桜の花に未来を託して…… 「ふくしま浜街道・桜プロジェクト」 「フラガール 3.11 -つながる絆-(講談社)」著者 清水一利さんのレポート
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桜の花に未来を託して…… 「ふくしま浜街道・桜プロジェクト」

このプロジェクトの発案者は、現在プロジェクト実行委員会の委員長を務める広野町出身の西本由美子さん(60)。3人の男の子を育てた、どこにでもいる普通のお母さんです。

震災復興のシンボル「ふくしま浜街道・桜プロジェクト」

今もなお人々の記憶に残る東日本大震災。あれからまもなく3年が経とうという今でも、あの時受けた心の傷をいまだに癒せずにいる人も多いことでしょう。特に、大震災に伴う東京電力福島第一原発の事故によって、不安な生活を余儀なくされている福島県浜通り地域の皆さんのご苦労は計り知れないものがあります。

そうした状況の中、希望を失いつつある浜通り住民の皆さんに元気と勇気を与えようという活動「ふくしま浜街道・桜プロジェクト」が進行しています。

これは震災復興のシンボルとして、国道6号線のいわき市から新地町までの総延長193kmとその沿線の県市町村道に桜の苗木を植樹し、未来の子供たちのために桜並木を作ろうという趣旨。苗木の代金や維持管理費用は、全国から桜の木オーナーを募ってまかなおうというものです。

発案は大震災の6年前

このプロジェクトの発案者は、現在プロジェクト実行委員会の委員長を務める広野町出身の西本由美子さん(60)。3人の男の子を育てた、どこにでもいる普通のお母さんです。

西本さんは15年以上も前から地域の子供たちの健全育成のための活動を始め、8年前からは「ハッピーロードネット」という団体を立ち上げて活動を続けてきました。

桜プロジェクトそのものは大震災が起こる6年前、子供たちが自慢できる美しい故郷を残そうと、子供たちと一緒に考えたプランでした。

ところが、実施直前にあの未曽有の大震災が発生、計画は頓挫してしまいました。 「原発事故の影響で5500人いた広野町の住民は1000人になってしまいました。子供たちの多くも町を出て、220人だった中学校の生徒も今では40人しかいません。そんな町の状況を考えた時、将来、再び戻ってきた子供たちが自分の故郷はここだと胸を張れるような桜並木を作りたい、大人たちが頑張った証を桜に託したいとの思いで、もう一度プロジェクトを復活させることにしたのです」

バイタリティと強い意志

桜プロジェクトを立ち上げようと決意した西本さんでしたが、彼女には特別なコネもなければ、力があるわけでもありません。ただ、その小さな体の中には、誰にも負けないバイタリティと子供たちのために頑張ろうという強い意志がありました。

そんな西本さんは、ある時、何気なくテレビの番組を見ていました。

「ニュースキャスターの桜井よしこさんが出演されていて、原発がいい悪いは別にして、町は復興しなければいけないという発言をされたのです。それを見ていて、すぐに力を借りようと思いました。そこで、アポもなしに桜井さんに会いに行って、私たちは双葉郡という故郷を失いたくないと訴えて協力をお願いしました。すると、桜井さんは『いいわよ』と、二つ返事で引き受けてくださったのです」

初めての植樹が行われたのは2013年1月26日。新地町の国道6号線沿いでした。
今、植樹された桜の苗木の中には、安倍首相のものもあります。安倍首相は自らのポケットマネーでプロジェクトに協力しましたが、この時も、西本さんは持ち前のバイタリティを発揮します。

「安倍首相が7月1日に広野町の田んぼを視察にいらっしゃるということを聞いたので、それなら行かなきゃと、アポもなしに直談判したのです。そうしたら安倍首相は『このプロジェクトのことは聞いています。僕も協力します』とおっしゃってくださいました」 こうして、実際の植樹活動が始まると、この桜プロジェクトのことは新聞やテレビを通じて紹介され、次第に輪が広がっていきました。

企業の温かい支援に感謝

先日、名古屋市に本社のあるネイチャーズウェイの社員たちが広野町を訪れ、桜の苗木の植樹活動を実施しま した。同社は自然化粧品の製造・販売を行なっている会社で、以前から社会貢献活動として植林事業や里山の保護などに力を入れています。

テレビのニュースに 西本さんが出演しているのを見た社員の方が この桜プロジェクトのことを知り、売り上げの一部をプロジェクトの活動資金として寄付することで支援することに なったそうです。

「遠くからわざわざ来てくださって、本当にありがたいです。皆さんのお気持ちに応えるためにも、今日植えていただいた桜を大事に育てていきます」西本さんは、満面の笑みで語っていました。

また、参加した方も「私たちが毎日使う化粧品の売り上げが、こうした活動に役立っているのはとても嬉しいですね。ぜひまたこちらに来て、自分の手で桜の苗木を植えたいです」と語っていました。

桜並木を聖火ランナーで走りたい

実際の植樹活動を開始して8カ月がたった2013年9月、西本さんには嬉しい出来事がありました。それは、2020年の東京オリンピック開催が決定したことです。

「私たちにとって、7年という目標の数字が初めて出てきました。7年後には、桜並木の中を聖火ランナーとして走りたいですね。今はそんな夢を見ながら希望に向かって進んでいます」

1人1人の力は小さくても、それがたくさん集まれば大きなものになってきます。西本さんは、それこそが、本当の意味での復興ではないかといいます。

「皆さんのご協力のおかげもあり、10年間で2万本以上植えたいという当初の目標も達成できる見込みになってきました。この調子でこれからも頑張って活動していきたいですね」

大震災からまもなく3年。完全な復興にはまだまだ時間がかかりそうです。

今回のプロジェクトのような、日々の生活を通じて東北の復興支援ができる活動は、極めて重要といえるでしょう。私たちも今なお復興に向けて努力している方たちがいることを忘れることなく、自分たちのできる範囲で少しでも協力していきたいものです。

当日は萩原秀樹社長以下社員約20人に加え、同社の製品を愛用しているお客さん約30人も参加して約50本の桜の苗木を1本1本丁寧に植樹しました。

ふくしま浜街道・桜プロジェクト

 

ハッピーロードネット

http://happyroad.net

 

株式会社ネイチャーズウェイ

http://www.naturesway.co.jp/

 

取材協力=「ふくしま浜街道・桜プロジェクト」実行委員会 委員長 西本由美子さん

記者=清水一利

Photo=Kentaro Ohtani (TRANSMEDIA)

書籍紹介

清水 一利【著】 価格 ¥1,260(税込)講談社(2011/11発売)

「日本中に笑顔、元気、希望をお見せします!」 平成23年5月、フラガールたちは福島から全国へ飛び立った。

被災地・福島県いわき市の「スパリゾートハワイアンズ」が、204日間の休業を経て営業再開に至るまでの道のりを描く感動のドキュメント!

3月11日、被災した宿泊客のためにハワイアンズの社員は何を考え、行動に移したのか。 震災の影響で自宅をうしなったフラガール、じつは引退が決まっていたリーダーの「選択」。全国124ヵ所におよんだ「フラガール全国きずなキャラバン」の舞台裏。今なおつづく「風評被害」に対する会社の取り組み。「一山一家」の精神は、今もいわきの人々に息づいていた――。

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私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

清水 一利

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