企業と消費者で進めるグッド・ライフの実現―サステナブルな社会を目指す企業の取り組みを、消費者とどうシェアするべきか?(後編)
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企業と消費者で進めるグッド・ライフの実現―サステナブルな社会を目指す企業の取り組みを、消費者とどうシェアするべきか?(後編)

持続可能な社会を目指し、グッド・ライフを提供するためのさまざまなプロジェクトを推進する企業があります。しかし、いくら企業が熱心に取り組んでも、消費者の意識が変わらなければ次の時代を切り開く新たな価値の創造には至りません。企業はどのようにして消費者の理解と協力を得ようとしているのでしょうか? 

2020年2月19日・20日の2日間、パシフィコ横浜で開催された「サステナブル・ブランド国際会議 2020 横浜」(SB 2020 YOKOHAMA)の基調講演「企業と消費者で進めるグッド・ライフの実現」では、BtoCの先進企業からパネリスト3人が登壇し、企業と消費者の連携について議論を深めました。前編に続き、当日のパネルセッションの内容をレポートします。

(記者:ethica編集部・のび子)

「サステナブル・ブランド国際会議 2020 横浜」基調講演

「企業と消費者で進めるグッド・ライフの実現」登壇者

【ファシリテーター】

サステナブル・ブランド国際会議
サステナビリティ・プロデューサー

足立直樹さん

【パネリスト】

サントリーホールディングス株式会社
執行役員 コーポレートサステナビリティ推進本部長

福本ともみさん

アスクル株式会社
取締役BtoC カンパニーCOO兼CMO

木村美代子さん

イオン株式会社
執行役 環境・社会貢献・PR・IR担当

三宅香さん

お客様とグッド・ライフを共有することの難しさ

足立: まずは成功例をお話しいただきましたが、そうはいいながらも、そのバックステージではいろいろ大変なことがあったんじゃないでしょうか。

社内的に、またはお客様対応でこれが大変だった、難しかったというエピソードをお話いただけますか。

木村: サステナブルというでテーマで商品開発を進める際に、メーカー様とお約束したことがあります。1つはもちろんデザインがいいこと、そして2つめは価格が高くなり過ぎないこと。3つ目は、機能やおいしさを損ねないこと。ただ、それらは大変難しいことでした。やはり、少しだけ価格が上がってしまった商品もあったんです。

足立: 高くなり過ぎない、というのは大事ですね。

木村: 少しは高くなってもいいのです。日常使うものですので、高くなり“過ぎる”と手に取っていただけなくなってしまいます。

福本: 機能面や、その商品に求めるものをしっかり担保できていないと、いくらサステナブルな商品だといってもなかなか手に取っていただけませんね。

私から1点加えさせていただくと、飲料業界では廃プラスチック問題に取り組み、1990年代から、製品に“リサイクルしましょう”というマークをつけたりする努力をしてきました。循環型社会を目指すにはお客様の共感を得て、実際に行動に移していただかなければいけないわけですが、ご家庭ではきちんと分別していただけていても、自販機の周りやイベント会場ではなかなか浸透しない。どうやって共感を得て一緒に循環型社会を目指していけるか、そこは今まさに取り組んでいるところです。

三宅: 同じく、お客様に共感していただくというのはすごく難しいと感じています。「買物袋持参運動」を始めた当初は本当に大変でした。今まで無料でつけていたものが急に有料になるなんて、というお客様の声もありましたし、店舗の理解を得るのも時間がかかりました。それがなぜ必要なのかということを一緒に考えていただく場を設けることが大切です。根気強くやらなければいけないですね。

足立: 価値や考え方をどのようにお客様に理解していただくか、共感していただくかが大事ですね。

企業間のパートナーシップと消費者とのコミュニケーション

足立: セッションのはじめに福本さんから、もはや1企業だけでは対応できないという発言がありましたが、さらにこういった活動を進めるために何が必要でしょうか。

木村: これからはパートナーシップが大事だと思います。先ほどご紹介した展示会も、テーマに共感してくださったメーカー様と一緒になって、新たな価値を創造しようと同じ方向を向いて取り組みました。そうすると、成功事例も失敗事例も共有できる。次はさらにいいものを作ろう、というパートナーシップが生まれます。

もう1つは、若い人の力です。若い世代とコラボレーションして、先を見ていくことが重要だと感じます。

福本: お客様が参加したくなるような仕掛けも必要かなと感じています。イベント会場で、ゴミを捨てたくなるようなゴミ箱を作って楽しくゴミを分別する。そのゴミをリサイクルして作った記念品を翌年お客様に差し上げるといった、楽しい、クールなアプローチもしていきたいと思います。

三宅: メッセージの発信というのは、これまでは大企業、マスコミなどが担ってきましたが、SNSの時代では個人の方も発信力があり、それができるプラットフォームがありますよね。社会課題の解決について、もっともっと個人の方も自分の意見を発信して、どうあるべきかを企業と個人が議論していくことができたらいいと思います。

企業と消費者が一緒に作る、サステナブルな社会

足立: 最後に、これだけは言いたいということがあれば。

木村: 日常で、サステナブルについて考えていただくために、デザインの力というのは非常に重要だと思っています。素敵だなと思って買ったものがサステナブルだった、という体験は大事です。デザイナーや企業とパートナーシップを組んで取り組んでいきたいと思います。

福本: 社会のためになることをしたい、と考えている若い方は多いです。ただ自分たちだけではできないので仕組みを作って欲しいという声があります。そういう声は嬉しいものですね。社会が大きく変化する時というのは、いきなり変わるのではなく、小さな変化の積み重ねで実現するものだと思います。小さな事を実践していって、そのなかから次の新しい世界につながる大きなものが生まれるのではないかと思います。

三宅: 例えばレジ袋たった1枚の削減でもいいと思うんです。今日はマイバッグを持っていったから環境にもお財布にも優しい行動をした、という小さな事の積み重ねでいいんです。

1人1人が情報を発信し、みんなでサステナブルな社会を目指す雰囲気を作っていくことが大切だと思います。

足立: この「サステナブル・ブランド国際会議」は「DELIVERING THE GOOD LIFE」という言葉を掲げていますが、皆さんのお話を聞いていると、DELIVERINGというよりも、企業と消費者が一緒に作っていくという考え方をした方がいいのかもしれません。

グッド・ライフを実現するためのさまざまなヒントをいただくことができました。ありがとうございました。

企業と消費者で進めるグッド・ライフの実現―サステナブルな社会を目指す企業の取り組みを、消費者とどうシェアするべきか?(前編)

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

のび子

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