(第43話)「毎日の暮らしのなかに少しの学びを取り入れて。働き方も生き方もよりサスティナブルな方向へ(前編)」キコの「暮らしの塩梅」
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(第43話)「毎日の暮らしのなかに少しの学びを取り入れて。働き方も生き方もよりサスティナブルな方向へ(前編)」キコの「暮らしの塩梅」

「私によくて、世界にイイ。」が実現できる、エシカルな暮らしのカタチってなんだろう。仕事に家事に育児に……。日々生活を回すだけでも大変な私たちにとって、新しく行動を起こすのはエネルギーも時間も使うし、ハードルが高く感じてしまうもの。

でも日々の暮らしのなかで、少しでも”良い”につながることができたら?

当たり前の毎日のなかで、大切な家族も、世界も、そして私自身もほんのちょっぴり幸せになるような選択をしていけたらいいなと思うのです。

第42話では、生活が乱れがちな年末年始の体調を整えてくれる、ゆるファスティングの方法と適したタイミングについてお話ししました。

今回の記事からは、複数回にわたり、近年話題となっているSDGsをはじめとする環境問題に関する情報と接するときに、知っておきたい「学び」についてお伝えしたいと思います。

SDGs、暮らしにどう取り入れてる?

ここ数年で「エシカル」「エコ」「サスティナブル」といった言葉を見聞きする機会が増えました。

 

「エコバッグを使う」「マイボトルを持ち歩く」「リユース、リサイクルを利用する」などといった心がけは、ずいぶんと日常に溶け込んできたように思います。

またビジネスの世界でも、環境への配慮を意識することは避けられません。

 

そのきっかけのひとつとなったのが、2015年の、国連総会でのSDGsの採択です。

SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略称で「持続可能なよりよい未来をつくるために、地球上の人みんなで協力して取り組みたい課題と目標」を意味します。

 

貧困、飢餓、教育、福祉、ジェンダー、食や水の安全性、エネルギー、気候変動、環境保護など17の目標をかかげ、世界の誰一人取り残すことなく、2030年までにそれらの目標を達成することを目指しています。

 

17の目標それぞれには、「ターゲット」という、より詳細かつ具体的に行動するべき内容が設定されています。ターゲットは合計169の項目からなり、たとえば、SDGsの12番の目標である「つくる責任 つかう責任」の中には、12.8として「2030年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする」というターゲットが設定されています。

これを見ると、SDGsの目標達成のためには、国や企業だけではなく一人ひとりの意識の持ちようやライフスタイルのあり方が重要とされています。

 

皆さんは、日々の暮らしや仕事、考え方に、エシカルな価値観や環境への配慮をどのくらい反映できているでしょうか。

まずは無理のない範囲で、できることをされていると思います。

私もこれまでの記事で紹介させていただいたことなど、暮らしのなかから変えていけることに、自分なりに取り組んでいます。

 

その一方で、地球上のさまざまな問題を見聞きしていると、本当にこれでいいのだろうか、こんなことで何が変わるのだろうかと感じることも少なくありません。

 

一人ひとりができる範囲で行動を起こしていくことはもちろん大切ですが、同時に、もっと深い問題へアプローチしていくような学びも必要だと感じています。

 

今回のカテゴリでは、そのようなことを少し掘り下げて考えてみたいと思います。

それって本当にエコ?

企業の広告や身近な雑誌のトピック、商品のタグなどさまざまな場所で目にするSDGs。

「環境に配慮している」ことをアピールする文言や製品がここ数年でずいぶんと増えたように思います。

 

SDGsの実現、温暖化対策として行われている取り組みは多岐に渡ります。

私たちの暮らしのなかでも、レジ袋の廃止によりエコバッグを持ち歩くことが浸透し、プラスチックの削減を目的にマイボトルを持参する人も増えてきました。

さらに、プラスチックフリーの製品を使用すること、ヴィーガン食を取り入れること、環境に配慮された製品を意識して購入すること、クリーンエネルギーを扱う電気会社と契約するなど、個人単位で、積極的に「できること」が取り入れられるようになってきました。

 

これらの一つひとつの取り組みは環境に配慮されたものであり、未来を変えていく一歩となる大切な行動です。

ですが一方で、それらに取り組むことが免罪符のような役割を果たし「環境に配慮した暮らしをしている」「温暖化対策に貢献している」と満足して、現状に疑問を感じなくなったり、本当に必要なアクションを起こさなくなったり、というある種の思考停止状態になってしまう危うさがあることを忘れてはいけません。

「エコである」ことがビジネスになる現代

数多くの企業がSDGsに則り「地球環境によい」ことをしていると声高にアピールしている背景には、世界の投資機関がそのようなビジネスを行っていることを評価の基準としていることが大きく関係しています。

 

近年注目されているESG投資。ESGとは「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance:企業統治)」のことで、その3つの観点から企業の将来性や持続性などを評価し、持続可能性に配慮した経営を行っている企業に積極的に進めていく投資をESG投資と言います。

 

これまでは、企業の「財務状況がよい」「儲かっている」かどうかが投資にあたり重要な判断材料とされていましたが、ESG投資の広がりによって「環境問題への取り組み」「地域社会への貢献」「従業員への配慮」などの課題に取り組む姿勢や実績も含めて評価されるようになりました。

 

その背景には、2006年に国連でPRI(責任投資原則)が提唱されたことが大きく影響しています。

PRIとは投資の意思決定のプロセスに、前述した「ESG」の観点を反映させるべきとした世界共通のガイドラインのようなもの。短期的な利益を求める投資のスタイルを批判し、そのような投資を防ぐ目的もあります。

PRIには、世界の多くの投資機関が署名しており、ESGに取り組む企業は将来有望な投資先として期待されています。

 

ブランディングや企業イメージにも大きく影響するため、企業はこぞって「地球環境によい」SDGsビジネスに積極的に取り組み、そのことを前面に押し出しています。

 

しかし一方で「SDGs」に取り組むことの価値が高まるほど、実態が伴っていないにもかかわらず、あたかも「環境によい」ことであるかのように見せる「グリーンウォッシュ(※注)」ビジネスも拡大していることを、消費者である私たちはきちんと理解しておく必要があります。

 

(※注)グリーンウォッシュとは:英語で「環境に配慮した」という意味の「グリーン」と、「ごまかし・取り繕い」などを意味する「ホワイトウォッシュ」をかけ合わせた造語。企業やその商品・サービスなどが、根拠を示さず「エコ」や「環境に優しい」といった表現やイメージ写真を使ったり、環境に悪影響のある活動には触れずに一部の「環境によい」取り組みを強調したりするなど、正しい実態を伝えないまま消費者の誤解を招くような行動を、批判的にそう呼ぶようになりました。

日常の隙間に学びを取り入れて

ここまで、SDGsをめぐる話を少し批判的にとらえてみました。

SDGsが、今だけのトレンドや単なる消費行動を促すためだけのものにならないようにするためには、暮らしのなかでできることと同時に、商品や広告に掲げられたメッセージを鵜呑みにしないこと、自分や社会にとっての「当たり前」を一度疑ってみること、背景にも目を向けてみることが大切です。

 

環境問題に関する考え、ひいては自分自身の生き方を問い直すような考えは、自分一人では理解が深まらなかったり、悩んで立ち止まってしまったりすることもあると思います。

私自身そのように感じることも多く、だからこそ今回のカテゴリでもある”学び”の時間を日々の隙間に取り入れることを意識しています。

 

学びを通して、考えが整理されたり気持ちが楽になったり、自分の行動に筋を通していくための知識に触れることで、その難しさと向き合っていくことができるのではないでしょうか。

 

次回では、これまで私が触れてきた文献や情報で、いい切り口となるようなものをご紹介できればと思います。

【連載】キコの「暮らしの塩梅」を読む>>>

季子(キコ)

一児の母親。高校生のころ「食べたもので体はできている」という言葉と出会い食生活を見直したことで、長い付き合いだったアトピーが大きく改善。その体験をきっかけに食を取り巻く問題へと関心が広がり、大学では環境社会学を専攻する。

産後一年間の育休を経て職場復帰。あわただしい日々のなかでも気軽に取り入れられる、私にとっても家族にとっても、地球にとっても無理のない「いい塩梅」な生き方を模索中。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

季子(キコ)

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