国木田彩良−It can be changed. 未来は変えられる【Chapter-2-2】
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国木田彩良−It can be changed. 未来は変えられる【Chapter-2-2】

撮影:平間至

本記事は、パリでファッションを学び、モデルとして活躍する国木田彩良さんに、日本の女性たちのエンパワーメントを目指し、ファッションの歴史を紐解きながら、セクシャリティやジェンダーの問題について、フランクに語っていただく連載コラムの第3回です。

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求められた「もの静かな女性」

——国木田さんは、モデルのお仕事を通じて、さまざまな服を着ていらっしゃると思います。普段ご自身で選んで着ているものとは全く異なるテイストの服を着ることもありますよね。

私自身は基本的に、モノトーンのシンプルなものが好きなんです。10代の頃は、セクシーな服に憧れもしましたが、段々と、女性らしさ=セクシャリティではない、ということが分かってきて、今はコンサバとセクシーの中間くらいでしょうか。

でも仕事では、いろんな服を着て、さまざまな人格を演じます。日本に来て、たびたび言われたのが「物静かな女性のイメージで撮りたい」というものでした。日本では、人前で大人しく静かにしている女性が好まれる傾向にありますよね。

私は、日本に来て「ぶりっこ」という言葉があるのを知って驚きました。現代のフランスでは、自分の考えをどんどん発言する女性の方が魅力的に見られます。男性を丸め込んでしまうくらいの女性の方がモテるんですよ(笑)。たとえば男性が、自分の恋人を友達に紹介したりすると、まずその友達は「彼女、頭の回転が早くてクールだね」みたいに褒めます。日本の「彼女、可愛いじゃん」というような容姿の評価は、その次です。

撮影:平間至

ハイヒールは誰のため?

——日本では、慎み深さや忍耐強さが美徳とされるからでしょうか。確かに、自分の思考や感情を積極的に前に出していくことに対しては、男女関係なく抵抗感があるように思います。

日本の女性のファッションは、自分を可愛く、か弱く見せるようなシルエットが多いように思います。数十年前のヨーロッパに似ているな、という印象です。日本に来て、日本は欧米の文化に強い憧れを持ちながら、現代のヨーロッパの若者の価値観などを摂取することには、あまり興味がないんだなと感じました。

最近は「強い女性が好き」と言う男性が増えていますが、はたして世の男性たちが、本当にそう思っているのか、私はやや疑問です。私たちの社会は、いまだに女性に高いヒールの靴をはくことを求めます。ハイヒールは走りづらく、男性のエスコートを必要とする靴です。か弱い女性を好む社会的風潮が、ファッションに反映され、今日までずっと根付いているんです。

男性は「なんで、足が痛くなるのに、そんなうるさい音がする靴をはくの?」って言いますよね。でも、女性がハイヒールをはくということには、個人の意志以上の、歴史的に大きなステートメントがあるんです。

国木田独歩と「婦人画報」の時代

——国木田さんの高祖父にあたる国木田独歩(1871-1908)は、1905年創刊の『婦人画報』の初代編集長を務められました。同誌では、女性が学業やスポーツに励むことを肯定的にとらえ、新しい時代の理想の女性像を発信しています。当時としては非常に先進的でしたね。

女性解放の運動は、日本にも古くからありました。ただ、それは女性たちが主体となっていたものです。男性の立場から、女性たちの解放を肯定した独歩の功績は大きいと思います。独歩が生まれた時代は、日本に女学校が開校した時代です。そうした時代の機運を、彼はきちんとキャッチしていたのだと思います。

『婦人画報』の創刊号を見ると、当時としては、かなりフェミニストなんですよね。女性が学校に通って勉強することを奨励し、離婚を望む女性を励ます言葉も見られます。女性カメラマンも起用していました。そして、そうした女性解放を支持する文章の隣のページには、資生堂の広告が掲載されていました。それがまた、新しい時代の女性たちにエールを送る資生堂のプロモーションでもあったわけですよね。

——ファッションという切り口で、いろんな社会の情勢が見えてきますね。もっとファッションの歴史を掘り下げてみたいところですが、次回以降は、現代に話題を移し、国木田さんご自身の経験や同世代の価値観について、うかがっていけたらと思います。

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国木田彩良/Saila Kunikida

1993年、イギリス・ロンドン生まれ。フランス・パリで育ち、高校卒業後に服飾の名門スタジオ・ベルソーでファッションの歴史、デザイン、マーケティングを学ぶ。日本人の母とイタリア人の父を持ち、明治時代の小説家・国木田独歩の玄孫にあたる。

自身のルーツである日本に興味を持ち2014年単身来日、モデル活動を開始。2015年、三越伊勢丹の企業広告「this is japan」のイメージビジュアルに登場し注目を集める。国内外のハイファッション誌を中心に活動の傍ら、パリで形成された感性と日本で暮らす中で見えてきたことを発信していこうとSDGsに携わりながら、主にフェミニズムに関するトークショーに参加したり文章書いたりするなど活動の幅を広げている。

聞き手:ethica編集長 大谷賢太郎

あらゆる業種の大手企業に対するマーケティングやデジタルの相談業務を数多く経験後、2012年12月に『一見さんお断り』をモットーとする、クリエイティブ・エージェンシー「株式会社トランスメディア」を創業。2013年9月に投資育成事業として、webマガジン「ethica(エシカ)」をグランドオープン。2017年1月に業務拡大に伴いデジタル・エージェンシー「株式会社トランスメディア・デジタル」を創業。2018年6月に文化事業・映像事業を目的に3社目となる「株式会社トランスメディア・クリエイターズ」を創業。

創業8期目に入り「BRAND STUDIO」事業を牽引、webマガジン『ethica(エシカ)』の運営ノウハウとアセットを軸に、webマガジンの立ち上げや運営支援など、企業の課題解決を図る統合マーケティングサービスを展開。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

松崎 未來

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