどうあるべきかということを議論した成果、それがISO26000です。これは認証の規格ではなく自主的に守る規格としてできました。
大谷: なるほど。ISOが次なる行動のきっかけになったのですか?
笹谷: そうです。ISO26000というのはいわゆる「企業の社会的責任」(CSR)のガイダンスになりました。これが、伊藤園が進めていた、社会と環境、お客様との接点強化に符合するものだったので、経営企画部長として、それをしっかり経営の中に入れ込む作業を始めました。
伊藤園で、茶産地の育成事業をしたり、茶殻のリサイクルをしたりという事業の説明などを通じて、いろいろな方と知り合いました。その結果、社長直轄のセクションとしてCSR推進部ができ、取締役としてそこの責任者ということになったのです。
大谷: そこでネットワークを広げられたのですね。
笹谷: はい。この『サステナブルブランド会議』とのご縁もそうですし、CSRやCSVの本を出していく中で、「グローバルビジネス学会」と「日本経営倫理学会」というふたつの学会にも入りました。そして今は、大学教授もしています。そういうふうに、官から始まって、官産学の三つを経験したのが私の人生だったんですね。