電通、産学連携の「やさしい日本語ツーリズム研究会」で外国人観光客を「やさしい日本語」でおもてなし 〜地方創生、その手があったか!〜 外国人観光客にも日本の観光産業にも嬉しいソーシャルグッドなアイディアを事務局長の吉開章さんに伺いしました。
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電通、産学連携の「やさしい日本語ツーリズム研究会」で外国人観光客を「やさしい日本語」でおもてなし 〜地方創生、その手があったか!〜

「やさしい日本語ツーリズム研究会」吉開章 事務局長 Photo=Kentaro Ohtani (TRANSMEDIA) 

世界有数の観光大国になることを目指す日本。数年前に比べて、街で外国人観光客を見かける機会もぐんと増えました。それもそのはず、日本政府観光局(JNTO)によると今年の訪日外国人の数は、7月の時点ですでに1400万人。2013年の年間総数を400万人近く上回っているそうです。政府は2020年に4000万人、2030年に6000万人の来日を目指すということですから、これからも街の雰囲気はどんどん変わっていきそうです。

今回は、数ある魅力的な旅行先に日本を選んでくれる外国人観光客に向けた、今までなかったユニークなツーリズムの提案をご紹介します。

日本語を話したい外国人観光客を日本語でおもてなし!

株式会社電通(本社:東京都港区、社長:石井 直)が産学連携で取り組むのは、「やさしい日本語ツーリズム研究会」。日本語教師養成講座ほか教育事業を運営するヒューマンアカデミー株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役:新井孝高)、東京外国語大学の荒川洋平教授と共同で8月18日から活動を開始しました。

「やさしい日本語」とは、日本語を学ぶ外国人に対して、語彙(ごい)を制限して分かりやすく表現する技術のことで、外国人に日本語を教える「日本語教師」の基本スキルの一つだそうです。

これまでも国内に住む外国人を対象にした防災・減災対応や公文書書き換えの領域では研究・実践が行われており、今回の研究会はこれを観光分野におけるコミュニケーションに転用しようというもの。

日本語を話したい外国人観光客を日本語で”おもてなし”をしようと自治体や観光・商業施設などにおける新しい訪日観光客対応の一提案として呼びかけてます。

今回のエシカでは、広告会社の電通が産学連携で、地方創生という社会課題の解決を起点とし、既存の研究・実践領域を観光領域に応用した同社の「Good Innovation.」(グッド・イノベーション)な取り組みを取材内容も交え、掘り下げていきます。

「やさしい日本語ツーリズム研究会」発足の背景

「やさしい日本語ツーリズム研究会」発足の背景には、政府の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」において、福岡県柳川市が推進する「日本語ツーリズム」が交付金対象事業になったことが挙げられます。

地方における観光客は日本語学習熱の高い台湾・香港・韓国からのリピーターが多く、旅行グループのうち1人は日本語を話せる人がいると期待できるそうです。

同市は特に熱心な日本語学習者の多い台湾に注目し、日本語を話す台湾人観光客に日本語でたくさん話してもらう「日本語ツーリズム」を推進していく方針を掲げています。

英語でなくて、いいんです。(事務局長 吉開さん)

やさしい日本語ツーリズム研究会が独自に行った興味深い調査リリース発表について、事務局長 吉開章さんに、取材をしたところ、

「我々が行った独自調査によると、日本語が少しでも会話できると答えた台湾人は42%ほどです。」

「例えば、台湾人の方が3人集まれば8割の確率で誰か日本語を少し話せます。」

とのこと。

「母が柳川市で、外国人観光客の面倒をみる姿が、やさしい日本語でおもてなしのヒントとなりました。地元の地域創生に繋がった事がなにより嬉しい。このソリューションを全国に広げていきたい。」事務局長 吉開章さん

「日本語教師のプロボノ活動(専門性を持っているものの社会貢献)として支援していた事が、ヒューマンアカデミーさんとのご縁で、今回のプロジェクトに繋がりました。2年間あたたかく、見守ってくれた会社に、つくづく感謝しています。」事務局長 吉開章さん

また、今まで発表される事がなかった新しい調査結果として、

「日本語を学習している台湾人は、約13%程おり、人口からすると200万人以上いると思われます。」

「これは、現役学校学習者のみを対象とする国際交流基金の日本語教育機関調査の10倍以上回ると考えられます。」

「日本語教育機関調査は、現在学校で学んでいる方のみを対象としています。一方、今回の独自調査は、学校を卒業しても日本語を学んでいる方や、独学で日本語を学んでいる方も含めて対象とする事で、10倍以上のギャップが出ました。」

「つまり、ネットなどを活用し、趣味的に独学で日本語を学び続けている方が、圧倒的に多いのです。」

と考察しています。

さらに、英語に対する日本人のコンプレックスに対して、

「これは台湾人に限らず、訪日外国人は、もともと日本に関心がある層が観光に来るわけですから、訪日外国人を対象とすると日本語が話せる確率は、一般の調査データより更に高い。といえると思います。」

「必ずしも、英語でなくて、いいんです。」

と語ってくれました。

「将来的には、例えば、美容院など外国人も接客する機会がある業種など、様々な民間企業との連携も視野に入れてます。」事務局長 吉開章さん

地方の観光業者や市民が日本語でおもてなしに参加できるツーリズム

これまでの外国人観光客対応は「日本人が英語で話す」というものが主で、英語が話せない観光従事者や市民には負担が多いものでした。本研究会はそういった方々が「やさしい日本語」でおもてなしに参加できる機会の創造を目指しています。

また、観光分野における新たな雇用促進・生きがいの創出をはじめ、多方面でその重要性が高まっているボランティア対応についても、「やさしい日本語」という選択肢を入れることで、より多くの日本人がおもてなしに参画できる社会づくりに貢献できればと期待しているそうです。

(左)金子健次柳川市長 (右)戎義俊(えびす よしとし)台北駐福岡経済文化弁事処長 写真提供:やさしい日本語ツーリズム研究会

前段の写真着用しているのは、(左)外国人観光客が着けるバッジ (右)日本の案内役が着けるのバッジ 写真提供:やさしい日本語ツーリズム研究会

日本語で話しかけて欲しい外国人が白いバッチ(表記:やさしい日本語、でおねがいします)を身につけ、日本語でおもてなしをしたいという市民が緑のバッジ(表記:やさしい日本語の、おもてなし)を身につけるという外国人観光客にも日本の観光産業にも嬉しいソーシャルグッドなアイディア!

今後は、各自治体や観光・商業施設と更なる連携をしながら、実践していくそうです。日本にとっても、外国人観光客にとってもイイ。まさに「私によくて、世界にイイ。」プロジェクトと言えそうです。

今後日本人向けの「やさしい日本語」講座や、「やさしい日本語」の指導者養成講座などを展開する予定だそうですので、「やさしい日本語ってどんな日本語?」「英語は苦手だけど、日本語なら…」という方など、ご興味のある方はぜひチェックしてみてくださいね。

「やさしい日本語ツーリズム研究会」吉開章 事務局長 プロフィール

電通で主にインターネット広告と海外デジタル戦略を担当。会社員のかたわら2009年に言語交換サイトLivemochaに参加して以来日本語教育(の真似事)に熱中。2010年に同サイトの公認チューターにスカウトされたのをきっかけに日本語教育能力検定試験に合格。2014年より活動をFacebookに移し、日本語教師有資格者による日本語学習者支援コミュニティ「The 日本語 Learning Community」を主宰。2016年9月現在139の国地域から約2万人の学習者を、3百人を超える日本語教師のプロボノ活動(専門性を持っているものの社会貢献)として支援中。

「やさしい日本語ツーリズム研究会」荒川洋平 座長 プロフィール

東京外国語大学教授、「やさしい日本語ツーリズム研究会」座長、「やさしい日本語」部会座長。立教大学仏文科卒、ニューヨーク大学教育学大学院修了。デューク大学助手、国際交流基金日本語国際センター専任講師を経て現職(留学生日本語教育センター)。専門は認知言語学。『とりあえず日本語で』『もしも…あなたが外国人に「日本語を教える」としたら』〔正・続〕(スリーエーネットワーク)ほか。

ーーBackstage from “ethica”ーー

外国人観光客が増えたことにともなって、安価で宿泊場所を提供する民泊サービスも増えましたよね。実は筆者も有償・無償両方でホストの経験がありますが、本当に!アジアからの観光客は、日本語を話す方が多いのです。すばらしいことですよね!英語がもてはやされ、まれですが片言の日本語だと敬意を払わないという問題のある接客からの脱却も、こういった研究会が牽引してほしいと期待しています。

ペンネーム:M. M.

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

ethica編集部

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