いつまでも幸せであり続けるため、女性にとって社会に出た後の人生には決断をしなくてはならないいくつもの分かれ道があります。
就職、恋愛、結婚、出産、子育て、そして中には起業をしたいと考えていらっしゃる人もいるでしょう。
東京・湯島で保護猫カフェ「ネコリパブリック東京 お茶の水店」を運営する徳永有可さん。彼女の生き方は、読者の皆さんにとって人生をより幸せに、より充実して生きるヒントになるのではないでしょうか?
何か面白そうだと映画学科へ
「私は今年33歳になります。水戸のお寺に3人兄弟の長女として生まれ、そこで高校卒業まで過ごしました。大学は日本大学芸術学部。映画を専攻しました。
でも、映画がすごく好きだったとか、将来、映画に関係する仕事に就きたいとか、そういうことは全くなくて、子供のころには演劇をやっていたり、高校時代には吹奏楽部でホルンを吹いていて、芸術的なことに興味があったんですね。それで映画学科に入れば何か面白そうだなと思ったんです。
大学の4年間はあまり勉強せず、サークル活動に熱中しましたね。私が入ったのは映画にでてくるような立ち回りを舞台でやる殺陣同志会。いわゆるチャンバラですが、それが好きだったというわけではありません。一目見て憧れて『格好いい、私もやりたい』って思っちゃったんですよ。その頃から何かやりたいと思ったら一直線に突き進む性格は、今も変わりませんね」
入社の決め手は社長の魅力
「卒業後は、あるインタラクティブ・エージェンシーのグループのシステム会社に新卒で入社しました。この時にも自分では何をやりたいかという目標もないまま、就職を決めなくてはいけない時期が近づいたある時、そういえば、説明会に行っていないなと思って、パソコンを開いて探したら、その会社があいうえお順のいちばん上に出ていたんです。それで説明会に行ったら、その時出てきた社長さんがとても魅力的な人で、すぐにこの会社に入ろうと決めました。
入ったものの、なかなか仕事に馴染めず、最初は泣いてばかりいましたね。
それでも、慣れてくるにつれてだんだんと仕事が面白くなって、その後、グループのウェブ制作会社に転籍して、ウェブのデザインをするプロデューサーになり、さらに3年間、大手の総合広告代理店に出向して車メーカーを担当した後、社会人10年を機に退職したんです。10年間でシステム開発やデザイン、マーケティング、広告などさまざまなことを経験できたのはよかったですね。
会社を辞めたのは、何か理由があってというわけではありません。10年やってそろそろ卒業してもいいかなと思ったのです。もともと私は、縛られることが嫌いでしたから、もっと自由に何かやりたいと考えたのです。でも、やはりその時も、具体的にこれをやりたいというものはなかったんですよ」
退社後1カ月で猫カフェと出会う
「現在の保護猫カフェ『ネコリパブリック』との出会いも、就職の時と同じように全くの偶然でした。
次に何をやろうかなと思っていた時、岐阜の本店を立ち上げた女性、猫共和国なので、彼女は首相と呼ばれているのですが、たまたまその首相のフェイスブックを見つけて、彼女の考え方やネコパブリックへの想いなどに共感して、これなら楽しくやれそうだと直感したのです。それでまったく面識のない彼女に岐阜まで会いに行って『私、これをやりたいんです』といいました。
去年の9月に会社を辞めて、首相に会いに行ったのが10月。今年の1月に現在の物件を見つけて5月にオープン。この間は自分でもビックリするほどのスピードでしたね」
恋愛の秘訣は「我慢しないこと」
「結婚をしたのは31歳の時でした。私は30歳までに結婚することが夢だったのですが、それを知っていた彼が、29歳の最後の日にプロポーズをしてくれたのです。
彼は2年先輩の同僚で、お互い第一印象は最悪でしたし、それぞれ相手もいたので、5年間は普通の知り合いでした。それがお互い傷心の時があって、慰め合っているうちに付き合いが始まって、結局結婚をすることになりました。
どうして彼と結婚したのかといえば、楽だからでしょうね。もちろん相手に対してドキドキすることは大切ですが、でも、いつもそうだと疲れてしまいます。
恋愛をうまく継続する秘訣を、私は『我慢しないこと』だと思っています。寝ている時の格好を気にしないで寝られる、そんな相手を見つけることですね」
子供は欲しいけど……
「結婚前も今も夫とケンカをしたことは一度もありません。私が会社を辞めて保護猫カフェをやるようになった時も、夫は何もいわずに『そうか、ちゃんと稼げよ』といっていろいろと応援してくれています。
ただ、一つだけ夫との間で意見が異なっているのは、子供に関してです。
私は欲しいと思っていて、仕事をやりつつ子供を育てたいのですが、夫は『いなくてもいい』といっています。理由としては経済的な問題がいちばん大きいので、もっと一生懸命仕事をして稼がないといけないでしょうね」
人の輪を広げることで物事が動いていく
「『ネコリパブリック』を立ち上げ、どうにか軌道に乗り始めた頃、会社員時代の先輩だったethicaの編集長にコンタクトを取り、現在は『ネコリパブリック』の運営の傍ら、ethicaのお仕事をお手伝いしています。
会社で仕事を始めてすぐの頃、辛いことだらけでした。その時、助けてくれたのは人でしたし、仕事をもらうのも怒られるのも人でした。そういう人たちとどうやって輪を広げていくか? 輪を広げることで物事が動いていくということを身をもって実感しました。
ですから、一つのことで満足することなく、自分の感性のままに活動して、人との輪を広げていきたいと思っています」
「私によくて、世界にイイ。」こと
「今、私がやっている『ネコリパブリック』で多くの猫たちに囲まれていると、本当に癒されて心もリフレッシュしていきます。それは私にとってよいことであることは間違いありません。
そして、この『ネコリパブリック』を通じて殺処分されてしまう猫を一匹でも少なくすることで、人も猫も幸せになって、それが世界にイイということにもつながっていくのではないかと思っています」
今回の取材・撮影協力店舗
ネコリリパブリック 東京お茶の水店
住所:東京都文京区湯島3-1-9 CRANEビル4階
電話:03-5826-8920
営業時間 平日 : 15:00 – 20:00 休日(祝日): 11:00 – 18:00
定休日 : 木(木曜日が祝日の場合、翌金曜日が休日)
http://www.neco-republic.jp
「ネコリパブリック 東京お茶の水店」Photo Gallery
ーーBackstage from “ethica”ーー
社会に出て始めから活躍できる新入社員は皆無です。
皆、お給料を貰いながら学んでいます。
彼女のように、最初は仕事に馴染めずとも、次第に自身が成長することで、徐々に仕事が面白くなってくるのではないでしょうか。
環境を変えることよりも、先ずは自己成長が大事ですね。
ethica編集長:大谷賢太郎
記者 清水 一利(しみずかずとし)
1955年千葉県市川市生まれ。明治大学文学部(史学地理学科日本史専攻)を卒業後、1979年、株式会社電通PRセンター(現・株式会社電通パブリックリレーションズ)に入社。クライアント各社のパブリシティ業務、PRイベントの企画・運営などに携わる。1986年、同社退社後、1987年、編集プロダクション・フリークスを主宰。新聞、雑誌(週刊誌・月刊誌)およびPR誌・一般書籍の企画・取材・執筆活動に従事。2012年「フラガール3.11~つながる絆」(講談社)、2013年「SOS!500人を救え~3.11石巻市立病院の5日間」(三一書房)を刊行。
私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp