ちょっと一息つきたいときに飲むコーヒー。コーヒーの馥郁たる香りが好きな人は多いのではないでしょうか。そのコーヒーを今までよりももっと美味しく飲むために、提案があります。これからは、森林農法で育ったコーヒー豆を使ってみてはいかがでしょうか。
プランテーションで作られたコーヒー
森林農法で育ったコーヒーのおいしさを教えてくれたのは、エクアドルの雲霧林のコーヒーを販売する、スローウォーターカフェ有限会社の藤岡亜美さん。藤岡さんは学生時代にバックパックを背負ってエクアドルに行き、コーヒー生産地インタグ地方の人たちに出会いました。その人たちの考え方に惚れ込み、彼らが育てるコーヒー豆を美味しく焙煎して届ける仕事を続けています。
一般的にコーヒー豆は、プランテーション方式で作られていることが多い作物です。森林を開墾した広大な農地に、コーヒーの木だけを植え、肥料を与え、栽培を促進させるために太陽の光をたっぷり当て、農薬を使いながら育てています。コーヒーだけに特化しているので効率はよく、大量に安価にコーヒーを生産することができます。
森林農法で作られるコーヒーとは
しかし、もともとコーヒーは、森林のなかで他の木とともに自生している木。どちらかというと大きな木の下で木漏れ日程度の光を浴びながら育つ植物です。
森林農法では土地をあまり開墾せず、森のままにしておきます。様々な落ち葉や有機物で、植えたコーヒーの苗の周りには、肥料を与えなくても肥やしができます。森には蜘蛛の巣が張りますが、蜘蛛はコーヒーにつく虫を食べるため、農薬を使わずに栽培するのを助けてくれます。
プランテーションとは違い、効率的にたくさんのコーヒー豆を作ることはできませんが、強い日の光にさらされていないために香り高く、理想的な生態系のなかで質のよいコーヒー豆がとれます。
コーヒーはもともと生薬だった
「ブラックコーヒーだと胃が痛くなる」「コーヒーを飲み過ぎると胃がもたれる」という経験をした人も多いはず。しかしコーヒーはもともと消化作用や利尿作用、健胃作用などがある生薬だったといわれています。コーヒーの胃への負担については、コーヒー自体に理由があるのではなく、コーヒーの作られる過程に理由があるかもしれません。
森林農法で育てられたコーヒーを飲んだ人の多くが、「砂糖やミルクを入れない方がおいしい」とか「一日に何杯飲んでもさわやか」と言うそうです。森林農法ではないコーヒーには農薬や化学肥料を使っている場合が多いので、胃痛や胃もたれはコーヒーが原因なのではなく、栽培や製造の工程に原因があるのかもしれないと、藤岡さんは言います。コーヒーが生薬だったことを、森林農法のコーヒーを飲めば、実感できるかもしれません。
おいしく飲めるだけではなく、生産者にも優しい森林農法のコーヒー
実は、コーヒーはカカオとコットンに並ぶ、三大アンチ・フェアトレード作物と呼ばれています。生産者と消費者の間には多くの仲買人が存在しており、生産者には価格の決定権はありません。
生産者が原生林を切り拓いて現金収入を得ようとプランテーションを行い、効率的にコーヒーを作ったとしても、生産者の取り分が多いわけではありません。ときには生産や生活に十分な利益を得られないこともあります。また近年では気候変動の影響でコーヒーがとれなくなってしまうことも。そういった時には、一気に生活のすべを失って、食べることもできなくなります。
発展途上国と呼ばれる南の国々では、先進国に輸出する作物のために暮らしや、暮らしを成り立たせる自然環境を破壊しながら外貨を得てきました。しかしインタグ地方のコーヒー生産者の人たちは、地域での鉱山開発に反対し、豊かな森を自分たちの手で管理しようと、無農薬でのコーヒー栽培をはじめました。
藤岡さんは、インタグ地方の同世代の若者たちが街へ出て行くことなく村の価値を世界に発信しながら、淡々と仕事を作る様子に触れ、コーヒーの焙煎を覚え、生産者の奥さんたちと麻の雑貨の企画を始めました。
森林農法では、森林にコーヒーだけを植えているわけではありません。家を造るための木、パパイヤやバナナなど自分たちの食事をまかなうための植物なども植えています。そのため万が一コーヒーが不作でも、生産者はちゃんと生きていけるのです。
まず地域の暮らしを成り立たせる森を大切にし、その森で+αとして換金植物のコーヒーを育て、生産者が価格を決める。生産者を含む多くの生き物や植物が無理をしない環境で育ったコーヒーは、幸せの味がしそうです。ぜひ一度皆さんも飲んでみてはいかがでしょうか。
<森林農法で育てられたコーヒーを飲んでみる!>
スローウォーターカフェのコーヒー購入ページ(http://slowwater.shop7.makeshop.jp/shopbrand/010/O/)
取材協力=スローウォーターカフェ有限会社 藤岡亜美さん