2018年1月30日から、神木隆之介さんが出演するauの新CMシリーズ「意識高すぎ!高杉くん」がスタートしました。何事にも意識の高い高校生「高杉くん」が、同級生の「松本さん」にauの様々なサービスやプランを紹介していく同シリーズ。最新CM「購買部」篇の最後のセリフが気になった『ethica(エシカ)』読者も多いのではないでしょうか。誰もがちょっと気になってしまう「高杉くん」を『ethica(エシカ)』の視点からご紹介します。
「三太郎」に続け!? auのCM新シリーズに神木隆之介さん・松本穂香さん
au(KDDI)のCMといえば、桃太郎・浦島太郎・金太郎の三人のキャラクターでおなじみの「三太郎」シリーズ。日本昔話の登場人物たちによるホームコメディ風のCMが幅広い世代から愛されていますね。この人気CMと並行して、今年新たにauの新たなCMシリーズ「意識高すぎ!高杉くん」が始まりました。
あの「三太郎」シリーズに並ぶのですから、「高杉くん」もよほど強烈なキャラクター、と思いきや、なんと高杉くんは普通の高校生! しかし、人気絶頂の神木隆之介さん、松本穂香さんという豪華キャスティングに納得です。(ちなみに神木さん自身もauのCM出演のオファーが来たときは「(三太郎シリーズの)鬼ちゃんの友達とかなのかなと思って」いたのだとか。)
新キャラクター「高杉くん」はどんなキャラクター?
CM第一弾の「はじまる」篇では、神木さん演じる「高杉くん」が、コーラス部に所属し、その意識の高さでクラスの噂になっていること、松本さん演じる同級生(松本さん)が、モダンダンス部に所属し、高杉くんの存在が気になり出していることがわかります。小春日和の校庭にコーラス部の歌声が流れ、新たな学園ドラマのスタートに期待が膨らみます。
■「はじまる」篇
■出演者インタビュー&メイキング映像
神木隆之介さんも松本穂香さんも、20代とは思えない初々しい学生姿です。
「意識が高い」学生の一途さを爽やかに
ところで、本来「意識が高い」ことは評価されるべき長所ですが、ゼロ年代の終わり頃から就職戦線で盛んにこの言葉が用いられるに従って、内実の伴わない学生の自己PRが「意識高い系」と揶揄されるようになりました。そして今や日常会話の中で用いられる「意識が高い」という言葉には、就活生に限らず、どこか嘲笑的な意味合いを含んだネガティブなイメージが付きまとうように。
そんな中で、敢えて「意識高すぎ」な高校生を主人公に据えた今回のCMシリーズは、見方によってはかなりアイロニカルにも受け取れます。
公式サイトに掲載されている高杉くんの「意識が高い」プロフィールがこちら。
・普段から健康のために、水筒に入れた白湯を持ち歩いて飲んでいる。
・コーラス部に所属。練習する時は、常に裸足で歌う。
・「アヴェマリア」を歌うためだけに、ラテン語を習い始めた。
高校生なのにこの本気の度合い、というギャップが笑いを誘いますが、地球環境への配慮や自己啓発意欲が、一種のネタとして扱われているのは「意識高い系」が培った風潮でしょう。
しかしCMシリーズが回を重ねるごとに、どこまでもマイペースで真っ直ぐな高杉くんと、彼が気になってしょうがない松本さんの二人に、私たちは好感を抱くようになってきます。それは高杉くんの言動が、就活攻略や世間体を踏まえたものではなく、純粋な興味から生まれているものだとわかるから。(なぜここまでauに心酔しているのかは全くわかりませんが……。)
■「カタログ」篇
神木さん・松本さんが醸し出すほのぼのとした雰囲気に、次第に親近感が芽生え、「意識が高い」ことへのネガティブなイメージが徐々に薄れていくように思います。高杉くんの今後の活躍が、本来の「意識の高い学生」の復権となりうる、かも知れませんね。
■「親を説得する方法」篇
購買部で『ハムレット』? 高杉くんの愛読書はシェイクスピア
そして同シリーズの最新CMがこちらの「購買部」篇。
■「購買部」篇
高杉くんのセリフ「ピタットかフラットか、それが問題だ」は、皆様ご存知、シェイクスピアの戯曲『ハムレット』の名ゼリフ「To be or not to be, that is the question.(生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ)」のパロディ。auの学生向けの2プラン「ピタット学割」と「フラット学割」を、リーズナブルなたまごサンドとボリューム重視のナポリタンドッグになぞらえています。
また、人波に揉まれる松本さんの背中を優しい目で見守る高杉くんの「松本さん、人生はいくつもの選択でできているんだってね」という心の声も、ハムレットの「Life is a series of choices.(人生は選択の連続である)」を彷彿とさせます。CM第五弾にして、ようやく高杉くんの「愛読書はシェクスピアとauのカタログ。」という設定が具体的になりました。
せっかくの学園物なので、ぜひ今後は『ロミオとジュリエット』のような心ときめく展開を期待したいところですが、前回の「デート?」篇の様子だと、高杉くんと松本さんのラブストーリーは当面(?)お預けのようです。
■「デート?」篇
もっと浸透させたい!「これはフェアトレードのバナナですか?」
CMの最後には、高杉くんが購買部のおばさんに「これはフェアトレードのバナナですか?」と訊ねるシーンが。キョトンとするおばさんと、やや退き気味に「意識高すぎ」とつぶやく松本さん。CMの「オチ」として使用されていて、なんだか素直に笑えない『ethica(エシカ)』読者もいらっしゃるかも知れませんが、高校生が日常の買い物の中でフェアトレード商品に関心をもち、それが特に「意識高すぎ」ることではなくなる、そんな未来が本当に訪れたら良いと思います。
ちなみに、食品ではコーヒーやチョコレートを中心に「フェアトレード」という言葉が広まっていますが、フィリピンやコロンビア、エクアドルから日本に届くバナナにおいても、フェアトレードの取組みが進み、最近ではスーパーマーケットの店頭で見かけるようになってきています。いま現在フェアトレード・バナナを取り扱っている高校の購買部は、寡聞にして存じ上げませんが、高校の購買部にフェアトレード・バナナが当たり前のように並ぶ日も、そう遠くはないかも知れません。
ちなみに、立命館アジア太平洋大学や国際基督教大学といった一部の大学では、数年前から学生さんたちと大学の売店が連携して、フェアトレード商品を取り扱っているそうです。国際交流が盛んな大学だと、自然と学生さんのフェアトレードへの関心も高まるんでしょうね。高杉くんの関心(とauのサービス)も、今後よりグローバルな展開を見せるかも知れません。高杉くんの意識が次はどこに向かうのか、続編が待ち望まれます。
記者:松崎 未來
東京藝術大学美術学部芸術学科卒。同大学で学芸員資格を取得。アダチ伝統木版技術保存財団で学芸員を経験。2011年より書評紙『図書新聞』月刊誌『美術手帖』(美術出版社)などのライティングを担当。2017月3月にethicaのライター公募に応募し、書類選考・面接を経て本採用となり、同年4月よりethica編集部のライターとして活動を開始。関心分野は、近世以降の日本美術と出版・印刷文化。
ーーBackstage from “ethica”ーー
神木くんといえば、三池監督の「妖怪大戦争」! な世代である私にとっては、神木くんがもうすぐ25歳になるという事実がもはや受け入れられませんし、その神木くんが高校生役(=若作り)をしているCMに完全に浦島太郎状態です。これはもう、乙ちゃんのお店で玉手箱を買うしかないですね。公式サイトのキャラクター紹介の三人目の「Coming Soon」も気になります。
私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp