傘かしげ、肩引き、おあいにく目つき。「江戸しぐさ」と聞くと、そういった仕草を思い浮かべる人が多いかもしれません。確かにそういった所作を学ぶとステキな女性になれそうですが、江戸しぐさの真髄はもっと奥深いということを聞いて、専門家にお話を聞いてきました。
教えてくださったのはNPO法人江戸しぐさの鶴見泉さん。鶴見さんは、江戸しぐさの伝承普及員として、多くの学校関係、自治体、企業など様々な依頼に応えて江戸しぐさについての講演をなさっています。
Kimono in the rain by Jon Wick 引用元:http://www.flickr.com/photos/jonwick/4012246392/
傘かしげ、肩引き、おあいにく目つき。「江戸しぐさ」と聞くと、そういった仕草を思い浮かべる人が多いかもしれません。確かにそういった所作を学ぶとステキな女性になれそうですが、江戸しぐさの真髄はもっと奥深いということを聞いて、専門家にお話を聞いてきました。
教えてくださったのはNPO法人江戸しぐさの鶴見泉さん。鶴見さんは、江戸しぐさの伝承普及員として、多くの学校関係、自治体、企業など様々な依頼に応えて江戸しぐさについての講演をなさっています。
まず鶴見さんが教えてくれたのは、江戸しぐさの「しぐさ」という言葉が、仕草ではなく思草、つまり「思い」が瞬時に行動になることを指すのだということ。よく聞く「傘かしげ」や「肩引き」なども、江戸しぐさの考え方が行動に表れたもの。行動だけまねるのではなく、考え方を学ぶことが必要です。
そもそも江戸しぐさは、商人のリーダー達が、狭い土地で様々な地域からやってきた人とともに思いやりの心で気持ちよく暮らし、商売を繁盛させていけるように、知恵を絞って築き上げた生活哲学。そのため、根本にあるのは、「お互いに教え合い助け合って、顔を赤らめたりしないですむように、楽しく、明るく、いたわり合って暮らしていこう」という気持ちなのです。
そんな共生の気持ちから生まれた江戸しぐさの根本姿勢は、「気づき」と「気働き」。たとえば、江戸しぐさでは「見てわかることは言わない」ということが当然とされていました。明らかに具合が悪そうな人に対して「大丈夫ですか」と聞くのではなく、その人の具合が良くなるように考えて気働きをすることが良しとされたのです。
また「結界覚え」と言って、自分の身の程、立場を考えて行動し、相手の領分を侵さないことも大切だと言われました。 自分自身のあり方を客観的に見て気づき、行動することが大切だったのです。
そして、相手を見るときは「人のしぐさをみて決めよ」と言われていました。これはその人の外見や立場などハードの部分だけではなく、どんな考え方をしているのかに気をつけて判断することが大切だということです。こういった具合に、どんな時も本質を見取り、気を利かせて行動することが大切だとされていました。
共生の気持ちと「気づき」「気働き」を大切にする根本姿勢をもったうえで、江戸しぐさとして様々な知恵や教えが積み上げられました。そのなかで内面からの美を育てるのに役立つと考えられることを、いくつか紹介しましょう。
江戸しぐさでは、一流の商人になるための成長段階に応じた子育てを「三つ心、六つ躾、九つ言葉、文十二、理十五で末決まる」としていました。具体的には、数え年3歳までは心を養い、6歳までに挨拶など社会生活を営む上で基本となる躾を身につけさせ、9歳までに「さようでございます」等の大人の言葉遣いや「お寒くなりました」等の世辞と呼ばれる会話の糸口となる言葉が言えるようにしました。また12歳までに親に代わってビジネス文書を書けるようにし、15歳までに自然観や人間としての倫理観を学ぶことが大切でした。このことから、働く人として何が大切だと江戸の商人が考えていたかがわかります。
「江戸の商家は女次第」と言われたほど、江戸では商売に女性の勘やマネジメントが重要なものだと考えられていました。そのため容姿の良さなど持って生まれたものよりも、その人が生まれてから努力して身につけてきたものを評価する傾向がありました。気配りができて明るく、冷静沈着であいづちをうまく打て、人間関係を円滑にできる人が美人とされたのです。自立してきりっと生きている人が好まれました。
江戸しぐさでは、大人は大人として振る舞い、毅然として判断をし、適切な対応をするのが良しとされていました。はしゃぎまわったり、周りの迷惑を考えずに行動する人は眉をひそめられる存在でした。
いかがでしょうか。江戸しぐさは仕事をうまく行い、周りの人と気持ちよく過ごせるよう自分を磨くために考えられたもの。江戸の時代に大切にされていた考え方を江戸しぐさに学べば、本当の意味で美しい女性になれそうです。
【もっと江戸しぐさを知りたい人へ】
日経ビジネス人文庫『江戸の繁盛しぐさ』越川禮子著 667円+税
三五館『江戸しぐさ事典』越川禮子・監修、桐山勝・編著 2,000円+税
取材協力=NPO法人江戸しぐさ 理事長 土門道典さん、理事 鶴見泉さん(http://www.edoshigusa.org)
※「江戸しぐさ」はNPO法人江戸しぐさの登録商標です。
私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)〜
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