村上萌(ライフスタイルプロデューサー・NEXWEEKEND代表)「挫折を味わったからこそ、今の私がある」
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村上萌(ライフスタイルプロデューサー・NEXWEEKEND代表)「挫折を味わったからこそ、今の私がある」

ライフスタイルプロデューサー・NEXWEEKEND代表 村上萌さん Photo=YUSUKE TAMURA (TRANSMEDIA)

フランスで開催されていた地球温暖化対策を話し合う国連の会議「COP21」が閉幕し、発展途上国を含む全ての国々が協調して温室効果ガス削減に取り組む新たな枠組み「パリ協定」が採択されました。

温暖化対策の国際的な枠組みが定められたのは18年前の「京都議定書」以来ですが、当時は先進国のみに温室効果ガスの排出削減を義務付けたもので、発展途上国を含む全ての国々を対象としたのは今回が初めて。世界の温暖化対策はさらに大きな一歩を踏み出したといえるでしょう。

そうした中、横浜市と環境に関する連携協定を締結したことを受けて、先日、イケア・ジャパンは企業のCSR(企業社会責任)担当者やメディアを対象としたイベント「みんなで向きあう気候変動~地球をよくする快適な暮らし~」を開催。UNHCR、横浜市、インフルエンサーの皆さんによるミニシンポジウムが行われました。

「みんなで向きあう気候変動」~ 地球をよくする快適な暮らし ~ COP21に向けたイベントの様子 Photo=YUSUKE TAMURA (TRANSMEDIA)

当日の出席者の1人、村上萌さんはライフスタイルアドバイザーとしてイベントのプロデュースやウェブマガジンを立ち上げるなど今、注目の女性です。

そんな村上さんに「ethica(以下エシカ)」編集長の大谷賢太郎がインタビューしました。

挫折からのスタート

大谷 村上さんは成蹊大学のご出身で、ミスキャンパスにおなりになったこともあるそうですね?

村上 ええ、昔の話ですが。

大谷 現在、「NEXTWEEKEND(以下ネクストウィークエンド)」の編集長をなさっています。大学を出てからどういう経緯で編集長におなりになったのですか?

村上 就職活動はしたのですが、会社には入らなかったんです。リーマンショックがあったりしてうまく行かなくて、2社ほど内定はいただきましたが、自分の中で納得できない部分があって、何かあるだろうと模索しているうちに何もなくて、そのまま大学を卒業してしまいました。それでニートになってしまったんです。

大谷 景気のいい時代だったらうまく行ったのでしょうが、リーマンショックの後はそうじゃなかったですからね。僕は今年42歳なんですけど、僕の人生であそこまで景気が悪くなったのは初めてでした。本当に衝撃的な出来事でした。

村上 それまで自分の中に中途半端な自信があって、自分は何とかなる人だとか、どこか自分にピッタリに会社があるはずだと思っていたんです。それで、4月1日にお友だちがみんな入社式に行っている時に初めて、根拠のない自信を持っていても動かなければ何にもならないということに気がついて、自分が持っているものを改めて見直してみたら、大したものを持っていないことが分かったんです。

大谷 なるほど。つまり、村上さんは挫折からスタートされたわけですね?

村上 ええ、その通りです。それで、自分がやりたいことよりもまず、自分ができることを見つけて、社会に対して私が何をすればお金をもらえるのかと考えて、企画書をたくさん作ったんです。特にジャンルも決めずに、これなら自分ができるという企画を立てて、いろいろなところにプレゼンに行きました。

大谷 それはどのくらいの期間だったのですか?

村上 半年くらいでしたね。でも、ほとんど何の成果もなく、どんなにプレゼンをしても「いいアイデアだけど、君にお願いをする意味は?」とかいわれて、世の中、甘くないんだなということを痛感しましたね。

Photo=YUSUKE TAMURA (TRANSMEDIA)

初めての仕事は4カ月で23万円

大谷 そこでもまた挫折があったわけですね。その頃、どんなアイデアを持っていったのですか?

村上 当時はまだ朝活という言葉はなかったのですが、朝がいいと思って、「これからは朝を楽しむ時代です」みたいな企画書を書いて、JAに持っていったりしたんですよ。朝ごはん何とか委員会を発足して、都内に加盟店を作って、そこにカードを持っていくと朝ごはんが食べられるというような、そんなアイデアをぶつけてみたんですが、結局、野菜ジュースをもらって帰ってくるだけでした。

もし、私がメディアだったり、すごく有名な人だったり、何かシステムを持っていれば全然違ったんでしょうけど、アイデアとしては面白いといわれてもそれだけで終わってしまっていたんですね。

大谷 それでも、まだ諦めずに頑張ったわけですね?

村上 ええ、そうです。やっているうちに、だったら、こういうふうにやってみようとか、メーカーに持っていって一つの商品に落とし込んだらいいのではないかとか、自分の中で具体的な改善案がいくつも見つかってきたんです。

大学生の時、起業している子とか世界一周した子とかいて、私もやればできると思っていました。でも、自分でやってみて初めて、できないことが分かってそこでようやく具体的にやるべきことが見つかったんですよ。それは本当にいい経験で、そこからさらに半年くらいして初めて受注した仕事が4カ月くらいかかって23万円でした。今考えるとすごく安い金額でしたが、すごく嬉しかったですね。

大谷 それはどんな仕事だったんですか?

村上 携帯電話の新機種のプロモーションでした。自分の考えたことがお金になったことがすごく嬉しくて、そこからお金をいただける価値の作り方が何となく分かってきました。

そして、いくつか仕事を積み重ねて企画が通るようになってきた時、プレゼンの最後に、「この部分は私がプロデュースするので、ここはこういうふうにするといいですよ」みたいな提案をするようになって、そのうちにライフスタイルプロデューサーの村上さんですって紹介されるようになって、お仕事をいただくようになってきたのです。

タイミング的にはちょうどSNSが出てきた頃で、自分のやった小さな仕事をまとめてちょっとずつでも書き続けていたら、それが止まらないで次の仕事につながっていったという感じでしたね。

3年前、「ネクストウィークエンド」を立ち上げる

大谷 そうなって初めて、会社を立ち上げようと思ったわけですね?

村上 フリーランスだと規模も小さいし、どうしても限界があります。自分がつねに現場に行かないと仕事ができないということもあります。現場の装飾からPR、片付けまで全部一人でやっていて、これじゃあダメだなということで、最初はアシスタントを探そうと思ったのです。

でも、私はカメラマンとかスタイリストではないので、アシスタントを雇っても、ライフスタイルプロデューサーというのは分かりずらいし、その人は私にはなれません。

だったら、誰にでも再現性のあることを作っていきたいし、それならアシスタントではなくて、ちゃんと会社にしてチームを立ち上げようと思ったのです。

大谷 それが「ネクストウィークエンド」という会社ですね?

村上 ええ、そうです。

大谷 「ネクストウィークエンド」という名前はどこから?

村上 今まで私がやって来たことのコンセプトとして自然に考えていたのは、お客さんが次の週末に手に取りたいって思うにはどうしたらいいか、次の週末に行きたいって思ってもらうにはどうしたらいいかということでした。つねに次の週末というシーンを考えていたのです。

それで、ネクストウィークエンドをプロデュースチーム名にしてウェブサイトを立ち上げました。3年前、2012年の6月でした。

大谷 3年前というと、景気が上向き始めるいいタイミングでしたね。

村上 そうかもしれませんね。それで、そういうウェブサイトなら一緒にやっている子も更新できますし、私以外の子がインタビューに行っても大丈夫だなと考えて、ジャンルとかも限定しないでとにかく走り回りましたね。

ライフスタイルプロデューサー・NEXWEEKEND代表 村上萌さん Photo=YUSUKE TAMURA (TRANSMEDIA)

売上は前年比101%でも長く続けたい

大谷 雑誌の話はどういう経緯でしたか?

村上 ウェブサイトを立ち上げるとすぐ、いろいろな会社さんから「ウチの商品を取り上げてくれませんか?」という問い合わせメールが入り始めました。その中に世界文化社さんのメールがって、あちらから「本にしませんか」と声をかけてくださったのです。ですから、特にこちらから働きかけたということではありません。

大谷 ずっと頑張ってきた甲斐がありましたね。

村上 最初からずっと「次の週末を豊かにする」というコンセプトで、今もいろいろなことをやっています。今スタッフは6人ほどになりましたが、私はそんなに有名にならなくてもいいし、大きくならなくてもいい。前年比101%でいいから一日でも長く続けたいと思っています。

大谷 それはサスティナブル、持続可能性の考え方につながっていきますね。

村上 今年初めて新卒の子も2人採用しました。ゴールは分かりませんが、海賊船みたいに宝島を目指して、少しずつ進んでいけたらいいですね。

大谷 今、村上さんからお話を伺って、挫折から始まっているじゃないですか。村上さんの話は読者にとってためになるし、励みにもなりますね。いい話だなあと思いましたよ。

リーマンショックの話にしても、実は僕もリーマンショックの時が34歳で、35歳までに会社を作りたいと思って、一回会社を辞めているんです。

ところが、リーマンショックで取りやめて、無職になってしまいました。ハローワークに行って大変な状況を知りました。僕の場合はたまたまもう一度サラリーマンに戻って、40歳までには起業しようと思っていたので、次のタイミングが39歳でした。それが2012年で、村上さんと同じ時期に起業しているんですよ。ですから、その当時の状況がよく分かるので、村上さんのお話にはすごく共感できます。

村上 大谷さんも、その挫折感があったから今につながっているんですね。

大谷 ええ、その通りです。自分も34歳までは大手企業にいて、自分なりの自信を持っていました。それが一人になってみて初めて、そう簡単にはできないんだということを改めて知りました。

挫折体験を一番厳しい時期にしたから、それより悪い時期はないですよ。その時に頑張れれば、その後どんなことがあっても耐えられます。

村上 私もどん底を味わったおかげで、希望もそれほどなかったのです。希望を持ちすぎると起業にロマンチックな夢を抱きすぎていたかもしませんけど、淡々とやっていたのがよかったのかもしれませんね。

今は2でもいつかは100につながる

大谷 COPの件をお聞きします。先日、イケアさんのパネルディスカッションに参加されていましたが、環境について何かメッセージがあればお聞かせください。

村上 私は、そんなに偉そうにいえる立場ではありませんが、でも、みんなが私、普段そういうことをあまり考えていないからというふうになっちゃうと意味がないと思うので、小さなことでも自信を持って「レシートは要らないっていってます」とか発言してみたりすることがすごく大切なのではないでしょうか?

この間のパネルディスカッション時にも最後に言いましたが、例えばハッシュタグにして、ちいさなカルチャーというか、そういうことをすることに名前をつけたりできればいいのではないかと思っています。

環境のことって、いいことをしたいとみんな思っているが、そこまで完璧にできているかというと、できていない人が大半じゃないかと思うんですよ。

でも、0か100かじゃなくて、2でも50でもいいから、そういう気持ちを持っている人が、日常の中でその瞬間をどういう言葉でいったらいいかと考えるようになったらいいなと思っているので、私もハッシュタグの提案などをしているのです。これからもそういうことを考えていければいいですね。

大谷 たしかに自分に余裕がないと100は難しいですよね。極端な話、自分自身がご飯を食べるのもままならないような生活だったら、100出せるかといったら出せませんからね。

「エシカ」がコンセプトにしている「私によくて世界にイイ。」というのも、まず私がいい状態にあるという土台が大事で、その土台がしっかりしてから、世界にいいことを始めようという思いも入っています。それが逆になってしまうと潰れちゃって、サスティナブルじゃなくなっちゃいますから。

村上 今ウチの会社にいる子が、履歴書を持ってきた日から、とにかく社会貢献をしたいとそればかりをいう子なんです。私は、その子に会社の中で自分が何をできるか、まずそれを考えなさいといっています。

ウチの会社がやっていることはマイナスなことではなくて、次の週末を豊かにしようといっていて、それに対して、日本の女性の雇用がもっと増えれば、それはそれで社会貢献になりますからね。それをやった上でその経験を生かして、もっと大きなことを考えたらいいんですよ。最初から欲張って100をやろうとしないで、今できることから始めたら、それでいい。向いている方向さえ間違っていなければ、今は2でもいつか100につながっていくんです。

大谷 つまりベクトルですね。ベクトルがいい方向に向いていれば、パワーのかけ方は人によっても状況によっても違ってきますからね。

ライフスタイルプロデューサー・NEXWEEKEND代表 村上萌さん Photo=YUSUKE TAMURA (TRANSMEDIA)

全て手作りの雑誌「ネクストウィークエンド」

大谷 先ほど「ネクストウィークエンド」を拝見しましたが、とても素敵な雑誌ですね。ロゴもイラストも全てが素敵です。

村上 ありがとうございます。外部の力は借りずに、記事も商品情報だけはライターさんにお願いしましたが、それ以外は自分で書いて、写真もほとんど自分で撮りました。この雑誌を出したことによって、私たちのコンセプトがさらに分かりやすくなったのではないかと思っています。

大谷 そこまで行き届いているから、軸がぶれていないというか統一感があるんですね。

村上 言葉とかマニュアルで自分たちらしさを伝えるためには、軸をちゃんとしなくてはダメだなと思って作ったのですが、正直いって不安もありました。ですから、大谷さんにそういっていただくと嬉しいですね。今後は年に2、3回出していきたいと考えています。

大谷 見ていてきれいな雑誌、作り込んだ雑誌って増えたじゃないですか。でも、読み物としては文量が減ってきています。

しかし、だからといって、普通、情報誌というと、情報をたくさん入れることを考えてしまって、あまりきれいな雑誌にはならないんですけど、「ネクストウィークエンド」は、その辺は絶妙なバランスになっていて、ちょっと見ただけで相当苦心しているなということがよく分かりますね。見た目も楽しいが、情報誌としての情報量も盛りだくさん。めくっていて楽しくなるし、写真も本当に素敵です。

村上 ありがとうございます。

大谷 ウェブサイトの内容をここまで紙に落とせたということは、言葉とかマニュアルでは言い表せない、人に真似ができない何か感性のようなものが村上さんには備わっているのではないですかね。

パソコンがこれだけ進化して、誰でもそこそこにできる時代になっています。そうなるとコンピュータではできない、人間ならでの独特な匂いとか感性をいかに出せるかが大事だと思いますね。

村上 紙媒体ができて、説明がしやすくなりました。クライアントさんには自治体も多いのですが、ハッシュタグが3万件超えたといってもなかなか理解していただけません。場合によってはインスタグラムから説明しなければなりませんが、この雑誌は見ていただければすぐに分かりますから。

大谷 やっぱり実際に手に取って触れるというのはいいですよね。

自分が楽しく仕事していれば、社会も世界もよくなる

大谷 最後に、村上さんにとって「私によくて世界にイイ。」とは?

村上 4年前に結婚しました。周りの人は私が仕事を辞めると思っていたようです。主人が転勤の多い人でしたから。最初は淡路島、今は札幌で一時デンマークにもいました。

普通の人ならそれをいいわけに辞めていたかもしれませんが、私は、そのまま仕事を続けて自分ができることを周りの人たちに伝えていきました。そうすることによって女性たちが仕事を諦めずに済むようになって、そういう人たちが増えることで社会全体が明るくなると思ったからです。そうすればみんながハッピーになり、次の週末が楽しみになって事故や事件も減って町もきれいになっていくはずです。

大谷 つまり、村上さんご自身が楽しく仕事をしていることが、世界にもいいこと、社会にもいいことになる。そういうことですね?

村上 ええ、そうだと思っています。

大谷 よく分かります。今日はありがとうございました。これからのご活躍を期待しています。

村上 こちらこそありがとうございました。

ライフスタイルプロデューサー・NEXWEEKEND代表 村上萌さん Photo=YUSUKE TAMURA (TRANSMEDIA)

聞き手:ethica編集長 大谷賢太郎

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)〜
http://www.ethica.jp

ethica編集部

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