行政主導ではないからうまくいく
大谷: ラシーヌと南池袋公園との関係でいいますと、行政がイニシアチブを取って、その中に民間がちょっと入ってくる試みはすでに他の場所でも始まっています。しかし、こちらのように民間がイニシアチブを握って、それを行政がフォローするというスタイルは珍しいですよね?
金子: おっしゃる通りです。そのスタイルがここで実現できているのは、学識経験者や事業者、地元の商店街、豊島区などで組織する「南池袋をよくする会」という会を作って、そこが南池袋公園の全ての運営をすることにしているからです。つまり、行政がジャッジメントしないということが他にはない仕組みなのだと思いますよ。行政が主導するとなると、どうしても縛りが多くなって結局、何もできないうちに終わってしまうのです。ここではそれがありません。
大谷: 会の運営費というのは?
金子: うちでは売り上げの0.5%を地域貢献費として豊島区に納めていて、今後はこれを周辺の企業などにも広げていこうと考えています。ですから、助成金のようなものを区からいただいているということは一切ありません。
大谷: お話をお聞きすると、たしかに他の地域にはない画期的なシステムだと思います。それも行政の理解と南池袋公園という優れたロケーションがあって成り立っているのでしょうね。
金子: 公園に関していうと、ちゃんと種を植えて花を咲かせて、そして虫も集まってくる。小学生の子供たちがワークショップで芝生を育てるような、そんな公園を作るのが大前提です。ただ単にきれいなだけではダメで、社会実現の場になることが必要なんです。
大谷: 私は最近、一番の情報発信メディアは飲食店ではないかと思っているのですが、金子さんのお話を伺って、その考えがますます強くなりました。
金子: ええ、僕も同感ですね。これだけSNSが普及してくると、お店にいらっしゃるお客様1人1人がメディアになります。僕は、お客様のことを豊島メディアと呼んでいるのですが、そうした人たちのニーズを僕たちがどこまですくい上げて満足させられるかが、これからはますます重要になるでしょうね。とにかく、お客様が一番強いメディアであり、コンテンツでもあるんです。多様化するコンテンツをどうつなげていくか、それが舞台装置としての役目でもあると、僕は理解しています。