美しき理系アーティスト、スプツニ子!さんに伺いました!(後編)「日本の女性活躍における課題」
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美しき理系アーティスト、スプツニ子!さんに伺いました!(後編)「日本の女性活躍における課題」

前編に続き、9月22日(日)〜29日(日)のSDGs週間(*)にフェイスブック ジャパンが開催している「Facebook Fundraisers for SDGs」で、「質の高い教育をみんなに(SDGsの目標4)」を達成するため、アメリカのNPO団体「Girls Who Code」への募金キャンペーンを立ち上げたスプツニ子!さんに、今回の募金キャンペーンに賛同した理由や、最近の作品について、さらには、日本の女性活躍における課題についてお聞きしました。

(聞き手:ethica副編集長・萱島礼香)

(*)毎年9月末の国連総会の会期と合わせた1週間は、持続可能な開発標(SDGs)の推進と達成に向けて意識を高め、行動を喚起する「SDGs週間(グローバル・ゴールズ・ウィーク)」。

女性たちは、子供の頃からいい子でいることを求められやすい

萱島: ある記事で、スプツニ子!さんが「女性が社会に対して『言いたいけど言えない』ことを、作品を通して代弁」していらっしゃると読みました。日本の女性たちが、言いたいことを言えるようになるには、何を解決していくのがよいでしょう?

スプツニ子!さん: 難しい問題ですよね。女性たちは、子供の頃からいい子でいることや他の人を気にしてあげることを求められやすいので、内在化しているんだと思います。人に嫌われないかな、ちゃんと期待に応えているかな、とか、男性から見てわたしは魅力的かなとか。残念ながら、社会とかメディアが男性の目から運営されてきたので、男性から見た都合のいい女性が良い姿として祭り上げられてきたというか。

逆に、自由に自分の意思を持って生きている女性が、メディアで「モテない、強がっているフェミニスト」とか言われたり。自分で選んでシングルでいても「独り身の負け犬」とか言われたりして、社会にそういう言葉が散乱しているんですよね。女性を下に陥れるような言葉や見方、それを自分の中に取り込んでしまう女性が多いのだと思うんです。

萱島: 小さな頃からだと、相当刷り込まれているのかもしれないですね…。

スプツニ子!さん: それが実は一番の敵で、それを解毒しなきゃいけないっていうのがひとつ。二つ目は、解毒するにあたって、この人の言っていることを聞いていると元気になるなっていう人、インフルエンサーを探して繋がっておくこと。インターネットは、テレビから脱せられるというか、自分の繋がりたい人と繋がれるので、自分を元気にしてくれる言葉と触れ合うことができます。

最後のポイントが、私はいままで幸運にも色んな国で色んな人と出会い、仕事をするなかで気づいたことがあって。結果的に一番いい仕事をする人って、ちょっと我儘で、人にこれをやってとかあれをやって、といわれたときに、適度に無視をできる人なんです。何故ならば、ちゃんと真面目にやると、誰かの仕事をやる人になっちゃうから。女の人って事務とか秘書とかに就いている人が多いじゃないですか。人から言われたことを完璧にやっていると、サポート的な仕事に留まってしまうし、しかもそれは相手にとって都合がいい。だから、本当にキャリアアップしたかったら、やらなくていいことはやらない、やりたくないことはやらない(笑)っていう我儘さ、そして、自分がやりたいことを、人にこれやってよ、あれ手伝ってよ、って言える強さがあるといい。女の子は、それは良くないことっていう教育をされがちなのが勿体なくて、それができるようになると、経済的にもキャリア的にも、色々なことが上手くいきます。

萱島: 人の言うことばかり聞いていると、都合のいい女になっちゃうってことですね。

スプツニ子!さん: はい、誰かの手足になるだけになっちゃう。できるようになるまで、難易度高めかもしれないですけど…。

萱島: すごい高めですね、それは…。(笑)

スプツニ子!+ 西澤知美 東京減点女子医大 / Tokyo Medical University for Rejected Women

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100%めざして頑張りすぎないで

スプツニ子!さん: 女の人のほうが120%目指しがちだなって感じます。これまで女性部下が「上手く出来なかった」って私に言った時、だいたい凄く上手くやっているんですよ。その反面、男性部下は平気で「これ完璧です!」って自信満々に全然ダメなものを出してきたりして(笑)、女性は「本当にこれダメなんです…」って感じで自分を責めてストレスで損する場面をよく見ますね。あまり男女のステレオタイプで話すのは好きではないですが、ある種の傲慢さというか無頓着っていうか、心臓に毛が生えているのかな?っていうくらい気にしないのが、男性から学べるところかもしれません。

だから良くも悪くも、私もどんな仕事も適当にやることにしています(笑)。インタビューとかだと綺麗事ばっかりだから(笑)みんなそう言うこと言わないですけど、適当であることって大事です。結構本質だと思うんですよ。例えばお弁当とかも頑張りすぎなんですよ!みんな。

萱島: 確かに…日本のキャラ弁とか凄いですものね。

スプツニ子!さん: 私は家事代行を頼んでいて、家の中の掃除とか洗濯とかは週に一度していただいて、一週間分のお料理も作り置きしてもらっているんです。その分、私の時間、休日が凄く増えるし。誰かにやっていただいたほうが、時給換算するとそっちのほうが経済的にもずっとおトクなんです。ごはんもヘルシーで美味しいし!

ベビーシッターでも家事代行でも頼んで自由になった時間はのびのび休み、休んでチャージしたら楽しく働くっていうのが良いと思います。でも何故か女性は家事をしないことに罪悪感や後ろめたさを感じるようにプログラミングされていて、キャリア女性も、「料理しなくちゃ、掃除しなくちゃ、子供の面倒みなくちゃ」って。でも今は外注ができるんです。そういう古い考えから新しい考えへの過渡期だと思います。

その人の体験や気持ちを共有することが、「私によくて、世界にイイ。」

萱島: 最後に、取材させていただいた方には必ずお聞きしている質問ですが、ethicaのグランドコンセプトにもなっている「私によくて、世界にイイ。」、スプツニ子!さんにとっては何でしょうか?

スプツニ子!さん: やっぱり自分にとっては、共感すること、相手の苦しい立場を想像するっていうのが大切かなと。自分が日本で外国人だったり女性だったりで感じたことが、インドの独立運動のときの人種差別の問題とか、アパルトヘイトや在日韓国人、LGBTの問題とか、どうしようもならない属性で社会から排他されたり迫害を受けたりする人たちの気持ち、物語を見ると、すごく自分ごととして感じられる。それが原動力で、いろんな活動に繋がっています。

課題に目を向けていることが出来る人っていうのは、そういう人たちの気持ちを想像できる人。大切なのは、自分の悲しみを他者の悲しみと連携して想像できることなのかなって。一言で表せないけれど、英語だとTo put oneself in someone’s shoes といって「その人の立場に立って考える」という意味の言葉があります。その人の体験や気持ちを共有する。それが私にとっての「私によくて、世界にイイ。」です。

萱島: To put oneself in someone’s shoes、とても素敵な言葉ですね。ありがとうございました。

美しき理系アーティスト、スプツニ子!さんに伺いました!(前編)「質の高い教育をみんなに」

スプツニ子!(アーティスト/東京芸術⼤学准教授)

東京都⽣まれ。ロンドン⼤学インペリアル・カレッジ数学部卒業後、英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)修⼠課程修了。2013年よりマサチューセッツ⼯科⼤学(MIT)メディアラボ助教としてデザイン・フィクション研究室を主宰し、2019年より東京芸術⼤学准教授。2017年に世界経済フォーラム「ヤング・グローバル・リーダー」、2019年にTEDフェローに選出。

photo by Mami Arai

ethica副編集長:萱島礼香

法政大学文学部卒。総合不動産会社に新卒入社。「都市と自然との共生」をテーマに屋上や公開空地の緑化をすすめるコミュニティ組織の立ち上げを行う。IT関連企業に転職後はwebディレクターを経験。主なプロジェクトには、Sony Drive、リクルート進学ネットなどがある。その後、研究機関から発足したNPO法人に参加し、街の歴史・見どころを紹介する情報施設の運営を担当した。2018年11月にwebマガジン「ethica」の副編集長に就任。

ーーBackstage from “ethica”ーー

スプツニ子!さんの公式Youtubeチャンネルも必見です!美しきアート(映像世界)を堪能ください。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

萱島礼香

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