自然災害の増加を招いている地球温暖化や新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、世界の観光産業は大きなダメージを受けています。こういった状況を受けて、Visit Finland(フィンランド政府観光局)が「サステナブル・トラベル・フィンランドプログラム」を本格始動させます。豊かな自然や文化を満喫しながら、環境や社会の整備に貢献できる旅行の“新常識”を一緒に探りましょう。(記者:エシカちゃん)
手つかずの自然や平等を大切にする文化を守り育てる
世界で初めて炭素税を導入するなど、二酸化炭素(CO2)の排出量と吸収量のプラマイゼロを目指すカーボンニュートラルに取り組むフィンランド。国連の世界幸福度調査では、2018年から2020年まで3年連続で最も幸福な国に選ばれていて、あらゆる意味で持続可能な社会づくりを進めています。
そんなフィンランドが手掛けるのは、サステナブルな旅行を実現するための 「サステナブル・トラベル・フィンランド プログラム」です。エシカルで環境に優しい、まさに観光のニューノーマル(新常態)と言えます。一体、どんな内容なのでしょうか。
Visit Finlandは2019年に「フィンランドを世界で最もサステナブルな旅行先の一つ」にする目的から、「サステナブル・トラベル・フィンランド プログラム」を立ち上げました。国土の7割を森林が占め、18万以上の湖があり、そして世界で最も空気がきれいな国だと言われているフィンランド。観光事業を振興しながら、手つかずの自然や、平等を大切にするカルチャーを守り、育むのが狙いです。
具体的には、経済や生態系、社会、文化という4つの視点にフォーカス。プログラムの課程を修了し、国が示す持続可能な観光への取り組みや、持続可能な観光計画の作成といった基準を満たした企業や観光地が認定を受けることができます。認定を取った地域を訪れ、事業者のサービスを受けるだけで、自然保護や社会、文化の維持発展に貢献できるのです。これは嬉しいですね。
ラップランドのポシオやピュハが認定を取得
プロジェクトの認定を初めて取得したのは、同国の北部にあるラップランドのポシオです。ポシオは人口わずか3,000人足らずの自然豊かな地域。リーシトゥントゥリとシュオテにある国立公園や、コロウオマ渓谷、リボヤルヴィ湖、ペンティック=マキ文化センターといった緑豊かな名所があり、「ラップランドの秘宝」として多くの旅行客を魅了しています。
また、ポシオはオランダの非営利団体グリーン・ディスティネーションが発表した「世界の持続可能な観光地トップ100」にランクインしました。 地元企業は自然エネルギーの活用や節水対策に取り組み、地産地消を推し進めるなど、持続可能な社会づくりにとても前向きです。自然との共生に向けた地道な取り組みで、美しい景観を維持しているのですね。
ポシオと同じくラップランドに位置し、「世界で最もクリーンなスキー場」を目指しているピュハ・スキーリゾートも認証を取得しました。ピュハは指折りのリゾート地で、夜にはオーロラを観測できる人気スポットです。ラップランド以外の地域では、アーバメリ社による世界遺産を横目にヘルシンキの海岸沿いを進むシーカヤック体験や、湖水地方にある「サイレント ピープル メドウ カフェ アンド レストラン」の美味しいコーヒーやバター風味のフィンランド風クレープなど、楽しいイベントやおいしい食事が目白押し。既に57社と1つの自治体が認定を獲得し、サステナブルツーリズム(持続可能な観光)を追求しています。
「サステナブル・トラベル・フィンランド プログラム」について
Visit Finlandは2019年に「サステナブル・トラベル・フィンランド プログラム」を開始しました。1年間の試験期間を経て、2020年6月にプログラムを公開。このプログラムは、レストランや宿泊施設、旅行代理店、アクティビティの提供者、観光施設をはじめとしたフィンランド国内の関連業者や観光地を対象にしています。プログラムの全課程を修了、基準を満たした事業者や自治体に認証を付与。認証は更新制で、持続可能な取り組みへの適切なコミットメントが継続的に求められます。
「サステナブル・トラベル・フィンランド プログラム」は国際規格「ISO14001」や環境に配慮した宿泊施設のエコラベル「Green key」などと連携し、持続可能な開発目標(SDGs)を推進。欧州旅行委員会(ETC)や欧州版観光指標システム(ETIS)、世界持続可能観光協議会(GSTC)などの指針を考慮しながら、運用します。2021年からの旅行選びにはサステナブルという視点を。旅行後の満足感に社会貢献という要素が加わることになりそうです。
記者:エシカちゃん
白金出身、青山勤務2年目のZ世代です。流行に敏感で、おいしいものに目がなく、フットワークの軽い今ドキの24歳。そんな彼女の視点から、今一度、さまざまな社会課題に目を向け、その解決に向けた取り組みを理解し、誰もが共感しやすい言葉で、個人と世界のサステナビリティーを提案していこうと思います。
私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp