ヤシノミ洗剤の売り上げの1%は商品や活動を支持してくださっているお客さまの想い
更家社長: われわれも少なからず自然環境に配慮したビジネスを手がけてきたという自負があったものですから、声を失いましたね。しかし、そこで止まっているわけにはいかない。さまざまな国際会議や研究会に参加しながら生物多様性保全の活動に踏み切りました。そしてコストは上がっても環境と人権に配慮して生産された原料を使い、ヤシノミ洗剤の売り上げの1%をその活動費用に充てることにしたのです。この1%は、当社が負担しているのではなく、当社の商品や活動を支持してくださっているお客さまから預かっていると考えています。その賛同を得るためには、しっかりと伝えることが重要です。森さんのように発信力のある人に実際に現状を見て、感じていただいたことを、消費者としての視点、言葉で伝えていただく。そうしたコミュニケーションが有効であると考えています。
森きみ: 商品を選ぶとき、「この洗剤を買うことがボルネオの野生動物を救う力になる」といった意識を持つか持たないかは、とても大事なことだと感じています。その意識は、やがて地球を守ることにつながるものだから。
更家社長: 商品を選ぶ時、どんな原料を使って作られているか。そこに思いを巡らしてもらえると、ちょっと高くてもいいから使ってみようと思えるかもしれません。森さんの周りの方々はどうですか?
森きみ: 二つに分かれますね。安いものを買って使い捨てしていく人と、自分の目でじっくり選んで長く使っていく人と。
更家社長: 確かに「安い」という軸は大事な価値観なんです。メーカーとしては安く提供しないと競争に負けてしまうので(笑)。ただ、昔の日本人はなんでも「もったいない」という精神で、高いとか安いとか関係なく、なんでも大切にしていました。包装紙を捨てずに再利用したり。
森きみ: うちの母はカレンダーの裏をメモにしていました(笑)。
更家社長: そうそう。限りのある資源を大切に使う、あるいは、使い続けたらいつかはなくなる資源、代表的なものが石油ですが、そうしたものから持続可能な植物系の資源に変えていく努力は必要だと思います。希望が持てるのが、むしろ若い人こそ消費に対する考え方がエシカルなこと。リサイクルショップの古着とかも上手に活用してますよね。
森きみ: 抵抗はないですね。オークションサイトやフリマアプリでほしいものを探すことは、もはや当たり前のことになっています。SDGsというと難しいのでは? というイメージを持ちがちですが、更家さんのお話を伺っていると、自然環境のことを考えて買うものを選ぶ、資源を大切に使いきるなど、とても自分ごととして考えやすいな、と。一人一人のその意識が、SDGsの実現につながるんだろうなと前向きな気持ちになれます。