クリスマスを目前に控えた12月23日、サンタクロースの衣装を着た人たちが乗ったハーレーダビッドソンのオートバイなど220台が児童虐待防止を訴えながら都内を走る「クリスマス・トイラン・パレード」が行われました。
今回で10回目を数えるこの恒例イベントを主催したのは、ハーレー愛好家たちが作るボランティア団体「ハーレーサンタCLUB」。2008年に始まり、翌年の09年までは年1回でしたが、年々参加希望者が増え、道路交通法の関係で1回に参加できる台数に制限があるため、10年からは毎年11月23日と12月23日の2回開催となりました。
児童虐待防止を訴える「クリスマス・トイラン・パレード」
そもそもこのイベントは、現在、同グループの代表を務める峰たかしさんたちが中心となり、アメリカでハーレー愛好家が孤児たちにオモチャを届ける「トイ・ラン」に倣って、2000年から児童養護施設への訪問を始めたのがきっかけです。
「今、日本には実親や継父、継母など家族から虐待を受けた約3万人もの子供が施設に保護されているという現実がありますが、これは氷山の一角で、おそらくその何倍もの子供たちが虐待を受けているといわれています。この事実を1人でも多くの人に知ってもらいたい、そして、そうした子供たちを早期発見し、保護したいというのが私たちの願いなのです」(峰さん)
サンタ姿のライダーが操るハーレーが大集結!
イベント当日、220台のバイクは明治神宮外苑の絵画館前を出発し、表参道、六本木を通り、芝公園までを車列を組んで走りながら、児童虐待をなくそうと訴えました。
またパレードと合わせて、当日、同グループの別動隊が練馬、足立の両区内にある児童養護施設を訪問、子供たちにお菓子のプレゼントを届けた他、名古屋、福岡でも同様のパレードが実施され、多くの人々から注目を浴びていました。
さまざまな機会を通じて虐待児童を支援
「ハーレーサンタCLUB」の活動は、何もこの日だけではありません。年間を通じて虐待児童のための活動を行っています。その一つが「お仕事ってなあ~に?」と題した施設児童の就職支援イベントです。
これは施設にいる小学校3年生までの子供を対象にしたもので、施設の子供たちは、そのほとんどが18歳になると施設を出て就職しますが、大人との接点がなく父親の背中を見て育ってこなかった施設の子供たちは、父親から職業を感じ取る機会がないままに就職してしまいます。
そのため、多くの子供たちは就職してもすぐに離職し転職を繰り返して生活が荒み、最悪の場合は、悪い大人に騙されて犯罪に手を染めたりといった環境に陥ってしまうことさえあります。そこで、こうした子供たちに、遊びの中から仕事について学ぶ機会を与えることを目的に行っているのが「お仕事ってなあ~に?」です。
「ここでは、大工やパティシエ、ネイルアーティストなどといったプロを招き、一緒に竹馬や竹とんぼを作ったり、ケーキを作ったりしながら、子供たちを誉めてあげるのです。虐待を受けてきた子供たちは、大人から怒られることはあっても誉められることはほとんどありません。だからこそ、怒っている大人ばかりではないことを教え、このイベントを通じて仕事に興味を持ってもらえればと思っています」(峰さん)
この他、同グループでは、施設の子供たちをキャンプ場に連れていき、バーベキューを体験させるなどの活動も行っており、さまざまな機会を設けて、どうしても人間関係が希薄になりがちな虐待児童たちの支援を続けています。
12月23日を全世界が子供を可愛がる日に…
諸外国に比べて平和だと思われている日本で、児童虐待がこれほど多いことにショックを感じた方も多いでしょう。
「この運動が広がって、毎年12月23日は全世界が子供を可愛がる日になればいいですね。簡単には実現できない夢ではありますが、いつか実現できればと思っています」(峰さん)
関心を持った方は、ぜひ次回のパレードに参加してみてはいかがでしょうか?
■ハーレーサンタCLUB
03-3565-6565
http://toyrun.jp/
記者 清水 一利(しみずかずとし)
55年千葉県市川市生まれ。明治大学文学部(史学地理学科日本史専攻)を卒業後、79年、株式会社電通PRセンター(現・株式会社電通パブリックリレーションズ)に入社。クライアント各社のパブリシティ業務、PRイベントの企画・運営などに携わる。86年、同社退社後、87年、編集プロダクション・フリークスを主宰。新聞、雑誌(週刊誌・月刊誌)およびPR誌・一般書籍の企画・取材・執筆活動に従事。12年「フラガール3.11~つながる絆」(講談社)、13年「SOS!500人を救え~3.11石巻市立病院の5日間」(三一書房)を刊行。