大きな組織に属しているからこそできる社会貢献活動とは?
ヒカリ: 本業では、NTTデータで人事として活躍されていますね。
あきさん: はい、新卒採用などを担当しています。
これまでお話してきた社会貢献活動やエシカルとは関係ないじゃないかと思われるかもしれませんけど、実は相互に関連していることも多いんですよ。
ヒカリ: というと?
あきさん: たとえば、先ほど話した小沼さんが代表を務めるNPOクロスフィールズは、企業に所属するスキルある人材を発展途上国に送り込み、現地の人たちと課題解決に取り組む「留職」(※)というプログラムを展開しています。
私はこの「留職」にすごく共感して、社内で提案して、その結果社内で導入することになったんです。
導入後、社内異動で担当を離れることになり、ずっとは続かなかったんですけど。数名の社員が「留職」を通じて発展途上国の課題解決を経験することができました。
ヒカリ: 素晴らしいですね。NPOに所属するとか、社会起業家として独立する以外にも、企業に属しながらできることってたくさんありそうだなと思いました。
あきさん: 社会貢献を本気でしたいと考える人にとっても、企業で働き続けることは選択肢に入っていいと思っています。
社会起業家に憧れはあるけど、私の役割は別にあるなと思っていて。
それは、お金やリソースを持つところに所属して、そのリソースを社会に良い活動に振り分けること。
だから私は会社とNPOの架け橋的な存在として、これからも働き続けたいと思っていますし、社内で「こんなことをしましょう」と主張し続ける人でありたいと思っています。
ヒカリ: あきさんのように、社会貢献活動を会社のプロジェクトとして位置付けるのはすごくいいアイデアだと思いました。
あきさん: ただ、熱意だけで「これをやりたい」と主張するのではなく、会社にとっても利益になるという根拠をちゃんと示すことは意識しています。
「留職」を導入するときも、社内で「留職が意義のあるプロジェクトだ」と思う人がどれだけいるかデータを取るために、社内イベントに小沼さんを呼んで講演してもらったんです。そこで社員アンケートをとって、実際に「意義がある」という声が多かったので、その結果を伝えました。
ヒカリ: 私はあきさんのことを「想いの人」だと勝手に感じていたんですけど、想いだけではなくて戦略的にもなれる人だったんですね。
あきさん: 私自身、強い想いで活動する祖父をずっと見てきたわけなんですけど、時に熱い想いをぶつけるだけでは、伝わらない人もいると感じたんです。
興味がある人にとっては、熱意あるアプローチでもいいと思います。ってすごく有効です。ただ、誰もが自分と同じ熱量で関心を持っているわけではないですよね。
特に会社で決定権を持つ人ほど、新しい取り組みをはじめて会社として利益が出せるか、今ある事業をきちんと継続できるかをシビアに考えています。だから、相手との熱量の差を意識して、ちゃんと「根拠」を伝えていくことは、毎回大切にしています。
NPOや社会起業家の方が持つ熱い想いを伝わりやすい言語に変換して伝え、会社としても価値がある施策に落とし込むことで、今後もお互いの活動を後押しできるようにしたいですね。
※「留職」とは「留学」からきた造語で、企業に所属する人材が、現在の組織をいったん離れて、グローバル感覚を養うため、一定期間、新興国などの海外で働くこと