柳亭市弥さん(後編)「今夏、同期の春風亭一蔵兄さん、入船亭小辰さんと赤坂会館で落語会をやります。落語に興味を持ったら、”東京かわら版”に注目してください。」【特別協力:新宿末廣亭】 エシカ独占インタビュー
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柳亭市弥さん(後編)「今夏、同期の春風亭一蔵兄さん、入船亭小辰さんと赤坂会館で落語会をやります。落語に興味を持ったら、”東京かわら版”に注目してください。」【特別協力:新宿末廣亭】

Photo=Kentaro Ohtani (TRANSMEDIA) 

雲田はるこさんの漫画「昭和元禄落語心中」が人気となり、アニメ化され、今、落語がブームになっています。

前編につづき、次代を担う“男前”な若手落語家の柳亭市弥さんの独占インタビュー後編です。

無我夢中だった初高座

結局、会社には1年半いましたね。辞めることの不安はありませんでした。落語家になりたいという気持ちが強かったですから、両親には師匠に会う前から、会社を辞めて噺家になるというと、僕の決意が固いことを知って、父親も

「3年やってダメだなと思ったら、また仕事しろ」

と、いってくれました。

弟子になって、まず半年は見習いをやりました。毎朝師匠の家に行き、師匠の身の回りの世話をするのが仕事です。掃除をしたり着物を畳むことを教えてもらいながら、その間に落語の稽古もします。見習いの期間には噺を三つ覚えました。

初めて高座に上がったのは入門から4カ月後の2008年4月。三越前のお江戸日本橋亭で行われた師匠の独演会でした。

緊張しましたねえ。家族や友だちがたくさん来てくれて、無我夢中で、とにかく最後まで話をやることで精一杯でした。

Photo=Kentaro Ohtani (TRANSMEDIA) 

高座で話が飛んだ失敗も

見習いから前座を経て二ツ目になったのが入門から4年経った2012年11月でした。

失敗はたくさんありましたよ。

前座の時、高座で話が飛んじゃって途中で降りたこともあります。楽屋に戻ったら師匠に、

「さっきのところからもう一回やれ」

といわれて、お客さんに謝ってから続きをやりました。何だか公開説教みたいでしたね。

でも、これは落語家なら誰でも経験するようです。ウチの師匠も初高座は絶句して最後まで行けなかったそうですから。

今、話は70くらいに増えました。好きなネタは、八っつぁん、熊さん、与太郎が出てくる滑稽噺。聞いていてもやっていても面白いですよ。

得意な演目? いや、それはまだまだこれから。それをいってしまうと、あちこちから、

「おいおい、あれでいいと思っているのか。冗談いうなよ」

といわれて大変なことになってしまいますから。1日も早く自信を持っていえるようになりたいですね。

Photo=Kentaro Ohtani (TRANSMEDIA) 

落語の魅力とは……

身近に笑える気さくな大衆芸能だということじゃないですかね。

普段のちょっとした日常の出来事を面白おかしく話しているのが落語なので、誰でも笑えてしまえるところが落語のいいところだと思っています。

それに、演じている僕のほうからすれば、高座に上がっているその時、目の前にいるお客さんは僕のことを知っている人もいれば知らない人もいるわけでしょう? その中でいかに笑いをとるか、自分の落語をお客さんに伝えるか、そこがたまらなく面白いし、また苦労でもあるんですよ。

今こうやって念願かなって落語家になれたわけですから、将来は真打になって寄席でトリを取りたいですね。それがいちばんの夢かな。1人でも多くの人に落語のすばらしさを伝えていければいいですね。

撮影協力:新宿末廣亭

落語に興味を持ったらぜひ寄席へ

今、若い人たちの間でも落語がブームになってきました。居酒屋とかカフェで落語会が開かれることも多くなって、生の落語に接する機会も増えていますから。

でも、できることなら、寄席で落語を聞いてほしいですね。

たしかに若い人には敷居が高いかもしれませんが、勇気を持って飛び込んでしまえば、寄席って落語もあるし、漫才や太神楽があったりして、こんな面白いところがあったんだと気がついてもらえると思いますよ。

東京には今、新宿、池袋、浅草、上野の4カ所に落語定席があります。

新宿の末廣亭だったら入場料3000円、学生さんなら2500円で、特別興業以外は入れ替えなしですから、1日いてもいいし、眠くなったら寝てもいい。だから、女の子同士とかデートとか、気軽にフラッと来てほしいですね。

あと、初心者には末廣亭で毎週土曜日の夜9時半~11時にやっている「深夜寄席」がおススメ。若手4人の落語が聞けて500円といたってリーズナブルですから、騙されたと思って一度覗いてみてください。楽しいですよ。

撮影協力:新宿末廣亭

撮影協力:新宿末廣亭

今夏、同期3人で落語会を開催

ちょっとでも落語に興味を持ったら、「東京かわら版」という情報誌に注目してください。この1冊に、いつどこで誰の落語会が開かれるかという情報が全て載っています。これがないと僕ら落語家は生きていけないってくらい大事な情報誌なんです。

落語会によっては、これを持っていくと料金が割引になることもありますから、これを片手にぜひ生で落語を聞いてほしいですね。

あと、これからの僕の予定では8月15日(月)~20日(土)、一緒に二つ目になった同期の春風亭一蔵兄さん、入船亭小辰さんと一緒に赤坂会館で落語会をやります。いま、それに向けて一生懸命稽古していますので、ぜひ皆さんに聞きに来ていただきたいですね。

■詳しくは、こちらから
https://www.mixyose.jp/akasakaclub/

新版 三人集 赤坂納涼六夜

私によくて、世界にイイ。

「笑いを皆さんに届けたい、心の底から笑ってほしい」、そう思って落語の世界に入ってきました。僕自身も落語が大好きで、皆さんに落語を聞いてもらえることが楽しくて仕方がありません。

だから、僕が落語を演じて笑顔になれば、お客さんも笑顔になる。そこが落語のいいところでもあるし、それこそが「私によくて、世界にイイ。」ことだと思いますね。

前編記事はこちらから

柳亭市弥さん(前編)「落語は身近に笑える気さくな大衆芸能、興味を持ったら、ぜひ寄席へ!」【特別協力:新宿末廣亭】

プロフィール

1984年、東京都世田谷区生まれ。玉川大学卒後、1年半のサラリーマンを経て2007年、柳亭市馬に入門。2012年11月、二ツ目に昇進。出囃子は「春どう」。将来を期待されている若手落語家の1人。

ーーBackstage from “ethica”ーー

実は新宿末廣亭は私が生まれて初めて落語を見た場所でもあります。サラリーマンで昼夜賑わう飲食街に突如現れる、どっしりとした勘亭流フォントはかなりインパクト大。落語なんて江戸時代の話かななんて思いがちですが、そもそも落語のネタってとても庶民的で感情移入しやすいうえ、時事ネタもさりげなく取り込んでいたりしてなかなか、現代人でもぜったい笑っちゃう内容になっているんですよね。同じことは狂言にも言えるのですが、狂言はだいたいお能とセットですのでお値段的にも雰囲気的にも、お客様の層も(?)、くつろいで見れるのが落語の良いところ。うーん、久しぶりに見たくなってきました。

ペンネーム:M. M.

記者 清水 一利(しみずかずとし)
1955年千葉県市川市生まれ。明治大学文学部(史学地理学科日本史専攻)を卒業後、1979年、株式会社電通PRセンター(現・株式会社電通パブリックリレーションズ)に入社。クライアント各社のパブリシティ業務、PRイベントの企画・運営などに携わる。1986年、同社退社後、1987年、編集プロダクション・フリークスを主宰。新聞、雑誌(週刊誌・月刊誌)およびPR誌・一般書籍の企画・取材・執筆活動に従事。2012年「フラガール3.11~つながる絆」(講談社)、2013年「SOS!500人を救え~3.11石巻市立病院の5日間」(三一書房)を刊行。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

清水 一利

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