そして、気候危機というのは経済的な損失、打撃がひじょうに大きいのです。そういったデータがあり、このままでは2030年にSDGsを達成するなんて全くできないよというのがコロナ前の状況でした。
そして、コロナがさらに追い打ちをかけました。コロナは保険医療の機器として始まったわけですが、瞬く間に人権、人道、社会、経済、金融の全てにおいての人類の危機にまで広がってしまいました。その中で最も大きな打撃を受けているのが置き去りにされがちな人たち。女性、移民労働者、子どもなどがより大きな打撃を受けています。
これは国連開発計画、UNDPがまとめている人間開発指数です。これは教育、保健、そして暮らし向きを指数化したものですが、ずっとプラスで推移してきたものが今年初めて大きくマイナスに転落してしまう見通しです。
雇用についていいますと、5億人のフルタイム労働に相当する雇用が失われています。特に非正規雇用、インフォーマルセクターに従事している人たちが打撃を受けています。それは女性なんです。女性は外出規制などで家に留まることが多く、中には自分に対して暴力をふるうパートナーとの時間が増えてしまって家庭内暴力により遭いやすくなっています。このことはデータ的にも世界各国から上がってきています。大変不幸な実態です。
教育機関についても、ピーク時には世界の全ての生徒、学生の9割にも上る16億人が学校に通えませんでした。今も10億人規模が学校に通えない状況で、一番最初に脱落してしまうのは途上国の女の子です。途上国の女の子は最初にドロップアウトして学校に来るのは最後、あるいは学校に戻ってくることはないかもしれません。
そういった中でSDGsがもっとコロナ前に進んでいたならば、医療サービスがもっと充実して、そして、格差のない状態があったならば、ここまでひどい打撃にはならなかったでしょう。コロナの打撃とSDGsが進んでいないことが生んでしまったといえると思います。
そういったことからもSDGsを羅針盤にして、決してコロナ以前のオールドノーマルに戻るのではなくて、より包摂的、より平等、よりクリーン、そして、より持続可能な、より良い復興を遂げなくてはならないというのが国連の考えです。
忘れてはならないことは、コロナの陰で気候危機が進んでしまっているということです。これは最新の世界の平均気温の状態ですが、産業革命以前に比べてすでに1.1℃上昇してしまっています。どういうところで気温上昇が激しいかといいますと、
北極、南極の極地の温度上昇が激しくなっています。それは氷床がすごいスピードで溶けることにつながっています。そうなると低地ばかりの小さな島嶼国は、ひとたまりもありません。また、脆弱な社会であるサハラ砂漠以南のアフリカもひとたまりもありません。
これらの国々は、温室効果ガスの排出にはほとんど寄与していません。そういったところが先進国並びに中国、インドの排出してきた温室効果ガスのしわ寄せを受けてしまうという、そういう不正義が起こります。
そうした、今申し上げたような多岐に渡るメガレベルの危機に対して、我々は連帯の精神で立ち上がらなければなりません。そういった願いを込めて国連が国連75周年を機に作ったドキュメンタリーの予告編をお持ちしましたのでご覧ください。