企画展示「性差(ジェンダー)の日本史」国立歴史民俗博物館レポート 男とは? 女とは? 男女の区別意識はどのように生まれ、変化してきたのか?
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企画展示「性差(ジェンダー)の日本史」国立歴史民俗博物館レポート

日本の長い歴史の中でさまざまな形で社会と関わってきた女性たち。しかし、そうした女性たちの姿が記録として残されることはそれほど多くはありませんでした。

そして、移りゆく時代の中で生まれてきたのが「なぜ男女で区分するようになったのか?」「男女の区分の中で人々はどのように生きてきたのか?」そして「区分の目的や区分によって生まれた意識がどのように変化してきたのか?」という問いでした。

国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)で12月6日(日)まで開催されている企画展示「性差(ジェンダー)の日本史」はタイトルからも分かるように、ジェンダーが日本社会の歴史の中でどんな意味を持ち、どう変化してきたのかを重要文化財やユネスコ「世界の記憶」を含む280点以上の資料を通して明らかにしようというユニークな歴史展示です。本展では3つのテーマを7つの章に分けて歴史をたどっています。

いったいどのような資料が展示されているのか、さっそく訪ねてきました。(記者:エシカちゃん)

第1のテーマは「政治空間における男女」です。

ここでは政治が行われた空間に着目し、そこでの男女の在り方を時代を追って探っています。人々を「男」と「女」に二分し、異なる役割を定める制度、いわゆるジェンダー区分は古代律令国家の形成に伴って生まれ、政治空間にもその区分が浸透していきました。

さらに家が政治空間の場となった中世・近世、政治の場から女性を完全に排除する近代国家の確立を経て現代に至るまでの過程を紹介しています。

ここでの主な展示品

機を織る女性坐像埴輪(重要文化財)栃木県甲塚古墳出土6世紀後半 下野市教育委員会蔵

2004年の発掘調査で石室の西側から、一列に並んだ状態で発見された群像の1つです。楕円の台上に大型の傾斜した機台を造形し、織る女性は円文をちりばめた衣装を着ています。

※映像資料のみ(3D映像)

伊福吉部徳足比売臣骨蔵器(重要文化財)710(和銅)3年 東京国立博物館蔵 Image:TNM Images Archives

因幡国(鳥取県)出身の女官、伊福吉部徳足比売臣の骨蔵器で、蓋に16行にわたって放射状に銘文が計108字彫られています。終わりから4行目には「墓所を壊すことなかれ」と末代の豪族たちを戒めており、徳足の威光をうかがわせています。

 

地蔵菩薩立像(重要文化財)1334(建武元)年 国立歴史民俗博物館蔵

彩色された木像の地蔵菩薩像。像内に空洞があり、そこに大量の印仏や毛髪などの納入品が納められています。結縁のために仏の姿を摺り物にした仏印などに書かれた名前には、男に劣らず女性も多くなっています。

 

第2のテーマは「仕事と暮らしの中のジェンダー」です。

ここでは仕事と暮らしの中のジェンダーに光を当てていきます。古代の木簡や古墳から出土する埴輪からは、これまで知られてこなかった古代の男女の労働実態がうかがえるとともに、中世や近世の田植え、人々の髪を結う仕事などさまざまな職人たちの姿を紹介することで「男の職業」「女の職業」というイメージがいつ、どうやって生まれたかが浮かび上がらせています。

ここでの主な展示品どんじゃ 19~20世紀 青森県南部民俗資料 アミューズミュージアム / 田中忠三郎コレクション Amuse Museum, Collection of Chuzaburo Tanaka

青森県南部地方で大正期まで使われていた掛布団。麻布に古着の木綿を継ぎ足し、麻屑を詰めたものです。厳しい暮らしの中でボロ布をつぎはぎする女性たちの手仕事は、現在、世界各国の博物館、美術館で注目を集めています。

 

東山名所図屏風(第2扇)(部分)16世紀後半 国立歴史民俗博物館蔵

京都東山の名所、特に清水寺を大きく描いた参詣曼荼羅的な屏風です。女性の生業や参詣の様子など、さまざまな職種の女性の姿が多く描かれており、清水の舞台の中央には参詣して喜捨を施す女性家族の姿が見られます。

 

女髪結 F・ベアト撮影 1863(文久3)年 長崎大学附属図書館蔵

幕末のモデルによる写真です。女髪結は客を訪ねて結うのが通常の営業形態でしたが、当時、女髪結は取り締まりを受ける非合法の職業とされていました。

 

第3のテーマは「性の売買と社会」です。

歴史展示としてはこれまでに例のないテーマですが、それぞれの時代の社会の特徴とジェンダーに大きく左右される性の歴史を、中世から戦後までの性の売買に注目して考えていきます。「売春は最古の女性の職業」と言われる中、遊女・娼妓として生きた女性たちの日記や手紙などを紹介しながら、男女の区分や位置づけを深く反映する性の歴史を振り返ります。

ここでの主な展示品

高橋由一画「美人(花魁)」(重要文化財)油彩 1872(明治5)年 東京藝術大学蔵

新吉原遊廓 稲本屋の遊女・小稲の肖像画。近代洋画の創始者である高橋由一のモデルになった小稲は、完成したこの絵を見て泣いて怒ったと伝えられています。稲本屋抱え遊女のトップとして店と自身の宣伝に努めてきた小稲には、リアルを追求する絵が自らの努力を無にするものに見えたのかもしれません。

 

遊女桜木の日記「おぼへ長」(「梅本記三」狩野文庫)>1846(弘化3)年 東北大学附属図書館蔵

新吉原遊廓の遊女屋梅本屋佐吉のお抱え遊女・桜木の日記です。1849(嘉永2)年、梅本屋の遊女16人が、楼主佐吉の非道を訴えるために集団で放火し、その後自首するという事件が起きました。裁判調書に綴じ込まれた桜木の日記は梅本屋での遊女たちの過酷な生活が克明に綴られています。

 

企画展示 性差(ジェンダー)の日本史

会場    国立歴史民俗博物館 企画展示室A・B

〒285-8502 千葉県佐倉市城内町117

会期    ~12月6日(日)

開館時間  9時30分~16時30分(入館は16時まで)

休館日   月曜日(月曜日が休日に当たる場合は開館し、翌日休館)

入館料   一般1000円・大学生500円・高校生以下無料

問い合わせ ハローダイヤル 050-5541-8600(8時~22時)

公式サイト https://www.rekihaku.ac.jp

 

(国立歴史民俗博物館からのアナウンス)

企画展示会場内の混雑防止のため、会期中の土・日・祝日、終了前1週間につきましては、webからのオンライン入場日時指定事前予約を受け付けています。事前予約をされた方は、ご希望の時間にご入室いただけますが、ご予約のない方も、定員に達していない時間帯は、当日来館しての時間指定が可能です。ただし、事前予約が優先となり、ご希望に添えないことがありますので、ご了承ください。

オンライン予約の詳細はこちらをご確認ください。https://www.rekihaku.ac.jp/exhibitions/project/procedure.html

 

本展は、驚きと発見に満ちたジェンダーの成り立ちとその変化を総覧できる企画展示です。日本社会の長い歴史における差(ジェンダー)を知ることで、時代とともに移り変わった固定概念的なジェンダーのあり方にとらわれず、誰もが自分らしく生きられる社会を築く手がかりを見つけることができるのではないでしょうか。

記者:エシカちゃん

白金出身、青山勤務2年目のZ世代です。流行に敏感で、おいしいものに目がなく、フットワークの軽い今ドキの24歳。そんな彼女の視点から、今一度、さまざまな社会課題に目を向け、その解決に向けた取り組みを理解し、誰もが共感しやすい言葉で、個人と世界のサステナビリティーを提案していこうと思います。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

エシカちゃん

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