東北人の魂を歌い続ける、天性のエンタテイナー 【白崎映美さんインタビュー】
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東北人の魂を歌い続ける、天性のエンタテイナー 【白崎映美さんインタビュー】

白崎映美&白ばらボーイズ、中央が白崎映美

先日、宇多田ヒカルさんの「歌姫ってなんなん」というツイートがちょっとした話題になりましたが、今回ご紹介するアーティストは、まさに日本を代表する歌姫、白崎映美さんです。

 この2019年3月は、彼女がリードシンガーを務める2つのバンド、「白崎映美&白ばらボーイズ」と「白崎映美&東北6県ろ~るショー!!」の両方の公演が行われるというめずらしい月。

 そんな白崎さんの近況をお聞きするとともに、誰もがその迫力のライブアクトに釘付けになってしまう、天性のエンタテイナーとしての人となりをクローズアップします。

白崎映美って、どんな人?

彼女は、1990年にエピックソニー(現・EPIC Records Japan)から、伝説の音楽集団・上々颱風(シャンシャンタイフーン)のシンガーとしてメジャーデビューしました。「愛より青い海」「いつでも誰かが」などのヒットを飛ばしながら、全国の神社やお祭り広場などユニークな会場でのライブを繰り広げていました。

2013年に同バンドの活動休止が発表されましたが、その後も白崎さんは精力的に歌い続けています。そのライブは必見。会場の最後尾にいる観客をも、ひとり残らず楽しませることのできる芸才には改めて驚かされます。

白崎映美&東北6県ろ~るショー!! のライブ

白崎映美&白ばらボーイズとは

「白ばらボーイズ」は、白崎さんの故郷である山形県酒田市にあったグランドキャバレー「白ばら」でナイトショーを演じるために結成されたバンドです。キャバレーと言うと、現在のキャバクラの古い形態じゃないの、と思うかも知れませんが、映画の舞台にもなったパリの「ムーラン・ルージュ」がそうであるように、本来は、音楽、ダンス、演芸パフォーマンスを取り混ぜたショーを観せる場でもありました。「白ばらボーイズ」は、白崎映美さんの歌ばかりでなく、才能あふれるバンドメンバーたちの演芸やパフォーマンスをも楽しむことができる、まさにキャバレー・エンタテインメントを体感できる稀少な集団です。

今回のライブは3月9日に、そのグランドキャバレーを引き継いだナイトスポット「白ばら」で行われます。バンド発祥の地でショーを堪能できるというのですから、遠方からでも出向いてみる価値があるのではないでしょうか。そして、はるばる来てくださったお客様のために、酒田のあちこちを巡るオプショナルツアーも用意されているなど、至れり尽くせりです。

白崎映美&白ばらボーイズのライブ

白崎映美&東北6県ろ~るショー!!とは

いっぽう「東北6県ろ~るショー!!」は、2011年の東日本大震災に心を痛めていた東北出身である白崎さんが、東北を盛り上げ、東北人の不屈の魂を世に伝えようという気持ちが高まって結成したバンドからスタートしたものでした。根底にそのような東北応援団のコンセプトを持ちながらも、軸足は極上のエンタテインメント。歌あり踊りあり、爆笑トークありのエネルギッシュなステージで、腹の底から楽しませてくれます。

今回は、3月15日に東京都の下北沢にある北沢タウンホールにて、白崎さんがこのバンドを結成するに至った、東北人の魂を描いた小説「イサの氾濫」の著者ある木村友祐さんのトークとのコラボイベントという形で行われます。

白崎映美&東北6県ろ~るショー!!

白崎映美さんインタビュー

さて、そんなふたつのステージを控えた、白崎映美さんにお話をお聞きしてみました。

エシカ: 「白ばらボーイズ」結成のきっかけとなった酒田市のグランドキャバレー「白ばら」は、地元の白崎さんから見て、どんな存在だったんですか?

白崎映美: 酒田の人はみんな名前だけは知っていまして、でも私は、グランドキャバレーですし、行った事はなかったのです。女性は行った事ない人が多いと思います。

6年位前連れて行ってもらい、目ん玉飛び出しました。

も〜、うっとり!ゴージャスムーディーロマンチック!

上々颱風では、わざわざそういう所を探してライブしてましたから、自分の地元にこんないいとこあったのかと。でも、最盛期は90名いたホステスさんは5名、お客様も5名、という感じで、どうしてもここを盛り上げたい!と興奮しまして、地元のみんなでクラウドファンディングで雨漏りを直したり、トイレを綺麗に直したり、お掃除隊を編成したり、私はショーで盛り上げたい、と白ばらボーイズを結成し、白ばらキャバレーナイトショーを開催して、みなさんに白ばらを見て感じてもらいたい!と活動しています。

エシカ: 「白ばらボーイズ」は、楽器を演奏していたミュージシャンが突然手品をやってくれたり、芸達者な人が多いのに驚きますね。

白崎映美: はい!上々颱風時代付き合いのあったオンシアター自由劇場(串田和美さん主宰、吉田日出子さん在籍の劇団)の役者さん達に声をかけました。彼等だったら演奏もできるし、キャバレーの幕間に、コントやジャグリングもできる!正しくぴったりだと。そして、手練れのミュージシャンにもお願いし、白ばらボーイズが生まれました。

エシカ: 白崎さんは、東北6県ろ~るショー!!の代表曲「まづろわぬ民」の歌詞にもあるように、シャイで、気持ちが優しくて、でも不屈の精神を内に秘めた、東北人の血を引いていますよね。まさにそのとおりで、自分の出身地である東北地方で震災があって、そのあと自分の所属している上々颱風が活動休止して、でも、諦めずに活動を続けてきた結果、今やバンドが2つもあります。その諦めない生き様には敬服しますが、ここ数年を振り返って何か思うところはありますか?

 白崎映美: ありがとうございます。

東北人は粘り強く、諦めが悪いのです。なんせ「おしん」のふるさとですから(笑)。

東日本大震災でお家を流された父ちゃんが、マスコミに「大丈夫です」と泣きながら答えてました。

私と同じ東北弁で。

大丈夫でなくとも大丈夫だと言ってしまう東北人。私はテレビの前で泣けてきました。

東日本大震災、白ばら…と経験して、いてもたってもいられなくなり、今に至ります。

みんなが、喜んでくれたらいいなあと。

エシカ: いっぽう、ライブのときは必ず観客席に乱入してお客さんとアドリブを混じえた会話をしますよね。そういうときの、機転の効いたトークが沸き上がってくるエンタテイナー魂は、どこで醸成されたものなんでしょうか?

白崎映美: 上々颱風はありとあらゆる場所、老若男女の前でライブをしてきました。鍛えられました。

ある時、ドラムの渡野辺マントが、「映美、酒田弁でMCやれよ」て言ったのです。その頃は自分の田舎が恥ずかしかった私は、いやいややってみたら急にお客様との距離が縮まったのです。

「こんにちは、みなさまお元気ですか?」

「こんにぢは〜、父ちゃん、元気だが〜?」

随分違うでしょ?

オラうれしぐなりました。

エシカ: 上々颱風がメジャーデビューした90年代は、CDが何百万枚も売れることに音楽業界が価値を求めていたような時代で、ライブから叩き上げてきた上々颱風にとっては多少窮屈じゃなかったかと思うのですが、いかがですか?

白崎映美: はい、私達はライブやコンサートをやらなさそうな所で演るのが、主義というか、良さでもありました。音楽で売れるレール、例えばライブハウス→ホール→武道館→東京ドーム、みたいなのって、面白くないよねって考えでした。

障害のある人達のところへ出かけて行ったり、神社やお寺、魚市場、東京大学駒場寮のお風呂場、西成三角公園、挙げればキリがありませんが、上々颱風の醍醐味はそこにありました。そこで私はたくさんのことを学ばせてもらった。音楽業界に身を置いている感覚がなかったです。

みんな、父ちゃんも母ちゃんもじっちゃんばっちゃんみんな来い〜という感覚は上々颱風にいたからこそ身についたものです。

エシカ: 今はライブがアーティストの価値を決めるとても大事な要素になってきました。まさに白崎さんは水を得た魚のように見えますね。

白崎映美: 時代がどんなにデジタルになってもライブ、人間が歌うということはこれからも変わらず、私はなおさら原始人みたいに歌っていきたいなあと、思います。

エシカ: そうですね。今はアーティストのライブによっては、演奏も照明も、場合によっては歌までもがコンピュータから流れていて、決め事どおりに動いてますよね。それはそれでデジタルでしかできない楽しさがあるんですが、白崎さんのライブは、それとは真逆で、こうでなければいけない、普通こんなことやらない、みたいな縛りがなくて、あまりにも発想が自由で、心の解放みたいのを与えてくれるような気がします。

白崎映美: うれしいです。すんごぐうれしいなあ。ありがどございます。人間が猿みたいだった頃、美味しい実をみつけたら、うれしい声を出しただろう、仲間と。仲間が冷たくなって動かなくなってしまったら、悲しい声を出しただろう、それは仲間に伝わってみんなで声を出しただろう。

そんな風に歌いたいと思いました。みんなと一緒にいたいのです。笑ったり、歌ったり踊ったり。

エシカ: 最後にお伺いします。白崎映美さんにとっての「私によくて、世界にイイ。」は、何でしょうか?

白崎映美: はい。正しく「ライブ」であります。

みんなが笑えば、私もうれしい、みんながうれしいとうれしいが、広がって世界がうれしいになるように歌っていきたいなあ。

エシカ: まさにそうですね。白崎さんの歌う姿を見ながら、ふと横を見ると客席のみなさんが笑顔になっているのを見ると、うれしくなります。ライブとは、そのようなものですよね。今回は、ありがとうございました。今後の活動を楽しみにしています。

取材を終えて

白崎さんの東北弁丸出しのトークを混じえたライブを拝見すると、石川啄木の「ふるさとの訛なつかし…」という短歌を思い出します。これからも、東北人の誇り、日本人の魂みたいなものを、世界の人に向けて発信していってほしいと思います。

白崎映美

山形県酒田市出身。1990年、上々颱風でエピックソニーよりデビュー。JAL沖縄キャンペーンCM、スタジオジブリ「平成狸合戦ぽんぽこ」映画音楽、シンディ・ローパーのアルバム及びライブ参加、海外ツアー等、多岐に渡る活動で支持を集める。2013年の上々颱風休止後、東日本大震災を経て、“東北さいい事来―い!”と、「白崎映美&東北6県ろ~るショー!!」を結成し、精力的に活動中。

’16年フォトエッセイ『鬼うたひ』(亜紀書房刊)発表。 舞台にも出演し、主演舞台『まつろわぬ民』は好評につき、’17年に続き、2018年も再演が決まる等、音楽にとどまらず、TV、映画出演、執筆など 活動の場を広げている。酒田観光大使。モッシェ山形代表理事。2017年酒田市よりふるさと栄誉賞受賞。

ライブ詳細は、白崎映美公式サイト(http://emishirasaki.com/)をご覧ください

記者:山田 勲

上智大学理工学部卒。1985年ソニー株式会社入社。ソニー・ミュージックエンタテインメントEPICソニーレコードのディレクターを経て、インタービジョン・レーザーフィッシュ取締役などを歴任、ethica編集部では音楽制作の現場経験を活かし、音楽を中心にエンタメ分野のライティングを担当。これまで担当した著書に「デジタルエレクトロニクスの秘法」(岩波書店ジュニア新書)、「0と1の世界」(教育出版・中学国語3)の寄稿がある。

ーーBackstage from “ethica”ーー

筆者は、ソニーミュージックの採用面接で「好きなアーティストは?」と聞かれ、即座にふたつ返事で「上々颱風です」と答えたくらいの大ファンでした。それがきっかけで、上々颱風が所属するエピックの制作部門に配属され、白崎さんとお仕事をご一緒させていただくことができたのです。本来は、アーティストのファンを担当につけてはいけない、という原則みたいなものがあって、異例の人事だったようです。ただ、あまりにも情熱的に上々颱風の魅力について語り、どうすればもっと売れるかを生意気にも主張し続けたので「面白いヤツがいるけど、どぉ?」と紹介してもらえたのかも知れません。そんな私が、何十年かぶりに、このように白崎さんをベタ褒めする機会に恵まれましたことも、また何かの縁だとも思います。

白崎映美&白ばらボーイズ

白崎映美&東北6県ろ~るショー!!

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

山田 勲

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