そろそろ夏本番。夏休みの赤ちゃん連れの移動のことに頭を悩ませているパパ、ママもいるかもしれません。赤ちゃんが泣くのは自然なことではありますが、公共の乗り物を利用するのを躊躇している人もいるのでは? こういったパパ、ママが子育てをしにくい状況をなんとかする方法はないものでしょうか。
赤ちゃん連れの旅行がしやすいというトルコに、何かヒントがあるのかも。そう考えて、『トルコで私も考えた』の著者でトルコ人男性と結婚した漫画家の高橋由佳利さんにお話を聞きました。
Senol Yolal Ciguli ve Bulent /Some rights reserved by Sulukule Çocuk Atölyesi
そろそろ夏本番。夏休みの赤ちゃん連れの移動のことに頭を悩ませているパパ、ママもいるかもしれません。赤ちゃんが泣くのは自然なことではありますが、公共の乗り物を利用するのを躊躇している人もいるのでは? こういったパパ、ママが子育てをしにくい状況をなんとかする方法はないものでしょうか。
赤ちゃん連れの旅行がしやすいというトルコに、何かヒントがあるのかも。そう考えて、『トルコで私も考えた』の著者でトルコ人男性と結婚した漫画家の高橋由佳利さんにお話を聞きました。
高橋由佳利さんはこういいます。
「とにかく、トルコ人は赤ちゃんや子どもが大好きで、いつもメロメロ状態です。愛おしさがこみあげてたまらなくなったときの表現は『食べちゃう』で、赤ちゃんがいれば、髭もじゃの大男も『食べちゃう、食べちゃう』と連発しっぱなし。子どもが騒いでもにこにこと見ているんです。
その反応は親戚の赤ちゃんや子どもに対する反応だけではないのです。もう、みんなが赤ちゃんや子どもを見ると、かわいくて仕方なくて、目を細めているんです。そして、自分の子どもがよその人に迷惑をかけた時は別ですが、やんちゃをしてもあまり叱りません。なぜ叱らないのかを聞いてみたところ、『かわいすぎて叱れない』『子どもは社会の宝だ』と言うんです。」
高橋由佳利『トルコで私も考えた』トルコ嫁入り編 集英社文庫 ¥ 560+税 (2012-9-19)
また、トルコ人の子煩悩さは、びっくりするほど。『トルコで私も考えた』のなかにも、高橋さんのだんなさんの子育ての奮闘ぶりが描かれています。息子さんが生まれた時には、おしめを積極的に交換するだけでなく、ほんのちょっとだけ汚れたオムツを数分変えずにいたら血相を変えるくらい、赤ちゃんを大切にしていたのだそう。「オレの子だ。大切にして、子育てに関わるのは当たり前だ」という意識が強いのだと、高橋さんは教えてくれました。
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また、トルコでは子どもが風邪を引いて熱を出した時にも、大騒ぎをするのはお母さんよりお父さん。トルコ人は子どもが病気にかかった場合、それがちょっとしたことでもすぐに病院に連れて行きますが、連れて行くのもお父さん。会社を休んだり、午前休をとったりして病院に連れて行きます。会社の人も「仕事よりも子どもの方が大事に決まっている」と認めています。病気のとき以外も、お父さんが家に帰ってくる時間も比較的早く、多くのお父さんが家で夕食を家族とともに食べているのです。
トルコでは少年や若い男性も赤ちゃん好き。高橋さんが息子さんを連れてトルコを歩いていた時に息子さんが道で転んだら、高橋さんが助け起こすよりも前に、近くにいた若者がさっと助け起こして去って行ったそうです。
「トルコでは、お母さんが孤立して育児ノイローゼになるということは、私の知る限りではないです。周りの人がいろいろといってくるので、指図されてうるさいぐらい(笑)。おせっかいではあるけれども、慣れて聞き流せるようになれば、かなり子育ては楽になります。誰かが必ず見てくれるんですから。」と高橋さんは言います。
そもそも、トルコでは家庭が地域社会に対してかなりオープン。『トルコで私も考えた』のなかにも、たとえば、同じアパートメントの住人と野菜や調味料の貸し借りをしたり、朝ご飯に呼ばれたりといった具合に、家庭がかなり地域社会に対して開かれている様子が描かれています。
家庭内でもお父さんが密に子育てに関わるし、地域社会でも子育てに限らず何かと助け合うし、そもそもみんな子ども好き。お母さんが孤立無援で奮闘している状態はトルコにはほとんどないのです。
Senol Yolal Ciguli ve Bulent /Some rights reserved by Sulukule Çocuk Atölyesi
なぜ、こんなにも子どもをかわいがるのでしょうか。高橋さんが何人かのトルコ人に聞いてみたところ、「大人になったらどうせ辛い目にあったり、苦労をしたりするのだから、子どものうちはベタベタにかわいがって、甘えさせてやっても良いんじゃないか」と言ったそうです。
20年くらい前まではトルコは非常に経済状態が悪く、失業率は30%もありました。こういった状況で、大人になれば厳しい現実を知るのはわかりきっていました。
そういった時代の名残か、現在でも中学生くらいになれば大人として扱われ、男の子だったら親戚の女性をエスコートしたり重いものを持たされたり、女の子も家の手伝いをしたりと、こき使われるとのこと。
「でも、子ども時代にベッタベタに甘やかされて満足しているからか、大人として行動することを嫌がらないんです。自立が早いんですよ。」と高橋さん。
Children in the back streets of Sultanhmet/Some rights reserved by ccarlstead
トルコの子どもを取り巻く環境から考えると、公共の乗り物で赤ちゃんが泣いてお母さん、お父さんが困っていたら、周りの人が協力して子どもが泣き止むようにあやすのが当たり前。
「以前に、電車や飛行機のなかで赤ちゃんが泣いたことに対して『うるさい』と言った人に対して批判が殺到したことがありました。でも、私は思ったんです。『周りの人は何をしていたのかしら?』って」と高橋さんは言います。
つまり、トルコ風に考えると、赤ちゃんが公共の乗り物で泣いたら、それはお父さんやお母さんの責任だけではなく、周りの人の責任にもなるわけです。
「子どもや赤ちゃんの泣き声がうるさい」と考える風潮を変えるのはなかなか難しいことです。しかし、急激な少子化が危惧されている日本において、一人一人がもう少し「子どもは社会の宝」という発想で子どもと接していけば、子育てに優しい環境を作る一歩になるといえそうです。
太った女がモテる! ハゲた男が多い! 激甘なお菓子が大好き! 街、人、食事、習慣…。トルコの男性と結婚し、出産した作者が描く生活ルポ。ガイドブックじゃわからない魅力あるトルコの素顔が見えてくる。
高橋由佳利『トルコで私も考えた』トルコ嫁入り編
集英社文庫 ¥ 560+税 (2012-9-19)
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高橋 由佳利(たかはし ゆかり )日本の女性漫画家。兵庫県姫路市出身。1978年『りぼん』 (集英社) 夏の増刊号に掲載の「コットンシャツに夏の風」(単行本『お月さま笑った?』収録)でデビュー。初連載作は『それからのパスカル』。以降、同誌や『りぼんオリジナル』『マーガレット』(いずれも集英社)などに作品を発表。1990年ごろから、『ヤングユー』(集英社)に発表の場を移す。
高橋由佳利『トルコで私も考えた』トルコ嫁入り編 集英社文庫 ¥ 560+税 (2012-9-19)
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取材協力=高橋由佳利さん
https://twitter.com/kenantoruko
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