パタゴニアの取組み
パタゴニアは、アウトドア衣類ビジネスにおいて、どのような取組みを進めてきたのでしょうか。その企業姿勢がわかるのが、ヴィンセント氏が語った、ふたつの繊維に関する話でした。
ヴィンセント氏は、まずオーガニックコットンについて語り始めました。実はパタゴニアも、最初からオーガニックコットンを採用していたわけではなかったといいます。
「コットンは植物由来の繊維なので、石油由来の化学繊維と比較して環境負荷の少ない素材であると考えていました。しかし80年代後半になって、実はコットンのほうが地球に悪い影響を及ぼしているということがわかったのです」
その理由は、コットンを栽培する際に使う化学肥料や農薬に含まれる有害物質にありました。有機リンは殺虫剤などにも使われる成分ですが、実は元々は、神経ガスとして第一次世界大戦中に開発されたものなのです。有機リンの負の側面について、ヴィンセント氏はこう説明します。
「従来型の綿花の畑を実際に見たときには、窓を締めていても有機リン系の農薬の臭いがしました。そして土壌にはまったく生物がいなかったのです。農薬を3年やめなければミミズは戻ってこない。ほかの植物もまったく育っていませんでした」
このような経緯から、パタゴニアはすべてのコットンをオーガニックコットンに切り替えたといいます。