スタイルの押し売りはしない
大谷: コーヒーや喫茶店というと、かつてはオヤジの文化だったように思うのですが……
井崎: そうですね(笑)
大谷: スターバックスやタリーズといったコーヒー店の登場で、女性を中心に若い世代が生活の中にコーヒーを飲む文化を取り入れるようになったような印象があります。「スタバ女子」なんて言葉もありますが。
井崎: そんな言葉があるんですか。最近はカフェの楽しみ方も変わりましたね。コミュニケーションの主流がソーシャルメディアになってきて。
大谷: 僕はちょっとワインと似ているところがあるように思うのですが、最近のコーヒーブームによって、消費者がコーヒー豆の産地や焙煎といった、より深い部分にまで関心を持つようになってきました。井崎さんは、昨今のこうした流れをどう思われますか?
井崎: 素晴らしいと思いますね。僕はコーヒーって究極の嗜好品だと思っています。よく『井崎さん、コーヒーにミルク入れるのって邪道ですよね』みたいなこと言われるんですけれど、僕、全然そんなこと思わないんですよ。好きなように飲めば良いと思っていて。スタイルの押し売りって嫌いなんです。
もちろん、我々は常に最高のものを追求し提供するべきだと思っていますけれど、僕たちの手を離れたら、消費者の方が良いと思う方法で飲めば良いと思ってます。それがこの業界の真のサステナビリティにつながっていくと思うんですね。
大谷: 最高のものを提供するけれど、スタイルの押し付けはしない、と。
井崎: しません! 僕がこうしてコンサルタントの仕事をしながら、コーヒーに入れる甘味料の開発に携わるって、業界的には結構邪道だと思うんです。でも僕はそうは思いません。僕の使命は、たくさんの人にコーヒーを気軽に飲んでもらうこと。コーヒーを飲んで、その人の一日が幸せになるお手伝いをすることが僕の仕事です。