皆さんは10月11日が「国際ガールズ・デー」であることをご存じでしょうか? 女の子の権利についての認識を深める「国際ガールズ・デー」は、2011年に国連で制定されました。(ちなみに「国際女性デー」は3月8日。) 制定から6年、日本でも徐々に認知され、今年10月には六本木の街の各所で国際ガールズ・デーにちなんだイベントが開催されました。10月7日、バーニーズ ニューヨーク六本木店で行われた森星さんのトークイベントに訪れたethica編集部が当日の様子を振り返ります。
女の子の権利について考える「国際ガールズ・デー」
「国際ガールズ・デー」の制定に大きく寄与したのが、国際NGO「プラン・インターナショナル」の活動です。プラン・インターナショナルは、開発途上国の支援活動を行なっている団体で、その活動はアジア・アフリカ・中南米の51カ国に及びます。同団体が特に力を入れているのが、児童労働・児童虐待などが横行する地域で生きる子供たちへの支援。その中で、途上国の女の子たちを応援するため、2007年からスタートした「Because I am a Girl」キャンペーンは、大きな広がりを見せました。
「13歳で結婚。14歳で出産。恋は、まだ知らない。」
同キャンペーンのショッキングなコピーをご記憶の方も多いのではないでしょうか。世界ではいまだに多くの女の子が「女の子だから」という理由で、十分な教育を受けられず、若年結婚や若年出産を強要され、あるいは生きる権利すら奪われているという不条理な現状があります。寄付金を募り、過酷な環境に生きる女の子たちの保護・教育を行うことはもちろんのこと、こうした因習を改善するためには、何より社会全体への啓蒙活動が重要です。
モデルの森星さんが支援活動を伝える「エンジェル」に
日本での「Because I am a Girl」キャンペーンの推進役である「Because I am a Girl(BIAAG)エンジェル」をボランティアで務めているのが、モデルの森星(もり・ひかり)さんです。森さんは2015年の就任以来、実際に支援先の現地を訪問したり、キャンペーンイベントへの参加、SNSでの発信を通じて、多くの女の子たちを勇気づけ、活動支援への参加を広く呼びかけています。翼を持った伝達者、エンジェルの名にふさわしい、チャーミングなキャンペーンのサポーターです。
森さんは昨年に続き、日本での国際ガールズ・デー イベントにおいて、ネパールから来日した少女たちとともにスピーチを行いました。10月7日、トークイベントの会場であるバーニーズ ニューヨーク六本木店には、キャンペーンカラーのマゼンタ(ピンク)を身につけた多くの参加者が集まりました。森星さんのスピーチの模様をお伝えします。
ひとりひとりの力は、実はすごく大きい
前々日にヨーロッパから帰国したばかりという森さん。ステージ登場時、モデレーターの後藤さん(プラン・インターナショナル)との挨拶がついつい英語になってしまい、「時差ボケ気味」と照れながらも、「『Because I am a Girl』は、女の子を応援することがテーマ。私と同世代の女の子が集まってくれたら良いなと思っていたので、すごく嬉しいです」と、笑顔で語り出しました。
世界中を駆け巡る多忙な森星さんがBIAAGエンジェルの活動を引き受けるきっかけになったのは、現在カバーガールを務める女性誌『25ans(ヴァンサンカン)』(ハースト婦人画報社)の企画で、ベトナムのハザンを訪れたときだったそうです。日本人と接触する機会がほとんど無い現地の人々にとって、「森さん=日本人」であるという認識に、自分の振る舞い方を振り返り、個人の影響力を実感したのだと言います。
「”個人”対”個人”が、”国”対”国”に変わってくるんだなと思ったときに、知名度とは関係なく、自分という一人の人間の力の大きさを自覚しました。そして、お金や有名になることが目的ではなく、自分の目標として、影響力を持った人になりたいって思ったんです。そうすれば伝える力が広がるなと。」
「どんな職業に就いていても『”なぜ”、”何のために”自分はこの仕事をしているんだろう』ということに、ぶち当たることがあると思うんです。ベトナムで、プラン・インターナショナルさんの活動に関わる様になったことをきっかけに、自分のゴールが定まったというか。これからも私はモデルとして、ファッションとの関わりを持ち続けていきたいのですが、そうした中で、私はいろんな国に行って、いろんな子供たちと出会って、いろんなものを発信していきたいと思ったんです。25歳になってやっと気付いて、まだまだ勉強不足ですけど(笑)」
モデレーターの後藤さんは、ベトナムを出立するとき、現地の子供たちがいつまでも森さんを見送っていたエピソードを挙げながら、「森さんの『影響力を及ぼす人になりたい』というヴィジョンと、『伝える』という強い意志を持った「BIAAG エンジェル」のイメージがぴったり重なったんです」と嬉しそうに話しました。
ファッションが持つ影響力を、もっとソーシャルグッドな取り組みに
この日の森さんは、マゼンタの枠の中に「BECAUSE I AM A GIRL!」の文字が入った白いキャンペーンTシャツを着て登壇していました。このTシャツ、実は森さん本人が国際ガールズ・デーのためにデザインしたもの。目を輝かせていきいきと話す森さんは、「女の子だから」という言葉を、とてもポジティブに着こなしているように思えました。このTシャツは、プラン・インターナショナルのスポンサーシップの申込者にも広報活動推進の一環で送られており、この日会場にいたスタッフも、同じTシャツを着用していました。
「モデルをさせていただいているので、ファッションの影響力の強さは日々実感しています。ファッションの世界は入れ替わりが激しくて、良くも悪くも、どんどん新しいものが求められ、つくられています。ファッションの世界が、もう少し未来のこと、環境のことを考えながら、プラン・インターナショナルのような活動ともっと手を取り合って行ったら、さらに楽しくて素敵なものができて、世界をチェンジできるんじゃないかと思うんです」
実際、国際ガールズ・デーの趣旨に共鳴したバーニーズ ニューヨークの「GIRL POSSIBLE」の活動など、ファッション界のアクションは、多くの人々の問題意識を喚起し、プラン・インターナショナルのような支援団体の広報活動を大きく後押ししています。
「私もそうなのですが、女の子って『カワイイ』とか『オシャレ』とか『写真映えしそう』っていうところから興味を持っていきますよね。でもそれって悪いことではなくて、そうであれば、私たちもそういう風に発信していけば良いと思うんです。このキャンペーンのシンボルカラーのピンクは、すごくインプットされやすくて、しかも支援先の国々の民族衣装の鮮やかな色のイメージにも通じるので、このピンクを大事にしたいなと考えながら、Tシャツをデザインしました」
ベトナム、カンボジア、ネパール・・・25歳になって気づいた「次の世代に伝えたいこと」
森さんはこれまでに、ベトナム、カンボジア、ネパールを訪問し、現地の実情を学ぶとともに多くの女の子たちを励ましてきました。自ら現地の人々と英語で話し、積極的に情報を収集しているそうです。森さん自身は、こうした経験から何を得ているのでしょうか。
「毎回、支援先の国を訪れるたびに、いつか私に子供が生まれたら、孫ができたら伝えたい、そう思えるような発見や気づきがあるんです。最初に23歳でベトナムを訪問したときには、『今ある環境を当たり前だと思わない』ことを学びました。当たり前と思わず、感謝の気持ちを忘れないこと。カンボジアでは、これは女の子に限りませんが、人間として『生きる目的やヴィジョンを持つこと』の大切さを実感しました。こんなにも多くの選択肢がある国に住んでいてさえ、目標を失うとアンハッピーになっちゃうんです。」
「今回訪れたネパールは、プラン・インターナショナルのスタッフも含め、皆さんのチームワークが良くて、明るい未来のある国だという印象がありました。途上国だから劣っているなんていうことはなく、今のネパールにも良いところはいっぱいあります。ネパールの子供たちに画用紙を渡して、将来の夢を描いてもらったら、個人的な夢じゃなくて、みんなが自分たちの住んでいる街のきれいな景観を描いたのにはびっくりしました。みんな自分たちの村をどうきれいにしていくかということで頭がいっぱい! 未来しか見ていないというか、私にとっても刺激になりましたし、今回すごく勉強になりました」
「実は今もネパールの子供たちと連絡を取っていて、みんなが見てくれているから、SNSの投稿も『みんなの刺激になるような内容にしなきゃ』とか、以前よりちょっと考えてしまうようになりました(笑)。でもやっぱり、自分の考えをシェアしてくれたりすると、とても嬉しい。こうやっていろんな国で友達ができていくことが、すごくハッピーです。自分だけが現地に行って学んで自己満足で終わらないよう、このエンジェルの活動を通して、伝える力をもっと磨いていきたいと思います。そうすることで、いま自分がしている仕事をやる意義も見出せて、もっと頑張れます。」
森星さんの提案する「私によくて、世界にイイ。」は・・・
最後に後藤さんから、会場の参加者へのメッセージを求められると、森さんは「苦手なんですよね、最後のまとめの言葉って(笑)」とはにかみながら、次のようにスピーチを結ばれました。
「繰り返しになりますが、ひとりひとりの力は大きいということをいろんな国で学びました。いま、SNSなど個人が発信できる場も増えてきていますし、それをみんなが良い方向に活用してほしいと思います。慈善活動を押し付けているわけではなくて、自分のブラッシュアップとして、まずは知識や情報をインプットするところから、みんなが関わっていけたら良いな、と思います。一つの国のことを知れば、自分の国のことをもっと知りたいと思えますし、自分自身の生きるモチベーションが上がるので。」
今回お話をうかがい、森さんがBIAAGエンジェルのボランティア活動を、とてもナチュラルに自分自身の成長の中に取り入れている印象を受けました。すでに大きな影響力をお持ちの森さんですが、これからのさらなる活躍がますます期待されます。
皆さんも、SNS上でまずは気軽に「国際ガールズ・デー」に関するハッシュタグ「#国際ガールズデー」「#BecauseIamaGirl」 「#プランインターナショナル」を検索・発信して、途上国の女の子たちや世界中の賛同者と交流してみるのも良いかもしれません。あるいは、この記事や「Because I am a Girl」のキャンペーンサイトをシェアして、家族やお友達といろんなことを話してみては?
プラン・インターナショナルは、私たちにこのように語りかけています。
「Because I am a Girl(女の子だから) その後に来る言葉は、私たちの力で変えられる未来です。」
プラン・インターナショナルの「Because I am a Girl」キャンペーンの詳細はこちらから
https://www.plan-international.jp/girl/special/oct11.html
記者:松崎 未來
東京藝術大学美術学部芸術学科卒。同大学で学芸員資格を取得。アダチ伝統木版技術保存財団で学芸員を経験。2011年より書評紙『図書新聞』月刊誌『美術手帖』(美術出版社)などのライティングを担当。2017月3月にethicaのライター公募に応募し、書類選考・面接を経て本採用となり、同年4月よりethica編集部のライターとして活動を開始。関心分野は、近世以降の日本美術と出版・印刷文化。
ーーBackstage from “ethica”ーー
森星さんのInstagramアカウント(@
<エシカ記事予告> 女の子たちの可能性に向けて バーニーズ ニューヨークが六本木の街をピンクに染めた国際ガールズ・デー
私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
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