前編につづき、4月23日に、恵比寿で開催されたワインのチャリティ試飲のレポートです。フリーテイスティングで多くの造り手さんと楽しく会話を交わしながら、ワインもぐいぐいと進んだ頃、有料セミナー出席者への会場移動を誘導するアナウンスがありました。
“和食とワインのマリアージュ”(老舗料亭『東京吉兆』の湯木俊治社長とグランメゾン『アピシウス』の情野博之シェフソムリエによるセミナー)
この日は2つの有料セミナーが用意されていましたが、“和食とワインのマリアージュ”に出席させていただくことに。『和食;日本人の伝統的な食文化』がユネスコ無形文化遺産に登録されたのは、一昨年の冬のこと。この世界に誇れる和食とやはり世界に誇れるワインとの相性の検証は、とても興味深いものでした。
ゲストの老舗料亭『東京吉兆』の湯木俊治社長が用意した「筍の土佐煮」「鯛の真子煮凍り」「ふきのとう味噌」「稚鮎焼き揚げ」に講師を務めるグランメゾン『アピシウス』の情野博之シェフソムリエが、会場に用意されたワインからペアリング。一瞬「本当にワインと合うの?」と疑ってしまいましたが、春の食材の苦味や和食ならではのうま味にどのワインもキレイに重なり、まさに夢見心地の時間。なかでも「鯛の真子煮凍り」に合わせたグリューナーフェルトリーナーは、10分ほど前ぐらいにお話させていただいたクリスティーネ サース夫人が醸したもの。感慨深くマリアージュを味わい、あらためてお会いした方が造るものにはやはり思い入れが強まることを実感しました。
2011年から6年間。従業員が総出で運営(株式会社ファインズ中西社長をインタビュー)
「2011年から6年間。弊社の従業員が総出で運営してきました。もちろんこれからも継続していくつもりです」と中西社長。入場料は5500円と、試飲会としては決して安くない金額ですが、募集人数の300名はあっという間に埋まるそう。リピーターも多いらしく、時期が近付くとホームページをあまねくチェックして申し込まれるのだとか。来場者の意識の高さに感心していましたが、社長が続けた言葉には驚きを隠せないのとともに、思わず目頭が熱くなってしまいました。
「実は第1回の開催の後に、東北を励ますため仙台をともに訪れてくれた生産者さんもいました。5年経った今も、仙台までしばしば足を運んでくれる方たちがいます」。震災直後の7月は、まだまだ放射能の風評被害が酷かった頃。特に外国人の方は避けられていたという印象でしたが、まさか実際に訪れて支援してくださっていたとは…。ワインが取り持ってくれた絆の強さを感じずにはいられませんでした。
美味しいワインを飲んで幸せな気分になれると同時に、サスティナブルなワイン造りや被災地の復興支援に貢献できる…。そんな思いが充満してか、会場全体が一体化していてとても温かい気持ちになれました。ぜひ来年も訪れたいものです。
株式会社ファインズ
http://www.fwines.co.jp/
記者:とがみ淳志(とがみあつし)
1964年大阪府生まれ。神戸大学経済学部経済学科卒。日本旅のペンクラブ理事。日本旅行記者クラブ会員。(一社)日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート。株式会社リクルートに新卒入社後、海外旅行情報誌『エイビーロード』の営業および制作に。93年結婚情報誌『ゼクシィ』の創刊を担当。同誌の多角的運営に携わった後、99年退社後フリーに。編集、プランニング、ライティングを行う。現在は、食、旅、酒、温泉、不動産、猫などの分野が中心。情報誌や雑誌、機内誌およびウェブなど幅広い媒体を手がけている。
私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)〜
http://www.ethica.jp