自然環境の破壊が地球規模で大きな問題となっている今、水、特に海水の汚染が年々深刻さを増しています。それは日本のように国土を海に囲まれた海洋国はもちろん、そうではない国にとっても無関係ではなく、対策を急がなくてはならない重要な課題だといえるでしょう。そうした中、海洋汚染の問題解決に取り組んでいる特定非営利活動法人ゼリ・ジャパンは先日都内で同法人の特別顧問を務めるグンター・パウリ氏出席のもと、現在、同氏が進めている「R4W(レース・フォー・ウォーター)プロジェクト」についてのプレスブリーフィングを開催しました。
海の生態系ばかりか人間にも悪影響が
海洋汚染の中でも今、特に注目されているものは、海に流れ込むペットボトルや洗剤の容器など大量のプラスチックごみです。それらは洋上に漂っているうちに紫外線で分解されると、5mm以下の大きさのマイクロプラスチックになります。そして、プランクトンや小魚がそれを食べてしまうことで食物連鎖が乱れ、海の生態系を変えてしまうばかりか、人間にも甚大な影響を与えるようになってしまうのです。
ある研究機関の試算によると、このまま放置しておいた場合、2050年までには海中に滞留しているプラスチックの総重量と海に生息している生物の総重量が同じになってしまうといいますから、事態はかなり深刻です。もはや一刻の猶予も許されないといっても過言ではありません。
プラスチックを「海に流出させない」「海から回収する」
グンター・パウリ氏は環境を汚染したり、気候を混乱させる廃棄物の排出(エミッション)をゼロにしようという「ゼロエミッション」の概念を世界で初めて提唱した人物として有名です。
海洋プラスチックごみ問題の解決に取り組むスイスの財団R4Wとともに以前から協議を重ねてきたパウリ氏は、
「世界がこの問題を解決するためには、2つの課題があります。1つはプラスチックが海洋に流出することを止めること、もう1つが、すでに海洋に流れ出てしまったプラスチックを取り除くことです。この2つの課題を同時に解決する最良のアプローチであり、解決策となり得るのが、私が現在関わっている船のプロジェクトなのです」
といいます。
ーーBackstage from “ethica”ーー
ストロー、フォークやスプーン、ペットボトル・・・私たちが日頃何気なく使っているプラスチックが、海洋ごみとなって深刻な海洋汚染を引き起こしていることを知りました。ごくごく小さなかけらとなったマイクロプラスチックの多くが、日本の周辺海域に流れ着くそうです。体内にプラスチックを取り込んだ魚が日々食卓へのぼるわけですが、どれほど人体への影響があるのかと、とても怖くなりました。後編では、海に流れ出てしまったマイクロプラスチックを回収できるという画期的な取り組みをご紹介します。
ethica副編集長 萱島礼香
法政大学文学部英文学科卒。総合不動産ディベロッパーに新卒入社「都市と自然の共生」をテーマに屋上や公開空地の緑化をすすめるコミュニティ組織の立ち上げと推進を経験。IT関連企業に転職後は、webディレクターを経験。主なプロジェクトには、Sony Drive、リクルート進学ネット、文化庁・文化遺産オンライン構築などがある。その後、国立研究機関から発足したNPO法人の立ち上げに参加し、神田神保町の古書店をWEBで支援する活動と、御茶ノ水界隈の街の歴史・見どころを紹介する情報施設の運営を担当した。2018年11月にwebマガジン「ethica」の副編集長に就任。
記者:清水一利
明治大学文学部史学地理学科卒。1979年、株式会社電通PRセンター(現・株式会社電通パブリックリレーションズ)に新卒入社。クライアント各社のパブリシティ業務、PRイベントの企画・運営などに携わる。1986年、同社退社後、1987年、編集プロダクション・フリークスを主宰。新聞、雑誌(週刊誌・月刊誌)およびPR誌・一般書籍の企画・取材・執筆活動に従事。2012年「フラガール3.11~つながる絆」(講談社)、2013年「SOS!500人を救え~3.11石巻市立病院の5日間」(三一書房)、2015年「フラガール物語 常磐音楽舞踊学院50年史」(講談社)、2018年「東北のハワイは、なぜV字回復したのか スパリゾートハワイアンズの奇跡」 (集英社新書)を刊行。2013年9月よりwebマガジン「ethica」にて各種取材を担当。
提供:サラヤ株式会社
http://www.saraya.com
私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
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