『ethica(エシカ)』3月号のテーマは、「暮らしとエシカル」です。
今回は、環境配慮設計の先駆者・大和ハウス工業(株)で環境部長を務められている一級建築士・小山勝弘氏にインタビュー。建築への想い、そして今後の課題やチャレンジについてお聞きしました。
(記者:ethica編集部・リョウコ)
サステナブル・ブランド国際会議2020横浜 プレスルームにて Photo=Kaori Uchiyama ©TRANSMEDIA Co.,Ltd
『ethica(エシカ)』3月号のテーマは、「暮らしとエシカル」です。
今回は、環境配慮設計の先駆者・大和ハウス工業(株)で環境部長を務められている一級建築士・小山勝弘氏にインタビュー。建築への想い、そして今後の課題やチャレンジについてお聞きしました。
(記者:ethica編集部・リョウコ)
リョウコ: 小山さんの経歴を拝見すると、大学の工学部でシステム工学を学んだとありますが、建築会社に入社しようと思ったのは何故なのでしょう。
小山氏: 私が就職活動を行っていた時代はバブル期であり、日本は建築ラッシュの真っただ中。建築家もたくさん登場したりメディアに取り上げられたりして、とにかく恰好いい仕事だと思っていました(笑)。
リョウコ: まずは、憧れの気持ちから建築の会社に入社をしようと考えたのですね。
小山氏: 大和ハウス工業に面接に行ったとき、畑違いの学生である僕に、面接官が「3年間で建築学科出身の同期に追い付く気持ちがあるなら、入社後に建築の大学に通ってもよい」と言ってくれました。じつは、就活中にこういったことを言ってくれた企業は大和ハウス工業だけでした。
リョウコ: 実際に入社して、いかがでしたか?
小山氏: 入社して2年間、夜間の短大で建築を学びました。配属されたのは、自社の建物の設計・施工を担当するプロジェクト室で、新しいことへチャレンジができる課です。自社建物ですから、実際にいろいろと実験的なことも可能でした。
Photo=Kaori Uchiyama ©TRANSMEDIA Co.,Ltd
リョウコ: 小山さんは大阪本社ビルの建築プロジェクトにも関わっていますよね。その大仕事を終え、現在の環境部に異動されたのはどんな経緯がありますか。
小山氏: 転機は、東北工場のオフィス建設のプロジェクトリーダーになったことです。幹部の提案で「空調のいらないオフィスを作れ」と言われまして。その後、スウェーデンなど環境先進国を見てまわりました。そこでヒントを得て、地中熱や太陽熱を使うことで、冷暖房のエネルギー使用量を大幅に削減できるシステムを作り、東北工場のオフィスが完成しました。
リョウコ: 大和ハウス工業の環境配慮オフィスの先駆けとなった評判の建築だそうですね。
小山氏: そういったこともきかっけになり、環境部への異動を希望しました。世界の環境への取り組みについてもっと知りたかったですし、広めていきたいと思いました。
Photo=Kaori Uchiyama ©TRANSMEDIA Co.,Ltd
リョウコ: 大和ハウス工業といえば、省エネ大賞のイメージもあります。
小山氏: 当時、戸建て住宅など小規模な分野では環境配慮設計をしていましたが、その後、オフィスビルや店舗での環境配慮設計への取り組みを進めました。設計マニュアルや省エネのチェックリストなども作成して、優秀事例を共有。こうした努力が注目され、2012年度と13年度の2年連続で省エネ大賞(最高位の経済産業大臣賞)の受賞となりました。
リョウコ: それにより、会社全体の意識も変わってきましたか?
小山氏: 大和ハウス工業の創業100周年にあたる2055年を見据えて、2016年度に環境長期ビジョン“Challenge ZERO 2055”を策定しました。グループ経営ビジョンである「人・街・暮らしの価値共創グループ」としてサステナブルな社会の実現を目指し、4つの環境重点テーマ「気候変動の緩和と適応、自然環境との調和、資源保護・水資源保護、化学物質による汚染の防止」に関して3つの段階(調達、自社活動、商品・サービス)を通じ、環境負荷ゼロに挑戦しています。
また、SDGsへの取り組みも具体的に発信したり、なるべく一般の方々に分かりやすいような発信も目指していきたいと思います。
リョウコ: 取り組みの発信というと、大和ハウスグループの公式サイト【サステナブルジャーニー】は秀逸なサイトだと思いますが。
小山氏: 学校教材として使いたいという申し出も多々あると聞いています。ぜひもっと閲覧してほしいですね(笑)
リョウコ: エシカでは過去に【エコプロ】の記事で、大和ハウス工業のブースを取材させていただきました。そこで気になったのが、農業への取り組みもされるということ。建築の会社が農業を考えるとは?
小山氏: 現在、大和ハウスグループでは、「ア」「ス」「フ」「カ」「ケ」「ツ」「ノ」を未来へのキーワードとして掲げています。これは、「安心・安全、ストック、福祉、環境、健康、通信、農業」の頭文字で、最後に農業が入っています。もちろん、建築が主幹の企業というのは変わりませんが、今後の日本の暮らしや将来に求められていることは何かを考えた結果、「農業」が加えられました。
リョウコ: 日本の農業従事者の高齢化も、問題になっていますよね。
小山氏: じつは「ノ」は最後に付け加えられた言葉ですが、世界の人口問題や食糧問題が顕在化してきたということが大きいです。“明日の社会に必要不可欠の”商品やサービスはどんどん変わっていくものなので、それが何かを常に考え、開発していけたらと思います。
Photo=Kaori Uchiyama ©TRANSMEDIA Co.,Ltd
リョウコ: エシカのグランドコンセプトは「私によくて、世界にイイ。」なのですが、小山さん個人としての「私によくて、世界にイイ」と思われることを教えてください。
小山氏: まずは、楽しく仕事をすること。憧れから建築の仕事に飛び込みましたので、これからも常にチャレンジをしていきたい。やはり、楽しくないとチャレンジしようという気も起らないのでは、と思っています。そして、いま携わっている環境の仕事は社会的意義が高いですし、気持ちの良い仕事だと実感しています。だから、多少困難があっても、楽しく前向きに取り組んでいます。
リョウコ: 意義のある仕事を楽しみながら遂行することで、結果、世界が良くなるのは理想的ですよね。今日はどうもありがとうございました。
小山 勝弘
1970年滋賀県生まれ、京都大学工学部にてシステム工学を学んだ後、92年大和ハウス工業入社。入社後、大阪工業大学で建築を学び、06年まで本社設計部門にて、「大和ハウス大阪ビル」「石橋信夫記念館」など、大型建築プロジェクトの設計・デザインを担当。06年より本社環境部門にて、大和ハウスグループ全体の環境マネジメントを統括。環境経営戦略の立案、温暖化対策の推進等に従事。15年から現職。一級建築士、CASBEE評価員(戸建・建築・不動産)
記者:小田 亮子
神奈川県出身。求人広告、結婚情報誌などの制作ディレクターを経てフリーランスに。現在おもにブライダル関連のレポートを「ゼクシィ」「ゼクシィPremier」にてディレクション。「ethica(エシカ)~私によくて、世界にイイ。~ 」ほか、エステティック、化粧品、ジュエリーなどの記事をライティング。三人姉妹の真ん中に育ち、女子高・女子大卒。趣味は愛猫(雌)との女子会。
ーーBackstage from “ethica”ーー
大和ハウスと聞くと、あのユーモラスで親しみあるテレビCMを思い浮かべる方も多いかと思います。そのイメージ通り、大和ハウスグループは柔軟な発想とチャンレンジ精神で環境への取り組みを行っている企業と感じました。今後もサステナブルなチャレンジに期待したいと思います。
私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp
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