ethicaがメディアパートナーとして参加した「サステナブル・ブランド 国際会議2019 東京」で行われたセッションの一つが「サステナビリティ時代の企業ブランディング」でした。参加されたのはテレビ東京ホールディングス、クボタ、電通の3社。今回はテレビ東京ホールディングスの取り組みについてご紹介しましょう。
水槽の外から眺めるのではなく、魚になって泳いでもらう
テレビ東京の中心となるCSR活動は、小学生から大学生までを対象としたキャリア教育プログラムで、その大きな柱となっているのが「校外学習」と「出前授業」です。
「現在、多くの社員に関わってもらっています。忙しい業務の合間に時間を作ってもらうという難しさもありますが、実際に参加してもらうと楽しかったといってリピーターになる社員がとても多いですね」(総務人事局総務部CSR推進委員会事務局長・高塚有香氏)
高塚氏が紹介した校外学習の一例では、ニュースの生放送をする報道フロアの副調整室でプロデューサーやタイムキーパーの役割を学んだり、キャスター席でニュース原稿を読む体験をしたりすることで、参加した子供たちはテレビ番組を作るためにはいろいろな仕事があり、それぞれがプロの仕事をすることで番組ができ上がっていくことを知ります。そして同時に、大人たちが真剣にニュース番組に取り組む姿を、かたずを飲んで見守っているそうです。
「テレビ東京の校外学習は水族館で水槽の外から魚を眺めるのではなく、子供たちに魚になってもらって泳いでもらおうという体験活動です。それが大きな特徴だと思いますね」(高塚氏)
制作現場からの提案
同局の校外学習と出前授業は、文部省の青少年活動推進企業表彰大企業部門で今年度の文部科学大臣賞を受賞しました。今回特に評価されたのは病気や障がい、不登校などすべての子供たちに届けたという点で、その代表となったのが埼玉県立けやき特別支援学校への出前授業でした。
この学校は小児がんなどで長期入院している子供たちのための学校で、病院のワンフロアをそのまま学校にしています。ここでの出前授業が実現したのは、以前、ニュースとして同校を取材した報道局のディレクターの提案によるもので、当日はそのディレクター自身と取材を担当したカメラマンが講師を務めました。
「この学校で出前授業をやったことは、ここでやる意義を制作現場のほうから私たちCSR担当者に伝えてもらったという事例になります。今後はこうしたケースがもっと増えると嬉しいですね」(高塚氏)
また同局では、企業8社の協賛のもと全国140校2万5000人の中高生を対象とした「クエストエデュケーション」も実施。生徒たちは各企業から出されるミッションに対して試行錯誤しながら、1年間かけて自分だけのオリジナルな答えを出していくという取り組みも積極的に行っているそうです。
将来を考える大学生に人気の「キャリア大学」
さらに同局の活動で忘れてはいけないのが、就職を意識する前の大学1、2年生が将来のキャリアを考えるきっかけを作るための「キャリア大学」です。
これは約40の省庁や企業が協賛し、それぞれが特色のある授業を大学生のために提供するもので、報道局や制作局のプロデューサー、ディレクターが講師になって中身の濃いワーク形式の授業を1日かけて行っています。そのため参加した大学生にも人気の高い授業となっており、授業後のアンケート評価で昨年度はキャリア大学アワード日本一に、今年度も第2位の授業に選ばれたそうです。
「外部の表彰で賞をいただくということはCSR活動に参加した社員の士気が高まりますし、社員のCSR意識の浸透という点でもひじょうに重要です。それにキャリア教育自体がSDGsのゴール4『すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する』ということにもつながると思いますね」(高塚氏)
高塚氏の発表を聞き、ファシリテーターを務めた中央大学大学院の細田悦弘氏は、
「企業のCSR担当者にとって大きな悩みはSDGs、CSR、CVSをどうやって経営に組み込むか、そして、どうやって社内に浸透させるかというこの2つではないでしょうか。その意味で今回の高塚さんのお話しはとても参考になりました」
と感想を述べられていました。
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