中国人インフルエンサーKOLの陳さん。日本をさらに好きになるきっかけとなったある企業との出あい、中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」で日本の最旬情報を発信することになったきっかけを振り返りながら、二つの国の理解を深めるためにできること、やりたいことを語ってくれた。
ーー当時、日本企業の中国マーケットへの関心、反応はどのような感じでしたか?
サラヤさんの微博での広告展開が始まったのが2015年でしたが、当時は今に比べると反応は薄かったですね。「興味はあるけれど、まだ早い」という感じで。微博の認知度もまだまだ低く、そもそも微博が何なのかから説明しなければなりませんでした。サラヤさんも微博についてはあまり詳しくはなかったものの、SNSでの効果については理解されていたので話が早かったのだと思います。洗剤商品からスタートしました。
カロリーゼロの自然派調味料「ラカントS」について、サラヤさんから「中国で広げていきましょう」というお話をいただいたときは、とてもうれしかった。「ラカントS」の原料である羅漢果は中国南部の桂林で取れる果実で、私が小さいころ喉が痛くなるといつも母が飲ませてくれました。中国人にとっても親近感があるこの果実を、日本の企業が中国に建てた工場で商品化してくれる。昨年、桂林の工場にご招待いただいたのですが、日本と同じ高レベルの技術が駆使されていて、感動しました。
中国も日本同様、糖尿病の患者は年々増加しています。また、美容や健康を意識し砂糖をはじめとした糖質を控える傾向も。そうした中国人にとっても「ラカントS」はうれしい商品。その素晴らしさを伝えるお手伝いができることは、本当に光栄なことです。
ーーその後、再び転職されます。
もう少し日本の文化や企業に近い、そして「カラフル」な仕事をしたいと思ったのです。私にとってそれは、日本のPRに関わる仕事でした。調べる中で興味を持ったのがPR会社。人気企業で、外国人の私にはハードルが高いことは重々わかっていましたが、「どうしてもこの会社で働きたい」という強い思いを胸に挑戦しました。
実は、面接のときに企画書を持参しました。課題でもなんでもなく、勝手にプレゼンしちゃって(笑)。私が考えていることをただただ伝えたかったのです。最初の面接官が人事の方で、本当なら最終までは何度かの面接があるのですが、すぐにトップの方に繋いでくれて、入社がかないました。
PR部に所属しメディアリレーションの仕事を担当。商品の魅力を理解してもらった上でいかにメディアで扱ってもらうかがミッションで、美容関係の商品などを多く手がけました。中国人は私一人だけで大変なことも多かったけれど、とにかく刺激的で充実した日々を送ることができました。
日本のリアルな最旬情報を発信。若い女性から圧倒的に支持されるKOLへ。
ーー一方で、微博では「这里是日本(日本語で「ここは日本」)というアカウントで情報発信をされています。
2011年、微博のスタートとほぼ同時に、友人と二人で立ち上げました。翌年から情報発信は初めていたのですが、KOLとして本格的に始めたのは2017年の年初です。日本のクライアントからの問い合わせが増えてきたので、何かお手伝いできないかと考えたことがきっかけでした。今は会社を退職し、KOLとして活動しています。
ーー現在、フォロワーが530万超えと人気KOLですが、具体的にはどのような活動をされていますか?
微博は全体で7億人のユーザーがいて、そのうち80パーセント以上が30歳以下の若い人です。私自身27歳なので、20代後半の女性目線を大切に、その層の女性たちが好み、興味を持つ、ファッション、コスメ、グルメ、エンタメ情報などを発信しています。私は着物が大好きなのですが、いろんな情報の中でも着物の情報は反響はとても大きいですね。反響が大きいと微博のトップトピックに掲載されるので、企業としては広告効果は非常に高くなります。KOLとしていくつかの企業のPRをしていますが、その中の一つがサラヤさんで、現在も「ラカント」を中国市場に広めるため活動をしています。
また日本のニュースに連動した企画も。2018年に「あなたの今年を漢字一文字で表すと?」という、日本でおなじみの企画を投稿したところ、1億人以上がアクセスし、多くの方々が「自分の一文字」を投稿するというアクションをしてくれました。中国人にとっても楽しく、興味深いエンターテインメントとして受け入れられたのかなと思います。
ーー日本の情報を発信していて、中国人の方々の日本に対する印象についてどう感じていますか? 変化はありますか?
政治の問題は色々とありますが、若い層に関しては日本に憧れている人が多い印象ですね。「日本で活躍している陳さんに憧れます」といった声も多く、励みになっています。また、当初は私の投稿に対して「自分も行ってみたい」というコメントが中心だったのですが、最近は「私も行ったことがある」「この商品を使ったことがある」というコメントが多くなりました。実際に日本を訪れ、共感してくれる人が増えていると感じています。
ーー今後、どのような活動をして行きたいですか?
KOLとして活動していくのと同時に、日本企業に対してコンサルタントのような形で関与していけたらと考えています。昨今、中国マーケットに向けてPRを仕掛けたいものの、やり方がわからないという企業がとても多いように感じます。また、少しでもやり方を間違えると伝えたいことがきちんと伝わらないことも。時間やコストもかかります。そうした点をクリアしながら効果的なPRができるようお手伝いしていきたいですね。
ーー最後に、陳さんにとって「私によくて、世界にイイ」こととは?
とても難しいですね(笑)。私にとっては、中国も日本も大好きな国。日本の情報を伝えながら、両国の架け橋になれれば。それが私にとっての願いです。二つの国の間の理解が深まることは、結果として世界にとってもイイことなのだと信じています。
陳寧欣
1991年7月19日生まれ、中国大連出身。
2014年に来日。日本文化が好きで、中国人としての独特な視点を持ちながら日中友好の懸け橋になりたいと、広告関係の仕事をしながらKOLとしても活躍中。
記者 中津海 麻子
慶応義塾大学法学部政治学科卒。朝日新聞契約ライター、編集プロダクションなどを経てフリーランスに。人物インタビュー、食、ワイン、日本酒、本、音楽、アンチエイジングなどの取材記事を、新聞、雑誌、ウェブマガジンに寄稿。主な媒体は、朝日新聞、朝日新聞デジタル&w、週刊朝日、AERAムック、ワイン王国、JALカード会員誌AGORA、「ethica(エシカ)~私によくて、世界にイイ。~ 」など。大のワンコ好き。
ーーBackstage from “ethica”ーー
インタビュー中、何度となく陳さんの口から出た言葉があります。「たまたま」。「たまたま企業が学生を募っていて」「(会いたい企業の人が)たまたま東京に来ていて」……。偶然やラッキーのようにも聞こえますが、きっと違う。行きたい場所に行き、会いたい人に会い、働きたい会社で働く。抜群の行動力で縁も運も引き寄せているのだろうと感じさせるパワーが陳さんにはあります。発信する情報の鮮度や魅力はもちろん、そのエネルギッシュな姿にフォロワーは引きつけられているに違いありません。
提供:サラヤ株式会社
https://www.yashinomi.jp
私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp