2018年7月の西日本豪雨で、甚大な被害に見舞われた中国・四国地方。復興へ向けた工事が続く日々ですが、直接的な被害を受けていない観光地も数多く存在します。しかし残念なことに風評被害によって観光客が激減、回復に向かっているとはとても言い難いのが現況。そこで中国・四国地方の9県が力を合わせ、冬の観光プロモーションを行うことを決定、12月13日に記者発表会が開催されました。
“地元”のために一肌脱いだのは、デーモン閣下
『中国・四国9県連携プロモーション』を推進しているのは、中国・四国地方9県(広島県・鳥取県・島根県・岡山県・山口県・徳島県・香川県・愛媛県・高知県)および、せとうち観光推進機構、山陰インバウンド機構、四国ツーリズム創造機構の3つのDMO(デスティネーション・マネージメント・オーガニゼーション)。県という垣根を取っ払って、エリア全体で盛り上げていこうというスタイルが特長です。
『中国・四国9県連携プロモーション記念発表会』は、せとうち観光推進機構の村橋克則事業本部長の代表挨拶からスタート、続いて9県すべての観光相談窓口となる『中国・四国9県観光ツアーデスク』(2019年1月末までの期間限定)が、会場となった広島県のアンテナショップ『ひろしまブランドショップTAU』(東京・銀座)に設けられることが発表されました。
その『中国・四国9県観光ツアーデスク』の1日所長に着任したのは、広島カープのユニフォームに身を包んだデーモン閣下。「わが輩が世を忍ぶ仮の幼少期を過ごしたのが広島県」と切り出し、さらに「広島のみならず、中国・四国の9県すべてを応援するために、ちょっと一肌脱ごうとやってきた次第」というお言葉も。村橋本部長より任命書を手渡され、ぐっと表情を引き締められたのが印象的でした。
この冬の観光は、“ベストナイン”がキーワード
今回閣下が野球のユニフォーム姿で現れたのは、カープ愛以外にも大きな理由がありました。実はこのプロモーション、9県が力を合わせるということから野球チームになぞらえ、魅力的なスポットやアイテムなどを9つ、そう“ベストナイン”を挙げるという手法。
先陣を切ったのは、閣下プレゼンツの「広島県の個悪魔的ベストナイン」。ちなみに4番バッターは冬の味覚「牡蠣」で、「生でも焼いても美味しい」と自信たっぷりです。
さらにユニフォーム姿のサポーターが2名登壇。岡山県出身の俳優・前野朋哉(まえの ともや)さんと、香川県出身でAKB48Team8所属のアイドル・行天優莉奈(ぎょうてん ゆりな)さんです。故郷が甚大な被害を受けた前野さんが、「岡山県の個人的ベストナイン」を披露。県を代表する観光地である「倉敷美観地区」がまったく無事なことを報告するとともに、「独特の中華そばがあって、美味しい上にリーズナブルなんですよ」と地元っ子ならではのマニアックなネタの紹介もありました。
各県のベストを集めた『中国・四国 冬のベストナイン』
ここまでは単県のベストナイン。今回初となる画期的な試みが、各県のベストが集結した『中国・四国 冬のベストナイン』で、温泉、パワースポット、などの“観光系”から、ご当地鍋、スイーツなど“グルメ系”まで集計されています。
当日は「定番!ご当地鍋ベストナイン」「定番!温泉ベストナイン」「知られざる!スイーツベストナイン」がパネルで発表され、ご当地鍋から選ばれた岡山県の「そずり鍋」が、ステージと会場で振る舞われました。ちなみに「そずる」とは「削る」の意。牛の骨周りからそぎ落とした肉に、豆腐や野菜などを醤油味で煮込んだ県北部の郷土料理なのです。
「このエリアには、インスタ映えするスイーツも充実しているので、若い人たちにもたくさん来てほしい」(行天さん)、そして「復興に向けて大変そうだから遊びに行くのは…と遠慮しないで。観光にいらしてくださることが、何より被災地の元気となるんです」と前野さん。
最後を締めたのは、「前の(前野)めりで行ったら、仰天(行天)することがたくさんありますよ」という閣下のメッセージ。流石のひと言でした。
エシカ個別インタビュー「他県の魅力も学び、助け合っていきたい」(行天優莉奈)
発表会後、ethica編集部の個別取材に応じてくれたのは、紅一点の行天さん。各都道府県から1名選ばれて構成されるAKB48のTeam8メンバーで、いわば観光大使的なアイドル。
エシカ: 今回は地元の香川県だけでなく、中国・四国地方全体の応援も求められています。
行天さん: 幸い香川県は被害が少なくて済みました。だからこそ周りの県への応援により力を入れたい。でも気づけばご近所県のことあまり知らないんです。今回は香川県以外の魅力を勉強する良い機会にもなりました。
エシカ: 実は8月末から『ふっこう周遊割』という旅行の割引制度が導入されていて、中国・四国地方9県のうち、2県以上を周ることを推奨されています。もし香川県以外にも足を延ばしてもらうとすれば、どんな旅を提案されますか?
行天さん: そうですね、例えば麺つながり。地元の讃岐うどんの前後に、岡山県の中華そばというのはどうでしょう?徳島県にも有名な徳島ラーメンもありますし
エシカ: 発表会では香川県自慢の機会が少なめだったので、最後に香川県のイチオシをお聞きかせください。
行天さん: やっぱり“こんぴらさん”こと、金刀比羅宮ですね。毎年登っているんですよ。お参りした後に山頂から眺める景色がとてもきれいなんです。なかなか階段が手強いですが、ぜひお参りにいらしてくださいね。
『中国・四国 冬のベストナイン』
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記者:とがみ淳志(とがみあつし)
1964年大阪府生まれ。神戸大学経済学部経済学科卒。日本旅のペンクラブ理事。日本旅行記者クラブ会員。(一社)日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート/SAKE DIPLOMA。1988年(株)リクルート入社後、海外旅行情報誌『エイビーロード』の営業および制作に。93年結婚情報誌『ゼクシィ』の創刊を担当。同誌の多角的運営に携わった後、99年退社後フリーに。現在は(株)トランスメディアで編集顧問を務めるかたわら、食、旅、酒、温泉、不動産、猫などの分野を中心に編集、プランニング、ライティングを行う。情報誌や雑誌、機内誌およびウェブなど幅広い媒体を手がけている。
ーーBackstage from “ethica”ーー
西日本豪雨のほか、関空が孤立した台風、北海道を襲った地震…。まさに日本列島は災尽くしで、厳しく辛い2018年となりました。崩壊するのは一瞬なのに、元に戻すには長い年月と膨大なパワーがかかるなかでの、今回の取り組み。県の枠組みを越えての復興プロモーションは、口にするのは容易でも実行に移すにあたっては数多のハードルが存在したことでしょう。それを乗り越えた“ベストナイン”が、それぞれの持ち味を発揮されることを願うばかりです。また現地を訪れ、経済効果をもたらすことこそ応援。ぜひ機会を創って旅に出たいですね。
私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
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