垣内: 今お話のあったトイレのことから簡単にお話ししますと、多目的トイレというのは、今年一番のホットワードになりましたが、本来は多機能トイレだということをちゃんと解釈しなければいけません。みんなのトイレというのも一番よくない表現です。あれは誰もが使う拡大解釈ですから。
本来は機能が多いということで国土交通省のほうでも表現をずっと統一していたところ、民間企業が多目的だ、みんなのトイレだとしたせいで、だんだんと訳が分からなくなってきて、みんなが変なように使うようになってきました。
多機能トイレというのも、もっとちゃんと考えなくてはいけないポイントがいくつもあります。今、広いだけのトイレはいくらでも増えています。問題はオストメイト対応の設備があるトイレがどれだけあるのかということです。これは人工肛門、人口膀胱をつけている方は普通のトイレでは排泄ができないですから、オストメイト対応の設備が必要になります。それで、多機能トイレと表しているものも、みんなのトイレと書いてあるものも、オストメイトの方が使えるかというと使えません。
あと、日本で一番欠落しているのは補助犬対応のトイレです。JR東日本さんは、さいたま新都心駅には設けています。でも、それくらいです。世界各国を見てもそれほど多くはないですが、オリンピック、パラリンピックのタイミングであれば絶対に空港には設置されます。そういったことが今、日本全体では決して多くないわけなので、トイレに関してはもっともっと考えなければならないことがあるのではないでしょうか。
また、施設面のことでお話ししますと、千代田区内には今3900店くらいの飲食店がありますが、車椅子で入れるのは300未満です。つまり1割以下です。
大阪はもっと多いです。この違いは何かというと歴史的な変遷です。1970年に大阪で万博がありました。あのタイミングでバリアフリーをかなりやっています。それに対して東京はどこまでやってきたかというと、地下鉄も大阪より遅れています。ありとあらゆる部分でバリアフリーに関して東京は遅れていますね、実態は。
何となく東京のほうが進んでいると見えがちですが、大阪のほうが圧倒的なんです。まだこの町、この区はできているというところはないので、ぜひ千代田区で大丸有エリアで、そうした環境を皆さんと一緒に作っていけるといいなあと、そう思っています。