ethicaがメディアパートナーとして参加した「サステナブル・ブランド 国際会議2019 東京」では数々のセッションが行われました。その一つが富士通、日本航空、カルビー、住友林業の各社が参加した「次世代CSV(価値創造)経営とは何かーSDGsにより社会をリ・デザインするー」が行われました。今回はそのセッションのファシリテーターを務めた伊藤園の笹谷秀光氏の発言をまとめました。(記者:エシカちゃん)
SDGsによって社会をリ・デザインする
「富士通、日本航空、カルビー、住友林業という日本を代表するさまざまな分野の企業が集まって、SDGsを今どうやって使っているのか、今後どう使っていくのかというのが本日のテーマなので、最初に私のほうから改めてSDGsとは何かを復習して認識を統一したうえで、それぞれの会社の取り組みについて質問をしながら進めていきたいと思います。SDGsによって社会をリ・デザインする、社会を再構築する際、私が産官学を渡り歩いてきた経験が活かせるのではないか、CSV、CSR、そしてSDGsをこなしてきたのが私のこれまでのキャリアでありますから。」
三方よし
「最近思うのですが、横文字は難しい。自分よし相手よし世間よしのいわゆる三方よしでいいのではないか、これで十分に説明できるという気がしています。ただし、日本の場合、古い体質でいけば陰徳善事という言葉が一緒にあって、徳なことは隠す、分かる人には分かるというカルチャーがあります。しかし、これはグローバル時代には全く通用しないので、発信型三方よしを提唱していて、自らが歩く発信型三方よしということでホームページを使って発信しています」
つくる責任 つかう責任
「SDGsの認知度は経営者層には70%近くにまでなりましたが、それでもまだまだ世界との比較の中では、日本での定着率は低いといわざるを得ません。ですから、皆さんには伝道師になっていただきたい。
2013年から15年にかけて国連で議論をして、5つのPが危険だという認識が統一されました。People(人間)、Prosperity(豊かさ・繁栄)、Planet(地球環境)、Peace(平和)とPartnership(連携)が危ないのではないかということで、それぞれに解決策を洗い出したところ、17の持続可能な開発目標・SDGsが設定されました。
また、SDGsの目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」が入ったのがSDGsの非常に重要な特徴で、企業の力を使いたいということが明確に打ち出されていて、そして、不平等をなくしてまちづくりにもつなげていこうとしています。今日はそうしたまちづくりについてもクローズアップしていきたいと思っています。
目標12は「つくる責任 つかう責任」とありますが、使うほうの責任、消費者の対応も含めてしっかりと見直しましょう。
マイケル・ポーター流のCSV
私は環境省時代からさまざまな国際交渉をしてきましたが、SDGsは非常によくできた文章であり、国連で193か国の合意ができています。これから先ずっと、国際と名の付く議論をする時はこのことを知らずして会話は成り立ちません。例えばIOC、インターナショナル・オリンピック・コミッション、国際万博事務局、ユネスコ、こうした国際関係機関は全てSDGsを理解したうえで議論をする。間もなく来るG20ももちろんです。
テーマはSDGsが主軸になるだろうという、そういう感じですので、皆さんとサステナブルブランドのためのSDGsを再認識していただいて議論に入っていただきたいと思います」
「企業の場合、社会課題は分かった。であれば社会課題だけではなく、経済価値も同時実現しよう。マイケル・ポーター流のCSV、いわば共通価値の創造と訳されているCSVを実現するというのが企業の重要な要素の一つになっています。そのためにSDGsは使えます。そのチャンスを17の項目の中から探し出していただきたい。
そして一方、リスク管理にも使っていただきたい。その両面があるわけで、両面のバランスで企業の戦略性を強めていく。そういうことで企業こそSDGsをしっかりやろうということが今、相当程度の速度で浸透していますので、その浸透の度合いについて本日のパネリストの皆さんから実例を交えて話していただきたいと思います」
SDGsが経営マターに
「4社の発表を聞いていますと、4社はすでにSDGsを使いこなしていて、何を今さらSDGsなんだろうという考えもあるでしょうが、私は世界中でまとまったというところに意義があると考えています。企業にとって発信をどうするか、共感を呼ぶ発信をしたいと思った時、伝わりにくい部分があってもSDGsをかませると、ああ、あのことをいっているのかとすごく分かりやすくなります。特にグローバルに伝わりやすくなります。
次に大事なのは、これを社内に浸透させる、インナーブランディングというのが重要なポイントになります。
SDGsというのはチャンスであると同時に、あるいはリスクかもしれません。経済価値の実現で他社との差別化ができます。ダイバーシティをきちんとやっている会社は、それはそれでいいことですが、一方、調達のラインの中で児童労働のないサプライチェーンを確保しているとか、環境にいいことをやっていますよという一方で、環境負荷の高いほうに関与していないかの両方を見ていくことが必要になると思います。
マイケル・ポーターがいった社会価値と経済価値の同時実現のさらなるバージョンアップに、SDGsは使えます。つまり、企業にとってのSDGsはCSVだというようにとらえるのが非常に重要だと私は思います。この両方が実現できているプログラムが見え始めています。
次世代CSVをテーマに今日、皆さんと考えてきましたが、従来のCSRとは違って、SDGsが経営マターになってきました。これはとても重要な要素だと思います」
記者:エシカちゃん
白金出身、青山勤務2年目のZ世代です。流行に敏感で、おいしいものに目がなく、フットワークの軽い今ドキの24歳。そんな彼女の視点から、今一度、さまざまな社会課題に目を向け、その解決に向けた取り組みを理解し、誰もが共感しやすい言葉で、個人と世界のサステナビリティーを提案していこうと思います。
私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
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