サーキュラーエコノミーがつくる暮らしのカタチ イケア・ジャパン マティアス・フレドリクソン氏
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サーキュラーエコノミーがつくる暮らしのカタチ

Photo=Kaori Uchiyama ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

『ethica(エシカ)』3月号のテーマは、「暮らしとエシカル」です。

2月19日・20日の2日間、パシフィコ横浜で開催された「サスティナブル・ブランド国際会議2020横浜」(SB 2020 YOKOHAMA)でのパネルディスカッション「サーキュラーエコノミーがつくる暮らしのカタチ」で、イケアがサーキュラーエコノミーに真面目に真正面から取り組んでいる理由、これからのイケアにおけるサーキュラーエコノミーなどについて語ったのがイケア・ジャパンのマティアス・フレドリクソン氏でした。ここではその内容をご紹介しましょう。(記者:エシカちゃん)

「イケアのビジョンは、より多くの方々に、より快適な毎日を提供すること、そして、ビジネス理念は優れたデザインと機能性を兼ね備えたサステナブルなホームファニッシングの製品をできる限り手ごろ頃な価格でご提供することです。

今、イケアが全世界で展開しているビジネスモデルは成功していますが、それはリニアなビジネスモデルです。もうすでに明らかに見えていますが、これからはバージン素材がどんどんなくなります。サステナビリティはもちろんですが、素材の価格がどんどん高くなることにより、イケアは手頃な価格で製品を提供することができなくなります。

その結果、イケアのビジネスコンセプトが成り立たなくなることが想像できます。、今すぐにアクションを起こさなくてはいけないということになってきます。

責任を持って資源を使うという考えは、イケアにとって決して新しいことではありません。イケアは1940年代に誕生しましたが、創業の地であるスウェーデンの南部は資源の乏しい地域で、最初からもったいないことはしないというのがイケアの考え方でした。

Photo=Kaori Uchiyama ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

今までイケアが日本で何をやってきたかといいますと、イケア・ジャパンはリユースに関しては、2017年から家具の買い取りサービスを始めていて、お客さまは使い終わったイケア家具をイケアに売ることができます。イケアはその家具をきれいにリペアして、店内にあるアウトレットコーナで販売します。

商品にセカンドライフを与えることはサステナビリティにとってもいいことですし、ビジネスとしてもサーキュラーエコノミーの中では比較的簡単にスタートできるものです。

今までは1万1000個くらいの家具に、92%以上のセカンドライフを与え他のお客さまにご使用いただいています。

これをこの春からBtoBにも拡大して、オフィスや店舗などからの買取りと販売ができるようになります。

家具のリペアや調整に関して、自分でリペアや調整ができるようにするのはとても大事です。そうすれば商品の価値を維持することができますし、お客さまは家の中にある家具を簡単には捨てたくないと思われるでしょうから、できるだけリペアしやすい商品にしたいと考えています。

イケアがこれから一番力を入れていくのはサーキュラーデザインです。最初から商品のデザインをシンプルにするために9つのサーキュラーデザイン基準を作りました。例えば、再生可能な素材やリサイクルされた素材を使って部品を少なくして標準化します。(Standardize)

具体例を挙げますと、SMÅTORPというソファでは、普通のソファはプロダクション・パーツが120個ぐらいありますが、そのソファは13個しかありません。そうすればサプライチェーンの無駄を減らすことができますし、お客さまもイケアももっと簡単に修理できるようになります。

そして、皆さんも引越しをされると思います。組み立ても簡単にしなくてはなりませんが、解体も簡単にしないといけません。今まではネジやクギを多く使っていましたが、これからはWedge Dowelというネジやクギを一切使わない接合方法により、何度も解体、組み立てを繰り返してもダメージを受けにくい方法を増やします。

そして、商品がリサイクルされる時のことも考えないといけません。どんな素材をミックスして使うかによっていろいろな問題が派生してきます。燃えやすいものを金属とミックスしてしまうと火事になることも考えられますので、そのような問題を未然に防ぐためにこのサーキュラーデザインのプロセスではリサイクルも最初から考えます。

そしてソフトな面では商品にストーリーを作ることも大切です。お客さまは自分が持っている商品に愛着があれば捨てなくなります。そうすれば商品のライフタイムは延長されます。

このように全ての取り組みでサーキュラーデザインをセットアップして、イケアは2030年までには全ての商品に採用したいと思っています」

記者:エシカちゃん

白金出身、青山勤務2年目のZ世代です。流行に敏感で、おいしいものに目がなく、フットワークの軽い今ドキの24歳。そんな彼女の視点から、今一度、さまざまな社会課題に目を向け、その解決に向けた取り組みを理解し、誰もが共感しやすい言葉で、個人と世界のサステナビリティーを提案していこうと思います。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

エシカちゃん

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