世界一革新的で環境にやさしいボート 海洋プラスチックごみ問題解決に大きな一歩【後編】
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世界一革新的で環境にやさしいボート

カタマラン・ボート「オデッセイ」 Photo=YUSUKE TAMURA ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

前編に続き「R4W(レース・フォー・ウォーター)プロジェクト」についてのプレスブリーフィングを紹介していきます。

世界一革新的で環境にやさしいボート

パウリ氏のいう船のプロジェクトとは、太陽光、風力、水素の自然エネルギーを動力源にした全長35mの巨大なカタマラン・ボート「オデッセイ」で世界の海を回り、各地で海洋プラスチックごみ問題の啓発活動をしながら、同時に海洋プラスチックごみの調査や研究を進めようという取り組みです。

「AIとロボットを最も効果的に用いているのがこのオデッセイといえるでしょうね。ボートはAIで自動制御された40㎡の大きさのタコが受ける風力と、海水から得られる水素を電気分解して利用する燃料電池によって時速約8ノット(約15㎞)で航行します。また、甲板には厳しい環境に耐えられると同時に高い性能を発揮する太陽光パネルを設置して、ボート内でのすべての電力として利用しています。世界でいちばん革新的で、しかも環境にやさしいボートと断言できますね」

オデッセイは2017年4月にフランスを出港した後、各地でミッションを行いながら航行を続けています。現在は来年のオリンピック開催に合わせて日本を目指しており、日本到着後は約5か月間、全国を回る予定になっているそうです。

カタマラン・ボート「オデッセイ」 Photo=YUSUKE TAMURA ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

海藻カーテンで海中のプラスチックごみを除去

今回のブリーフィングでは、パウリ氏によって海洋プラスチックごみ問題の解消につながる1つのプランの発表がなされました。それは、いかにして海中のマイクロプラスチックを除去するのかという、問題解決に結びつく重要な報告でした。

「今、私たちが考えている取り組みは、海中に生息する海藻を利用して海洋プラスチックごみを除去しようというプロジェクトです。科学者との共同研究の結果、海藻類の生産性が低下していることが分かりました。なぜなら、海藻類の体の表面にある小さな孔の中にマイクロプラスチックが入り込んでしまい、海藻類の生育を鈍化させていたからです。私はこの事実を知った時、逆にこのことを利用すればいいのではないかと思いつきました。それが海藻を使ったカーテンです」

パウリ氏の発想は海岸近くの浅瀬に人工の構造物をつくり、そこでシースパゲッティと呼ばれている、その名の通り細長い海藻を育ててカーテン状にし、その表面にマイクロプラスチックを吸着させて回収、除去に役立てようというプランです。

「海中で小さくなったマイクロプラスチックが陸に打ち上げられると、乾燥して風によって内陸に吹き飛ばされ、さまざまな弊害が出てきます。それを食い止めるためにも海中のマイクロプラスチックをできるだけ多く回収しなければならないのです。私はこの海藻カーテンを使えば、5年以内に海中のマイクロプラスチックを100%回収できると思っています」

ゼロエミッション提唱者グンター・パウリ氏 Photo=YUSUKE TAMURA ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

日本が最良のテクノロジーで貢献してくれることを期待

四方を海に囲まれた日本は世界でも有数の海洋国です。それだけに、この海洋プラスチックごみの問題について無視するわけにはいかないでしょう。そして、パウリ氏も、

「日本の国民1人あたりのプラスチック使用量は世界的に見てもかなりのものがあります。今こそ日本の国民の皆さんに海洋プラスチックごみに対する開戦宣言をしていただいて、プラスチック戦争を始めていただきたいですね。この戦争に勝利するためには革新的なアイディアと莫大な費用が必要になります。ですから、日本の産業界の皆さんにはいろいろと考えていただいて最良のテクノロジーで貢献していただければと願っています」

と日本への期待を語っていました。

なお、海藻カーテンの詳細については8月末に横浜で開催されるTICAD(アフリカ開発会議)で発表される予定になっています。

【前編】ゼロエミッション提唱者グンター・パウリ氏が新提案

ーーBackstage from “ethica”ーー

自然エネルギーを動力源としたこの革新的な船は、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催前に日本へやってくるそうです。数ヶ月間かけて日本各地をまわる予定で、子供向けのプログラムも多く企画中とのこと。海藻カーテンのプランがどんな風に実施されるかも気になりますし、今後も大注目のプロジェクトです。

ethica副編集長 萱島礼香

法政大学文学部英文学科卒。総合不動産ディベロッパーに新卒入社「都市と自然の共生」をテーマに屋上や公開空地の緑化をすすめるコミュニティ組織の立ち上げと推進を経験。IT関連企業に転職後は、webディレクターを経験。主なプロジェクトには、Sony Drive、リクルート進学ネット、文化庁・文化遺産オンライン構築などがある。その後、国立研究機関から発足したNPO法人の立ち上げに参加し、神田神保町の古書店をWEBで支援する活動と、御茶ノ水界隈の街の歴史・見どころを紹介する情報施設の運営を担当した。201811月にwebマガジン「ethica」の副編集長に就任。

記者:清水一利

明治大学文学部史学地理学科卒。1979年、株式会社電通PRセンター(現・株式会社電通パブリックリレーションズ)に新卒入社。クライアント各社のパブリシティ業務、PRイベントの企画・運営などに携わる。1986年、同社退社後、1987年、編集プロダクション・フリークスを主宰。新聞、雑誌(週刊誌・月刊誌)およびPR誌・一般書籍の企画・取材・執筆活動に従事。2012年「フラガール3.11~つながる絆」(講談社)、2013年「SOS!500人を救え~3.11石巻市立病院の5日間」(三一書房)、2015年「フラガール物語 常磐音楽舞踊学院50年史」(講談社)、2018年「東北のハワイは、なぜV字回復したのか スパリゾートハワイアンズの奇跡」 (集英社新書)を刊行。2013年9月よりwebマガジン「ethica」にて各種取材を担当。

提供:サラヤ株式会社
http://www.saraya.com

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

清水 一利

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