愛着のあるものを長く使う。大量消費に流されない生き方のススメ エシカルファッションブランドINHEELS共同代表岡田有加さんの考えるおしゃれとは?
独自記事
このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
24,397 view
愛着のあるものを長く使う。大量消費に流されない生き方のススメ

Effortlessly sexy=気張らないセクシーさを目指し、自然体で雰囲気のある服や小物を作るファッションブランドINHEELS。INHEELSの服は、単にセクシーなだけではなく、布地が厚かったり、素材にこだわったりしていて非常に丈夫。その丈夫さには、代表者の大山多恵子さんと岡田有加さんのある想いが込められています。INHEELSの岡田さんにお話を聞きました。

愛着を持ったものを長く使うことがかっこいい

岡田さんは、ロンドンに住んでいた時にあることに気付いたそうです。それは、ロンドンっ子があまり新しいものを買わないこと。パーティに行くときにドレスがなかったら、誰か持っていないかと周りに聞いて借りて済ましたり、正規で買わずにビンテージとして中古ショップで購入したり。

また日本ではリサイクル・ショップや古着屋にいく客層は限られていますが、ロンドンにはおしゃれな古着屋さんといった風情のチャリティー・ショップ(慈善事業を行う組織・団体によって運営され、人々から寄付された中古品を販売して、その売り上げを慈善事業に活用する)がいっぱい。

チャリティー・ショップ(写真提供:cool-boom.jp)

びしっとスーツを着た人から高校生、老夫婦など様々な人がごくふつうに古着屋やチャリティー・ショップでものを購入しています。

洋服やアイテムを長く使うことや、古いものを使うことが貧乏臭いことや恥ずかしいことではなく、特別なことでもなく、当たり前のように根付いている。そういったロンドンに暮らして、岡田さんは安く新しいものをどんどん買うことに疑問を覚えたそうです。

岡田さんは、言います。
「『手持ちの洋服がぼろぼろになって、ほつれて、もう着られないから新しく買おう』と思うことって、日本ではあまりないのではないでしょうか。飽きたからといって、捨てたりタンスの肥やしになってしまったりする。そういった洋服の扱い方を想定すると、ペナペナで数回着たら痛んでしまうような安い洋服が出回ることになります。

でも、どんなに安い洋服でも、労働力も資源も使われています。痛みやすい、安い服が溢れ変えるようになったら、労働者も安く搾取され、資源もムダになります。それよりは、もっと愛着を持って長く着てもらえる洋服を作りたいと思いました。」

インドの生産者たち

長く使われるものにはストーリーがある

たとえば、大好きなおばあちゃんがくれた指輪や、やっとの想いで手に入れたカバン。旅先で偶然出会って一目惚れした洋服、知り合いのジュエリーアーティストが作ってくれたピアスなど、何らかのストーリーをもったものは、愛着があってなかなか捨てられないもの。

INHEELSはエシカル・ファッションを作ることで、洋服にストーリーを持たせようと考えているそう。「エシカル」とは、「倫理的」を意味する言葉で、現在ではエシカル「倫理的=環境保全や社会貢献」という意味合いが強くなっています。INHEELSではエシカルを「フェアトレード、オーガニック、エコ等、環境的・社会的に『いいこと』がある状態」と定義し、エシカルなファッションを作っているのです。

現在、多くのファッションメーカーが海外で生産を行なっています。ただ、4月にバングラデシュで縫製工場の事故があって問題になったように、海外では低い生産コストの影に有害な薬品に体を漬けて仕事をしたり、安い賃金しかもらえなかったりという厳しい労働条件や搾取の実態があることもしばしば。INHEELSでは、生産者の労働条件を徹底的に調べて、生産者を傷つけず、正当な対価を支払う工場と取引をしています。

また、素材選択にも一工夫が。天然素材を使うことが環境に良いとは言われていますが、環境だけを配慮してしまうと布地にこわばりが出てデザイン的に不都合が生じたり、素材が弱くなってしまったりします。長く着てもらえるためには気に入ってもらえるデザインや耐久性も絶対に必要。そこで、ポリウレタン混合のものや、バンブー混合の素材を使っているのです。

少しずつワードローブのエシカル度合いを高めていく

「新しい物をどんどん買ってもらう方が儲かるのでは? たくさん買ってもらわないとビジネスにならないのでは?」と思う人もいるかもしれません。でも岡田さんは、言います。

「INHEELSの洋服を毎シーズンごとに買って、前シーズンのものがタンスの肥やしになってしまうのは嫌なんです。『買う必要はないのに無理して買う』『着ないのに買う』、それじゃあつまらない。着回してもらって、お客さんのワードローブのなかで、少しずつエシカル度合いが高まっていってくれたらいいなと思います。」

撮影場所提供:Lapaz

肩の力を抜いてできることからエシカルを

「実は今日の服装もエシカル度高めなんですよ」と、岡田さん。着ていたのはINHEELSの新作Nadiaトップ、ロンドンのチャリティー・ショップで買ったピアス、以前のボーイフレンドがくれた指輪、その隣には今のボーイフレンドが表参道のセカンドハンド・ショップPass the Batonで買ってくれた指輪。靴はすべての商品が溶かしてリサイクルできるラバー素材を使ったもの。バックはアパレルブランドZuccaのデッドストック(製造されたが店頭に並ぶことなく何年も残っていたもの)。

「100%エシカルでなければいけないと考えているわけではなく、肩の力を抜いてできるところからやっていきたいので、黒いスキニーパンツは一般メーカーで体に合うものを探して買いました。」と岡田さんは言っていました。

また岡田さんは「服の交換会ホームパーティ」なるものも積極的に提唱しています。これは、「洋服の寿命」がほつれたり痛んだりという物理的な理由よりも、「飽きた」という精神的な理由にあるということに目を付けたため。自分にとって飽きた洋服でも、友人にとっては新しい洋服として楽しんでもらえて、資源の活用にもなるのです。

Attitude(意志、雰囲気、態度)のある女性に着てほしいというINHEELSのブランドイメージ通り、自然体でセクシーでありながら自分の考えを発信していく岡田さん。皆さんも、岡田さんの大量消費に流されない生き方を、生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

取材協力=INHEELS岡田有加さん

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)〜
http://www.ethica.jp

FelixSayaka

このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
TBS秋沢淳子さん鼎談(第5話)仕事とプライベートの両立
独自記事 【 2022/6/27 】 Work & Study
パシフィコ横浜で開催された「サステナブル・ブランド国際会議2022横浜」(SB 2022 YOKOHAMA)に基調講演の1人として参加されたTBSの元アナウンサーで現在は総務局CSR推進部で部長を務める秋沢淳子さん。 社業以外でも2000年に国際交流・教育支援・国際協力をテーマにしたNGO団体「スプートニクインターナシ...
TBS秋沢淳子さん鼎談(第6話)グローバルとインターナショナルの違い
独自記事 【 2022/7/4 】 Work & Study
パシフィコ横浜で開催された「サステナブル・ブランド国際会議2022横浜」(SB 2022 YOKOHAMA)に基調講演の1人として参加されたTBSの元アナウンサーで現在は総務局CSR推進部で部長を務める秋沢淳子さん。 社業以外でも2000年に国際交流・教育支援・国際協力をテーマにしたNGO団体「スプートニクインターナシ...
TBS秋沢淳子さん鼎談(第2話)Intercultural Programsで異文化体験留学
独自記事 【 2022/6/6 】 Work & Study
パシフィコ横浜で開催された「サステナブル・ブランド国際会議2022横浜」(SB 2022 YOKOHAMA)に基調講演の1人として参加されたTBSの元アナウンサーで現在は総務局CSR推進部で部長を務める秋沢淳子さん。 社業以外でも2000年に国際交流・教育支援・国際協力をテーマにしたNGO団体「スプートニクインターナシ...
冨永愛 ジョイセフと歩むアフリカ支援 〜ethica Woman Project〜
独自記事 【 2024/6/12 】 Love&Human
ethicaでは女性のエンパワーメントを目的とした「ethica Woman Project」を発足。 いまや「ラストフロンティア」と呼ばれ、世界中から熱い眼差しが向けられると共に経済成長を続けている「アフリカ」を第1期のテーマにおき、読者にアフリカの理解を深めると同時に、力強く生きるアフリカの女性から気づきや力を得る...
戦後の日本で衛生環境を改善したサラヤが、何故?アフリカの女性支援活動を始めたのか。安田知加さんに伺いました 〜ethica Woman Project〜
独自記事 【 2024/6/14 】 Love&Human
ethicaでは女性のエンパワーメントを目的とした「ethica Woman Project」を発足。 いまや「ラストフロンティア」と呼ばれ、世界中から熱い眼差しが向けられると共に経済成長を続けている「アフリカ」を第1期のテーマにおき、読者にアフリカの理解を深めると同時に、力強く生きるアフリカの女性から気づきや力を得る...
【ethica Traveler】 連載企画Vol.7 宇賀なつみ (終章)『Returning to TOKYO 〜サステナブルなフライト〜』
独自記事 【 2024/4/24 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブルな...
【ethica Traveler】 連載企画Vol.6 宇賀なつみ (第5章)ゴールデン・ゲート・ブリッジ
独自記事 【 2024/3/27 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブルな...
【ethica Traveler】 連載企画Vol.5 宇賀なつみ (第4章)サンフランシスコ近代美術館
独自記事 【 2024/3/20 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 本特集では、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブ...
【ethica Traveler】連載企画Vol.4 宇賀なつみ (第3章)アリス・ウォータースの哲学
独自記事 【 2024/2/28 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。  今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブル...
【ethica Traveler】連載企画Vol.3 宇賀なつみ (第2章)W サンフランシスコ ホテル
独自記事 【 2024/2/14 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブルな...
【ethica Traveler】連載企画Vol.2 宇賀なつみ (第1章)サンフランシスコ国際空港
独自記事 【 2024/1/31 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブルな...
【ethica Traveler】連載企画Vol.1 宇賀なつみ サンフランシスコ編(序章)   
独自記事 【 2024/1/24 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。  今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブル...
【Earth Day】フランス商工会議所で開催するイベントにてethica編集部が基調講演
イベント 【 2023/4/3 】 Work & Study
来たる4月22日は「アースデイ(地球の日)」地球環境を守る意思を込めた国際的な記念日です。1970年にアメリカで誕生したこの記念日は、当時アメリカ上院議員だったD・ネルソンの「環境の日が必要だ」という発言に呼応し、ひとりの学生が『地球の日』を作ろうと呼びかけたことがきっかけでした。代表や規則のないアースデイでは、国籍や...
トランスメディア方式による新しい物語~『サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビューティーに整える』(序章)と(第1章)の見どころを紹介!~
独自記事 【 2023/8/17 】 Health & Beauty
エシカではメディアを横断(トランス)するトランスメディア方式を採用し、読者の方とより深くつながる体験を展開しています。今回は、「サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビューティーに整える」の序章と第1章についてのあらすじと見どころをお届け!(記者:エシカちゃん)
トランスメディア方式による新しい物語~『サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビューティーに整える』(第2章)と(第3章)の見どころを紹介!~
独自記事 【 2023/8/24 】 Health & Beauty
エシカではメディアを横断(トランス)するトランスメディア方式を採用し、読者の方とより深くつながる体験を展開中。さまざまなメディアから少しずつ情報を得、それをパズルのように組み合わせてひとつのストーリーを見出す、新しいメディア体験です。 今回は、前回に引き続き、「サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビュ...
テーマは、ナチュラルモダン『自立した女性』に向けたインナーウェア デザイナー石山麻子さん
独自記事 【 2022/9/19 】 Fashion
株式会社ワコールが展開する、人にも自然にもやさしいを目指すインナーウェアライン「ナチュレクチュール」。オーガニックコットン100%のラインアップが注目を集め、肌あたりやシルエットの美しさが話題になっています。その期待に応える形で、今年9月に新作グループも加わりました。やさしさを突き詰めた製品は、どのような想いや経緯から...
幸せや喜びを感じながら生きること 国木田彩良
独自記事 【 2021/11/22 】 Fashion
ファッションの世界では「サステナブル」「エシカル」が重要なキーワードとして語られるようになった。とはいえ、その前提として、身にまとうものは優しい着心地にこだわりたい。ヨーロッパと日本にルーツを持ち、モデルとして活躍する国木田彩良さんに「やさしい世界を、身に着ける。」をテーマにお話を聞いた。
[連載企画]冨永愛 自分に、誰かに、世界にーー美しく生きる。 【Prologue】
独自記事 【 2021/3/1 】 Health & Beauty
20年以上、トップモデルとして活躍。究極の美の世界で生きてきた冨永愛さん。ランウェイを歩くその一瞬のために、美を磨き続けてきた。それは、外見だけではない。生き方、生き様をも投影する内側からの輝きがなければ、人々を魅了することはできない。「美しい人」冨永愛さんが語る、「“私(美容・健康)に良くて、世界(環境・社会)にイイ...
水原希子×大谷賢太郎(エシカ編集長)対談
独自記事 【 2020/12/7 】 Fashion
ファッションモデル、女優、さらには自らが立ち上げたブランド「OK」のデザイナーとさまざまなシーンで大活躍している水原希子さん。インスタグラムで国内上位のフォロワー数を誇る、女性にとって憧れの存在であるとともに、その動向から目が離せない存在でもあります。今回はその水原さんに「ethica」編集長・大谷賢太郎がインタビュー...
[連載企画]冨永愛 自分に、誰かに、世界にーー美しく生きる。 【chapter1-1】
独自記事 【 2021/3/29 】 Health & Beauty
ファッションデザイナーが描く世界を表現するモデルは、まさに時代を映し出す美の象徴だ。冨永愛さんは移り変わりの激しいファッション界で、20年以上にわたり唯一無二の存在感を放ち続ける。年齢とともに磨きがかかる美しさの理由、それは、日々のたゆまぬ努力。  美しいひとが語る「モデル」とは?
モデルのマリエが「好きなことを仕事にする」まで 【編集長対談・前編】
独自記事 【 2018/12/24 】 Fashion
昨年6月、自身のファッションブランドを起ち上げたモデル・タレントのマリエさん。新ブランド「PASCAL MARIE DESMARAIS(パスカルマリエデマレ、以下PMD)」のプレゼンテーションでは、環境に配慮し無駄を省いた、長く愛用できるプロダクトを提案していくと語りました。そして今年9月、ファッションとデザインの合同...
国木田彩良−It can be changed. 未来は変えられる【Prologue】
独自記事 【 2020/4/6 】 Fashion
匂い立つような気品と、どこか物憂げな表情……。近年ファッション誌を中心に、さまざまなメディアで多くの人を魅了しているクールビューティー、モデルの国木田彩良(くにきだ・さいら)さん。グラビアの中では一種近寄りがたい雰囲気を醸し出す彼女ですが、実際にお会いしてお話すると、とても気さくで、胸の内に熱いパッションを秘めた方だと...
【Earth Day】今年も地球環境について考えよう!「在日米国商工会議所」と「在日フランス商工会議所」が主催するethicaコラボイベントのご案内
イベント 【 2024/4/15 】 Work & Study
地球環境について考え連帯する国際的な記念日、アースデイが今年も近づいてまいりました! 私たちethicaは、2022年、2023年とアースデイイベントに基調講演を行い、3度目となった今年もメディアパートナーを務めます。2023年のアースデイを振り返りつつ、まもなく開催のイベント『Earth Day 2024: Movi...

次の記事

歌舞伎を楽しむならここも見て! 歌舞伎の美しい道具たち
女子会、パーティなどにチャリティーを加える女性、急増中!

前の記事

スマホのホーム画面に追加すれば
いつでもethicaに簡単アクセスできます