Effortlessly sexy=気張らないセクシーさを目指し、自然体で雰囲気のある服や小物を作るファッションブランドINHEELS。INHEELSの服は、単にセクシーなだけではなく、布地が厚かったり、素材にこだわったりしていて非常に丈夫。その丈夫さには、代表者の大山多恵子さんと岡田有加さんのある想いが込められています。INHEELSの岡田さんにお話を聞きました。
愛着を持ったものを長く使うことがかっこいい
岡田さんは、ロンドンに住んでいた時にあることに気付いたそうです。それは、ロンドンっ子があまり新しいものを買わないこと。パーティに行くときにドレスがなかったら、誰か持っていないかと周りに聞いて借りて済ましたり、正規で買わずにビンテージとして中古ショップで購入したり。
また日本ではリサイクル・ショップや古着屋にいく客層は限られていますが、ロンドンにはおしゃれな古着屋さんといった風情のチャリティー・ショップ(慈善事業を行う組織・団体によって運営され、人々から寄付された中古品を販売して、その売り上げを慈善事業に活用する)がいっぱい。
びしっとスーツを着た人から高校生、老夫婦など様々な人がごくふつうに古着屋やチャリティー・ショップでものを購入しています。
洋服やアイテムを長く使うことや、古いものを使うことが貧乏臭いことや恥ずかしいことではなく、特別なことでもなく、当たり前のように根付いている。そういったロンドンに暮らして、岡田さんは安く新しいものをどんどん買うことに疑問を覚えたそうです。
岡田さんは、言います。
「『手持ちの洋服がぼろぼろになって、ほつれて、もう着られないから新しく買おう』と思うことって、日本ではあまりないのではないでしょうか。飽きたからといって、捨てたりタンスの肥やしになってしまったりする。そういった洋服の扱い方を想定すると、ペナペナで数回着たら痛んでしまうような安い洋服が出回ることになります。
でも、どんなに安い洋服でも、労働力も資源も使われています。痛みやすい、安い服が溢れ変えるようになったら、労働者も安く搾取され、資源もムダになります。それよりは、もっと愛着を持って長く着てもらえる洋服を作りたいと思いました。」
長く使われるものにはストーリーがある
たとえば、大好きなおばあちゃんがくれた指輪や、やっとの想いで手に入れたカバン。旅先で偶然出会って一目惚れした洋服、知り合いのジュエリーアーティストが作ってくれたピアスなど、何らかのストーリーをもったものは、愛着があってなかなか捨てられないもの。
INHEELSはエシカル・ファッションを作ることで、洋服にストーリーを持たせようと考えているそう。「エシカル」とは、「倫理的」を意味する言葉で、現在ではエシカル「倫理的=環境保全や社会貢献」という意味合いが強くなっています。INHEELSではエシカルを「フェアトレード、オーガニック、エコ等、環境的・社会的に『いいこと』がある状態」と定義し、エシカルなファッションを作っているのです。
現在、多くのファッションメーカーが海外で生産を行なっています。ただ、4月にバングラデシュで縫製工場の事故があって問題になったように、海外では低い生産コストの影に有害な薬品に体を漬けて仕事をしたり、安い賃金しかもらえなかったりという厳しい労働条件や搾取の実態があることもしばしば。INHEELSでは、生産者の労働条件を徹底的に調べて、生産者を傷つけず、正当な対価を支払う工場と取引をしています。
また、素材選択にも一工夫が。天然素材を使うことが環境に良いとは言われていますが、環境だけを配慮してしまうと布地にこわばりが出てデザイン的に不都合が生じたり、素材が弱くなってしまったりします。長く着てもらえるためには気に入ってもらえるデザインや耐久性も絶対に必要。そこで、ポリウレタン混合のものや、バンブー混合の素材を使っているのです。
少しずつワードローブのエシカル度合いを高めていく
「新しい物をどんどん買ってもらう方が儲かるのでは? たくさん買ってもらわないとビジネスにならないのでは?」と思う人もいるかもしれません。でも岡田さんは、言います。
「INHEELSの洋服を毎シーズンごとに買って、前シーズンのものがタンスの肥やしになってしまうのは嫌なんです。『買う必要はないのに無理して買う』『着ないのに買う』、それじゃあつまらない。着回してもらって、お客さんのワードローブのなかで、少しずつエシカル度合いが高まっていってくれたらいいなと思います。」
肩の力を抜いてできることからエシカルを
「実は今日の服装もエシカル度高めなんですよ」と、岡田さん。着ていたのはINHEELSの新作Nadiaトップ、ロンドンのチャリティー・ショップで買ったピアス、以前のボーイフレンドがくれた指輪、その隣には今のボーイフレンドが表参道のセカンドハンド・ショップPass the Batonで買ってくれた指輪。靴はすべての商品が溶かしてリサイクルできるラバー素材を使ったもの。バックはアパレルブランドZuccaのデッドストック(製造されたが店頭に並ぶことなく何年も残っていたもの)。
「100%エシカルでなければいけないと考えているわけではなく、肩の力を抜いてできるところからやっていきたいので、黒いスキニーパンツは一般メーカーで体に合うものを探して買いました。」と岡田さんは言っていました。
また岡田さんは「服の交換会ホームパーティ」なるものも積極的に提唱しています。これは、「洋服の寿命」がほつれたり痛んだりという物理的な理由よりも、「飽きた」という精神的な理由にあるということに目を付けたため。自分にとって飽きた洋服でも、友人にとっては新しい洋服として楽しんでもらえて、資源の活用にもなるのです。
Attitude(意志、雰囲気、態度)のある女性に着てほしいというINHEELSのブランドイメージ通り、自然体でセクシーでありながら自分の考えを発信していく岡田さん。皆さんも、岡田さんの大量消費に流されない生き方を、生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
取材協力=INHEELS岡田有加さん
私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)〜
http://www.ethica.jp