大谷 パルコの企業文化について、僕が勝手に思っているイメージは渋谷というのは谷で、坂を上って公園通りのパルコにお客さんを集めるためにいろいろな施策を打っていらっしゃって、まさにそこが文化の発信拠点になっているという感じですね。公園通りの電話ボックスとかそのモチーフになっているものも多いじゃないですか。さまざまなカルチャーを発信し続けている企業というふうに見ていました。
もともとパルコという社名はイタリア語で公園という意味で、空間を作ってそこに集う人々とそこにある専門店で文化を創るというコンセプトで始まったと思うのですが、その辺の企業理念について、まずお話しいただけますか?
佐藤 なぜ、ブースターをやったかというと、そもそもパルコの企業理念とか企業姿勢と深くリンクしているのでやるべきだ、かつ、世の中のためにもいい、ソーシャルグッドとまではいかないと思うのですが、世の中にいい影響を与えてパルコが持っているリソースとか強みを生かして、こんな面白い世の中を切り拓くことができる。そう思ったからこそ始めたわけのですが、その意味合いで企業姿勢として「インキュベーション」「街づくり」「情報発信」の3つがあって、いずれもがクラウドファンディングに結びついているのです。
その中でも特に、インキュベーションがいちばん関係しているのではないかと思っています。インキュベーションと横文字でいってしまうと曖昧な感じになってしまいますが、僕個人は、小さな営みを大きくしていこうとしている時、それをサポートしていくのがインキュベーションだと、そう理解しています。
大谷さんがおっしゃったように、パルコの事業は、もともと商業施設です。ただ、パルコとしては、売り上げとか規模の大きい企業をリスペクトしつつも決してそれだけではなくて、規模はまだ小さくても何かきらりと光るものを持っているとか、あるいは、クリエイティブとかコンテンツで世の中を変えていこうというパッションを持っている人がたくさんいらっしゃるわけで、そういう人たちと一緒にやっていきたいという思いがあります。
弊社の諸先輩たちもそうでした。そして、ただ単に一緒にやるだけではなく、頭にも体にも汗をかいて一緒に大きくなって、増えたプロフィットはシェアしましょう。そんな哲学を持って、これまでアートもファッションもやってきたのです。
今までは、それがどちらかといえば、リアルな場を中心にしてそうしたインキュベーションの活動をしてきたのですが、外部環境もどんどん変わってきていますので、それをリアルな場と融合しつつ違うウエブという領域を掛け合わせると何ができるか、それを考えてやりました。
ですから、クラウドファンディングを通じて、メジャーなストリーム、大きなストリームが世の中に出ていくというのは、もちろんそれはそれでいいのですが、小さな営みを大きくして、多様性のあるものが世の中に出てきたほうが、いろいろなところでイノベーションが起こり、世の中全体が面白くなっていくのではないかと期待しています。
それこそがパルコがずっと大切にしてきたインキュベーションなんだろうなと思っています。