テレビCMやポスター、雑誌広告など、私たちの日常は広告であふれています。なにげなく目にした映像やキャッチフレーズ、音楽などが心に残り行動を変化させることも少なくありません。今回は、その広告の世界を存分に堪能できるミュージアムをご紹介します。ふだん広告を意識していない人ほど、新しい発見があり楽しめる場所だと思いますよ。
クリエーター必見は、圧巻のライブラリー
ミュージアムですから展示物を中心とした構成ですが、ぜひ注目していただきたいのは併設されたライブラリー。ここは日本で唯一の広告に関する専門図書館となっています。とくに現在、広告業に携わっている方なら「宣伝会議」「ACC」「ADC」「TCC」などの広告賞はお馴染みのはず。それらの年鑑・書籍がズラリと並んでいて、なんだか背筋が伸びる感覚になります。ほかにも制作のヒントになるものが揃っていますので、広告や広報、PRのお仕事をされている方は見逃せません。また、美大生など表現のアイデアが欲しいという人も、ぜひ足を運んでみることをお勧めします。
広告の歴史から見える日本経済の歩み
ライブラリーの下が展示ホールになっていますが、その途中の階段にも仕掛けが。吹き抜けの壁一面に、過去の名作コピーの数々が浮かびますのでお見逃しなく。ちょっと心に刺さる言葉が浮かんでは消えるので、ずっと眺めていたくなりますよ。展示ホールはというと、さながら広告の壮大な歴史絵巻。宣伝広告の元祖といわれる越後屋の貸し傘や、江戸の町を彩った看板などが展示され、そのアイデアとセンスに驚かされます。さらに時代を上っていくと、皇太子様ご成婚時のグラビアや1964年の東京五輪ポスター、さらにビールの広告など、高度成長期をひた走る日本の姿が浮き上がってきます。
ちなみに「男は黙ってサッポロビール」というキャッチコピーは当時爆発的に流行りましたが、今でも通用する格好良いフレーズです。この広告で渋く寡黙な男を表現した三船敏郎さんは、2017年で銀幕デビュー70周年だそうです。
なつかしい!が押し寄せる広告
近年の広告展示コーナーに歩みを進めると、「なつかしい!この当時は…」といった思い出があふれてきます。20年以上も前のテレビCMでも、インパクトのあるものは細部までけっこう覚えているものだな、とあらためて感じました。たとえば、「バザールでござーる」は、1991年の作品ですが、この言葉を聞くと自動的にあのとぼけたおサルさんが頭に浮かびますよね。そして今流れているテレビCMなどが、20年30年後にどのような影響を及ぼしているのか、想像するのも楽しいものです。
広告の役割や手法も徐々に変化
広告にはマーケティングという概念がありますが、それに加えて新しいコミュニケーション手法も日々模索されています。インターネットの普及やスマートフォンの登場など、テクノロジーの進歩も広告手法の進化を加速させています。
また、インターネットによる優れた広告を表彰する「東京インタラクティブ・アド・アワード」では、第3回グランプリに「スラムダンク」(電通/広告主:井上雄彦)が選出されました。これは、コミックス1億冊突破にあわせて、作者の井上雄彦氏自らが広告主となって新聞やウェブなどで感謝の気持ちをあらわす広告を展開したもの。新しいコニュニケーション手法と言えます。
さらに、VR(バーチャルリアリティ)や、AI(人工知能)を駆使した広告に取り組むクリエーターも登場しています。今までにない広告が、私たちを驚かせ、楽しませてくれることでしょう。
広告で社会問題を解決
広告の歴史は経済や技術発展の歴史でもありますが、これからの時代や環境を見据えると、「モノを売るための広告」だけでは通用しなくなります。長い歴史のなかで広告が培ってきた「人々を動かす力」を有効活用し、行動へといざなうアイデアで様々な社会問題を解決する糸口になっていくことが期待されています。
記者 小田 亮子
神奈川県出身。求人広告、結婚情報誌などの制作ディレクターを経てフリーランスに。現在おもにブライダル関連のレポートを「ゼクシィ」「ゼクシィPremier」にてディレクション。「ethica(エシカ)~私によくて、世界にイイ。~ 」ほか、エステティック、化粧品、ジュエリーなどの記事をライティング。三人姉妹の真ん中に育ち、女子高・女子大卒。趣味は愛猫(雌)との女子会。
ーーBackstage from “ethica”ーー
アドミュージアム東京のホームページ(http://www.admt.jp/)に『広告って、やっぱり面白い』という言葉があるのですが、本当にその通りだと思わせてくれる素敵なミュージアムでした。今回は取材で訪れましたが、企画展が変わるたびに行ってみたいと思います。カレッタ汐留内ですので飲食店も充実。お気に入りスポットが増えました。
私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp