エシカ: 「白ばらボーイズ」結成のきっかけとなった酒田市のグランドキャバレー「白ばら」は、地元の白崎さんから見て、どんな存在だったんですか?
白崎映美: 酒田の人はみんな名前だけは知っていまして、でも私は、グランドキャバレーですし、行った事はなかったのです。女性は行った事ない人が多いと思います。
6年位前連れて行ってもらい、目ん玉飛び出しました。
も〜、うっとり!ゴージャスムーディーロマンチック!
上々颱風では、わざわざそういう所を探してライブしてましたから、自分の地元にこんないいとこあったのかと。でも、最盛期は90名いたホステスさんは5名、お客様も5名、という感じで、どうしてもここを盛り上げたい!と興奮しまして、地元のみんなでクラウドファンディングで雨漏りを直したり、トイレを綺麗に直したり、お掃除隊を編成したり、私はショーで盛り上げたい、と白ばらボーイズを結成し、白ばらキャバレーナイトショーを開催して、みなさんに白ばらを見て感じてもらいたい!と活動しています。
エシカ: 「白ばらボーイズ」は、楽器を演奏していたミュージシャンが突然手品をやってくれたり、芸達者な人が多いのに驚きますね。
白崎映美: はい!上々颱風時代付き合いのあったオンシアター自由劇場(串田和美さん主宰、吉田日出子さん在籍の劇団)の役者さん達に声をかけました。彼等だったら演奏もできるし、キャバレーの幕間に、コントやジャグリングもできる!正しくぴったりだと。そして、手練れのミュージシャンにもお願いし、白ばらボーイズが生まれました。
エシカ: 白崎さんは、東北6県ろ~るショー!!の代表曲「まづろわぬ民」の歌詞にもあるように、シャイで、気持ちが優しくて、でも不屈の精神を内に秘めた、東北人の血を引いていますよね。まさにそのとおりで、自分の出身地である東北地方で震災があって、そのあと自分の所属している上々颱風が活動休止して、でも、諦めずに活動を続けてきた結果、今やバンドが2つもあります。その諦めない生き様には敬服しますが、ここ数年を振り返って何か思うところはありますか?
白崎映美: ありがとうございます。
東北人は粘り強く、諦めが悪いのです。なんせ「おしん」のふるさとですから(笑)。
東日本大震災でお家を流された父ちゃんが、マスコミに「大丈夫です」と泣きながら答えてました。
私と同じ東北弁で。
大丈夫でなくとも大丈夫だと言ってしまう東北人。私はテレビの前で泣けてきました。
東日本大震災、白ばら…と経験して、いてもたってもいられなくなり、今に至ります。
みんなが、喜んでくれたらいいなあと。
エシカ: いっぽう、ライブのときは必ず観客席に乱入してお客さんとアドリブを混じえた会話をしますよね。そういうときの、機転の効いたトークが沸き上がってくるエンタテイナー魂は、どこで醸成されたものなんでしょうか?
白崎映美: 上々颱風はありとあらゆる場所、老若男女の前でライブをしてきました。鍛えられました。
ある時、ドラムの渡野辺マントが、「映美、酒田弁でMCやれよ」て言ったのです。その頃は自分の田舎が恥ずかしかった私は、いやいややってみたら急にお客様との距離が縮まったのです。
「こんにちは、みなさまお元気ですか?」
「こんにぢは〜、父ちゃん、元気だが〜?」
随分違うでしょ?
オラうれしぐなりました。
エシカ: 上々颱風がメジャーデビューした90年代は、CDが何百万枚も売れることに音楽業界が価値を求めていたような時代で、ライブから叩き上げてきた上々颱風にとっては多少窮屈じゃなかったかと思うのですが、いかがですか?
白崎映美: はい、私達はライブやコンサートをやらなさそうな所で演るのが、主義というか、良さでもありました。音楽で売れるレール、例えばライブハウス→ホール→武道館→東京ドーム、みたいなのって、面白くないよねって考えでした。
障害のある人達のところへ出かけて行ったり、神社やお寺、魚市場、東京大学駒場寮のお風呂場、西成三角公園、挙げればキリがありませんが、上々颱風の醍醐味はそこにありました。そこで私はたくさんのことを学ばせてもらった。音楽業界に身を置いている感覚がなかったです。
みんな、父ちゃんも母ちゃんもじっちゃんばっちゃんみんな来い〜という感覚は上々颱風にいたからこそ身についたものです。
エシカ: 今はライブがアーティストの価値を決めるとても大事な要素になってきました。まさに白崎さんは水を得た魚のように見えますね。
白崎映美: 時代がどんなにデジタルになってもライブ、人間が歌うということはこれからも変わらず、私はなおさら原始人みたいに歌っていきたいなあと、思います。
エシカ: そうですね。今はアーティストのライブによっては、演奏も照明も、場合によっては歌までもがコンピュータから流れていて、決め事どおりに動いてますよね。それはそれでデジタルでしかできない楽しさがあるんですが、白崎さんのライブは、それとは真逆で、こうでなければいけない、普通こんなことやらない、みたいな縛りがなくて、あまりにも発想が自由で、心の解放みたいのを与えてくれるような気がします。
白崎映美: うれしいです。すんごぐうれしいなあ。ありがどございます。人間が猿みたいだった頃、美味しい実をみつけたら、うれしい声を出しただろう、仲間と。仲間が冷たくなって動かなくなってしまったら、悲しい声を出しただろう、それは仲間に伝わってみんなで声を出しただろう。
そんな風に歌いたいと思いました。みんなと一緒にいたいのです。笑ったり、歌ったり踊ったり。
エシカ: 最後にお伺いします。白崎映美さんにとっての「私によくて、世界にイイ。」は、何でしょうか?
白崎映美: はい。正しく「ライブ」であります。
みんなが笑えば、私もうれしい、みんながうれしいとうれしいが、広がって世界がうれしいになるように歌っていきたいなあ。
エシカ: まさにそうですね。白崎さんの歌う姿を見ながら、ふと横を見ると客席のみなさんが笑顔になっているのを見ると、うれしくなります。ライブとは、そのようなものですよね。今回は、ありがとうございました。今後の活動を楽しみにしています。