ethicaがメディアパートナーとして参加した「サステナブル・ブランド 国際会議2019 東京」で行われたセッションの一つが「サステナビリティ時代の企業ブランディング」でした。参加されたのはテレビ東京ホールディングス、クボタ、電通の3社。今回はクボタの取り組みについてご紹介します。
自らの経営資源「食料」「水」「環境」を啓蒙
クボタは大阪市浪速区に本社を置く産業機械メーカーです。1890年、鋳物の製造・販売から事業をスタートし、以来130年の長きにわたって水道用鉄管、農工用エンジン、各種産業用機械など人々の暮らしや社会に役立つさまざまな製品を世の中に送り出してきました。一般の消費者にはあまりなじみのない会社かもしれませんが、農業機械メーカーとしては国内最大手、世界第3位の優良企業です。
CSR企画部CSR推進グループ長の浅香辰也氏は同社の社会貢献活動について、
「経営資源である『食料』『水』『環境』についての社会的問題の解決を図り、広く啓蒙活動することを基本的な考え方に活動しています。そして、その活動を私たちは『クボタeプロジェクト』と名づけています」
と説明します。
eプロジェクトのeはecology、earth、eat、emotionなど環境や食にちなんだワードの頭文字。そこには社会にとって「いい」活動、役に立つ「いい」活動を目指したいという願いも込めているそうです。
小学生に素足で土を踏みしめる感動を
eプロジェクトの活動は大きく分けて3つです。その中でも特に大事なものとして位置付けているのが「次世代教育」で、小学生を対象とした「クボタ元氣農業体験教室」では全国の小学校やNPO法人と連携。小学生に田植え・稲刈り・収穫などの稲作体験を通じて、食と農業のありがたみ、創意工夫のたくさん詰まった農機具の技術の素晴らしさを感じてもらう情操教育の推進に取り組んでいます。
「農作業の体験を通じて素足で土を踏みしめる感動、農業への感謝の気持ちを養ってもらえればと思っています。現在、元氣農業体験教室と同時に子供たちに水・土・空と触れ合い、自然の恵みの豊かさや地球環境の大切さについて学び、考えてもらうことを目的としたキャンプ型の体験学習『クボタ地球小屋(Terra-Koya)』にも協賛しています」(浅香氏)
農作業の機械化で日本の農業をバックアップ
クボタeプロジェクトの2つ目の柱は「耕作放棄地再生支援」です。
今、人手や機械の不足などにより全国には滋賀県の面積にほぼ等しい約40万ヘクタールもの耕作放棄地があります。クボタグループではその解消に向け、岩手、山形、愛媛、鹿児島など全国11県の19団体に対して農地への復元整備(草刈り・耕うん整地など)と作物栽培作業(播種・中間管理・収穫など)の一部について農業機械作業での応援を通じて支援しています。
「当社では育苗以外の全ての農作業の機械化を実現しました。このことにより農業の生産性の飛躍的な向上に貢献し、辛くて過酷な農作業の重労働から農家の人たちを解放することができたと思っています。そうした当社の力で日本の農業をバックアップしたい、そんな気持ちで支援しています」(浅香氏)
社員のボランティア意識を醸成する「クボタeデー」
さらに、クボタが力を入れている3つ目の活動が「クボタeデー」です。2008年にスタートしたこの活動は、クボタグループの全社員が日本各地の河川や公園で清掃活動を行おうというもので、
「地域の環境美化を通じて社員のボランティア意識を醸成することを大きな目的としています」(浅香氏)
2018年度は全国約385カ所で実施、約7300人の社員が参加しました。
浅香氏の発表に対してファシリテーターを務めた中央大学大学院の細田悦弘氏は、
「クボタが扱っている商品は量販店で売っている商品ではありませんし、テレビのCMにも出てこない商品です。なかなか世の中からは見えてこない商品なんですね。完全なB to Bでありながらも実に模範的な活動をされていると思います」
と感心しておられました。
これからの日本の農業を変える「スマート農業」
最後に浅香氏は、現在の日本農業が抱える問題点として農業就労者が高齢化し、その数が大幅に減少するなど農業が大きな転換期を迎えていることを指摘。その中で、日本の農業をサステナブルなものにするためには、若者たちに農業をやりたいと思ってもらええるような面白く、かつ魅力のあるビジネスにすることが必要で、それを実現する取り組みとして今「スマート農業」を開始していることを報告しました。
IoTやロボット技術を活用した新たな農業機械の開発、データを活用したより科学的な農業の取り組みなど、従来とは大きく異なる新時代の農業の在り方を、セミナー参加者は熱心に聞き入っていました。
【後編】電通編につづく
私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
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