親から子へ、おばあちゃんから孫へーー。大切な人に思いを込めて握る、日本人のソウルフード「おにぎり」。このおにぎりを作ったり食べたりすることを通じて、開発途上国の子どもたちを救おうというアクションが、10月1日からスタートした。その名も「おにぎりアクション2020」。その取り組み、誰でもが参加できるアクションとは?(記者:ethica編集部・中津海 麻子)
「おにぎりにまつわる写真」をSNSに投稿することで寄付につながる
「おにぎりアクション2020」は、おにぎりにまつわる写真を、特設サイトか#OnigiriActionをつけてSNSに投稿すると、1投稿につき給食5食分に相当する寄付(100円)を協賛企業が提供し、アフリカやアジアの子どもたちに給食として届けられる、という取り組みだ。
このアクションを運営するのはNPO法人「TABLE FOR TWO International(以下TFT)」。「先進国の私たちと開発途上国の子どもたちが食事を分かち合う」というコンセプトのもと、企業の社員食堂や店舗でTFTヘルシーメニューを提供。代金のうち20円が寄付となり、飢えに苦しむ世界の子どもたちに給食1食分をプレゼントしている。これまで、企業や官公庁、大学、病院など700を超える団体が参加し、約7500万食をフィリピンやアフリカのウガンダ、ルワンダなどに届けてきた。
しかし、今年は、新型コロナウイルス感染拡大でいつもの年とは状況が激変した。日本同様、多くの国で学校は休校を余儀なくされた。アジアやアフリカの開発途上国も例外ではなく、これらの国や地域では給食が子どもたちにとって大切な栄養源となっているため、7月時点で栄養失調の兆候があり支援が必要と判断された子どもはコロナ前よりも1.5倍になったという深刻な状況も明らかになった。
コロナ禍だからこそ、家族や大切な人と、そして世界とつながろう
TFTは「コロナ禍だからこそ、家族や大切な人と、そして世界とつながろう」と、開催を決断。掲げたテーマは「つながり」。「おにぎりアクション」の趣旨に賛同する日米の40もの企業や自治体が参加し、それぞれが本業を通じた形でさまざまなアクション、消費者とのコミュニケーションや情報発信に取り組み、組織を超えた連携で世界の課題の解決を目指す。
ミツカンの取り組み
おいしくフォトジェニックなおにぎりに不可欠なのが「具」。手軽に作れるおにぎりの素として、発売から40年近くの人気ロングセラー商品がミツカンの「おむすび山®」だ。同社は「おむすび山®」ブランドを通じ、おにぎりアクションの専用サイトの開設や生活者参加型のキャンペーン、社員自らがTwitterに投稿するといった活動を展開する。「おむすび山®」には、おむすびを通じて人と人との気持ちを結びたい、という気持ちが込められているという。同社担当者は「おにぎりアクションに参加する人たちの思いを世界の子どもたちに届け、思いをつないでいきたい」と意気込みを語る。
個人も企業も皆んなで応援
日産自動車は「家族の笑顔から世界中の人を笑顔へ」という思いから、ファミリー向けミニバン「日産セレナ」ブランドで特設サイトを設けアクションをサポート。教育事業を手がけるベネッセは、子ども、中高生、そして社会人向けに、家族の交流を生んだり、社会課題を学べたりするコンテンツを提供し、「教育」を切り口におにぎりアクションを応援する。食品通販サービス「Oisix」「らでっしゅぼーや」「大地を守る会」を運営する「オイシックス・ラ・大地」は、各ブランドでTFT寄付つきの米の販売やSNSを使った投稿促進キャンペーンを展開している。
どの参加企業も、さまざまな形で新型コロナウイルスによる影響を受けながらも、その状況をネガティブに捉えず、本業を通じたウィズコロナ、アフターコロナの世界を見据えているようだ。
「オンライン授業はできても、オンライン給食はできない。こうした状況でも知恵を絞って給食を届け続ける活動をサポートし、さらにこの活動の意義を消費者の皆さんに伝え、参加を呼びかけていきたい」(オイシックス・ラ・大地)
「新型コロナウイルスの影響で食を取り巻く環境は大きく変わったが、一方で家族が集まる楽しさが再認識された。こんな時だからこそ、家族の気持ちをつなぎ、世界を元気にしていく。食を提供する会社として大きな意義を感じている」(ミツカン)
「オンラインの交流が余儀なくされているが、オンラインでも温かい交流はできる。SNSは正しく使えば、遠く離れた子どもたちを応援するこんなステキな取り組みも実現できる。家族と過ごす時間が増える今、普段はあまり料理をしない私も『今日はおにぎり作ってピクニックにでも行こうよ』と、これを機にお父さんとしてかっこいいところを家族に見せたい」(ベネッセコーポレーション)
大切な人のために握ったおにぎり、家族と一緒に食べるおにぎり。その思いと笑顔を写真に残し、それが遠い地の子どもたちのおなかを満たして笑顔につながる。人との距離を取らざるを得ない世界でも、心はいつだってつながることが出来るーー。
そんな温かい気持ちと未来への希望が持てるおにぎりアクション。さぁ、ごはんを炊こう!
「おにぎりアクション2020」は、10月31日まで。
記者:中津海 麻子
慶応義塾大学法学部政治学科卒。朝日新聞契約ライター、編集プロダクションなどを経てフリーランスに。人物インタビュー、食、ワイン、日本酒、本、音楽、アンチエイジングなどの取材記事を、新聞、雑誌、ウェブマガジンに寄稿。主な媒体は、朝日新聞、朝日新聞デジタル&w、週刊朝日、AERAムック、ワイン王国、JALカード会員誌AGORA、「ethica(エシカ)~私によくて、世界にイイ。~ 」など。大のワンコ好き。
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