ethicaがメディアパートナーとして参加した「サステナブル・ブランド 国際会議2019 東京」では数々のセッションが行われました。その一つが富士通、日本航空、カルビー、住友林業の各社が参加した「次世代CSV(価値創造)経営とは何かーSDGsにより社会をリ・デザインするー」でした。今回は住友林業の発表をご紹介します。(記者:エシカちゃん)
328年前からSDGsを実践!?
住友林業は元禄4年、1691年創業という今年で328年目を迎える歴史ある会社です。同社は愛媛県新居浜市にある別子銅山で使用する坑木を供給する備林事業のために創設されましたが、銅精錬の煙害が拡大したことを受けて1894年、2代目の総理事・伊庭貞剛が「大造林計画」を策定。以後今日に至るまで同社が環境や技術に関して語る時には全てこの計画の考え方が原点になっています。
同社のSDGsへの取り組みについて、
「2015年にSDGsが国連サミットで採択されましたが、私どもが328年も事業を続けてきた、木を創出する研究開発と育成開発によって荒廃した山を元の山に戻すという事業そのものが、まさにそれを断行してきたことに他なりません。これからもその持続可能な事業は脈々と続けていきます」
と中嶋一郎筑波研究所長はいいます。
日本の国土の800分の1を管理
現在、住友林業では日本の全国土の約800分の1にあたる4万8000haの山林を所有管理しています。政府は現状で36.1%といわれる日本の木材自給率を2025年までにおよそ50%まで高めることを目標に掲げていますが、住友林業の試算によると、その数字を実現するためには約4000万立方mの木材が必要となり、約9万haの植林をしなければならないそうです。
同社では今、8つのカテゴリーで事業を進めています。そのうちメインとなるのは苗を作って植林し、大きく育てた木を製材し建材として販売したり、住宅を建てたりなど生活のあらゆるサービスを通じて、再生可能な自然素材である木の持つメリットを最大限に生かしていこうことです。そして、その事業を支える研究・技術開発の大きな目標として、2018年2月8日に発表したのが「W350計画」です。
構造材に木を使った高さ350mのビルの建築構想
W350計画は、同社の創業350周年にあたる2041年に、構造材に主に木を使った高さ350mの世界に類を見ない超高層ビルを建てる技術を確立しようという研究技術開発構想です。木の価値をさらに高める技術を開発し構想を現実のものとすることで、世界に冠たる企業になりたいという同社の高邁な計画です。
「W350計画を通じて私たちがアピールしたいのは、持続可能な木という資源を活用して社会に貢献していくという当社の姿勢です。SDGsも含めて2041年まで何をどうしていかなくてはいけないかという課題を抽出し、2018年9月から活動を具体的にスタートさせました。もちろんこの事業は、私ども1社だけでできるものではありません。そこで、国土交通省、林野庁とも話し合いを進めながら、いろいろな企業との関係構築を図っているところであり、まさしくこれはSDGsの目標17『パートナーシップで目標を達成しよう』にもつながる内容ではないかと考えています」(中嶋さん)
W350計画は、国内はもとより外国での反響がことのほか大きく、約30か国から問い合わせをもらいました。同社では現在、様々な国の研究機関、大学などと情報交換を行っています。
「W350計画は、いろいろな国やインフラを巻き込みながらよりよい世界を作るために最先端技術を駆使して実現していきませんかという世界に向けての提案です。これから先のことを本当に考えていった場合、今、私たちができることは何なのか、それを具体的に示したのがW350計画であり、その意味で大いに注目していただきたいと思っています」(中嶋さん)
記者:エシカちゃん
白金出身、青山勤務2年目のZ世代です。流行に敏感で、おいしいものに目がなく、フットワークの軽い今ドキの24歳。そんな彼女の視点から、今一度、さまざまな社会課題に目を向け、その解決に向けた取り組みを理解し、誰もが共感しやすい言葉で、個人と世界のサステナビリティーを提案していこうと思います。
私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
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