(第46話)「知っておきたい塩のはなし(後編)〜選ぶときに気をつけたいポイント」キコの「暮らしの塩梅」
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(第46話)「知っておきたい塩のはなし(後編)〜選ぶときに気をつけたいポイント」キコの「暮らしの塩梅」

「私によくて、世界にイイ。」が実現できる、エシカルな暮らしのカタチってなんだろう。仕事に家事に育児に……。日々生活を回すだけでも大変な私たちにとって、新しく行動を起こすのはエネルギーも時間も使うし、ハードルが高く感じてしまうもの。

でも日々の暮らしのなかで、少しでも”良い”につながることができたら?

当たり前の毎日のなかで、大切な家族も、世界も、そして私自身もほんのちょっぴり幸せになるような選択をしていけたらいいなと思うのです。

第45話では、塩に含まれるミネラルの大切さについてお伝えしました。今回の記事では、選ぶときに意識したいポイントと、私が実際に使っている塩をご紹介したいと思います。

どんな塩を選ぶ?

前回、塩には大きく分けて3つの種類があることをお伝えしました。

 

・精製塩

・再生加工塩

・天然塩(もしくは自然塩)

 

「精製塩」は純度が高くほぼ「塩化ナトリウム」のみで構成されているもので、ミネラルが失われ言ってみれば「ただしょっぱい」だけの塩。

「再生加工塩」は精製塩や輸入した塩に、にがりや海水を添加したもの。

「天然塩」は正確な定義はないものの、海水を原料として天日で乾燥させたり釜で煮詰めたりして作られたもの、岩塩、湖塩などもそれにあたり、ミネラルが豊富に含まれています。

 

結論からいうと、ミネラルが極端に少ない「イオン交換膜製塩法」で作られた工業的な「精製塩」は避け、できるだけ「天然塩」に当たる「平釜」「天日」の塩を選ぶことが理想です。

 

これらは商品のパッケージの裏に記載されている「原材料名」と「製造方法(工程)」の欄を見れば、どの種類に当たるのかがわかります。

例えば、この写真にある塩には、

 

原材料名:海水(フランス)

工程:天日、乾燥、粉砕

と記されています。

 

意味としては、フランスの海水を天日干しして蒸発させ乾燥させたものを、細かく砕いてふるいにかけて粒を揃えた塩、という感じです。

 

原材料名として使える言葉は「海水」「海塩」「岩塩」「湖塩」「天日塩」などと決まっていて、名前に続くカッコ内に産地が書いてあります。

 

工程はさまざまな方法があり、一部あまりみかけない表現もありますが、多くはその言葉の通りです。

 

<工程の表記>

・イオン膜:いわゆる精製塩の製造方法。海水を電気分解して塩化ナトリウムだけを取り出す。純度は高いが大切な栄養素が失われてしまっている

・逆浸透膜:海水中の塩分を濃縮する方法

・溶解:天日塩や岩塩を水に溶いて濃い塩水を作ること

・天日:太陽や風など自然の力を利用した蒸発法。日射量が多く乾燥した気候の地域が向いている

・平釜:開放釜で煮詰めて塩の結晶を作る方法。多湿で降水量の多い日本でよく取られてきた、昔ながらの作り方

・立釜:密閉した容器で蒸気加熱し、真空や加圧によって結晶を作る方法

・乾燥:塩の結晶を加熱して水分を取り除く作業。サラサラした塩になる

・焼成:高温で焼くことにより固まりにくくサラサラの塩になる

・採掘:岩塩や湖塩を掘り起こすこと

・粉砕:塩の塊を砕いて粒を小さくする、ふるいにかけて粒の大きさを整える

などなど。

 

工程に「イオン膜」や「立釜」とあれば「精製塩」。

原材料名にカルシウムやマグネシウム(にがり)、海水が添加されていることがわかる表記があり、工程に溶解、混合などの文字が並んでいたら「再生加工塩」であるとわかります。

 

天然塩を選ぶ際は、「海水」を原料とし工程が「天日」「平釜」のものがおすすめです。

塩にはいろいろな種類がありますが、海に囲まれた日本に住む私たちには、海水を原料とした天然塩が一番体に合っているのではないかと思います。

 

ヒマラヤソルトなどで有名な岩塩は、太古の海の成分が長い年月をかけて化石になったものでミネラル分は海水よりも少なくなっています。

お料理や体質に合わせて、塩の種類を使い分けるのがオススメです。

 

塩はさまざまな原料・工程を組み合わせて作られているため、判断に迷うこともあるかもしれませんが、ご紹介したいくつかのポイントを購入する時など参考にしてみてくださいね。

 

我が家で使っている塩

天日や平釜の製造方法で作られた天然塩は、とても手間暇がかかっているので、その分お値段は高くなっています。

 

なので、もう一つの選択肢としては比較的安価で手に入りやすい「再生加工塩」があります。

再生加工塩を選ぶ際には、人工的なミネラルが添加されていないこと、精製塩を使っていないことに気をつけています。

 

我が家では、おにぎりやてんぷらなど食材に直接かけて食べるときは「自然塩」、パスタを茹でるときや塩もみするときは「再生加工塩」と使い分けています。

 

出先や旅行先で、普段スーパーでは見かけない塩やその土地ならではの塩などを見ると、ついつい手にしてしまうので我が家にはたくさんの塩があるのですが……。

そのなかでも、比較的手に入りやすい物をご紹介したいと思います。

 

「自然塩」

・ゲランドの塩【原材料名:海水(フランス)、工程:天日、乾燥、玉砕】

フランスで古くから作られてきた伝統的な天日塩。素材の味を引き出し、深みを与えてくれるので、スープやお肉を焼くときによく使っています。

 

・粟国の塩【原材料名:海水(沖縄県粟国島)、工程:逆浸透膜、天日、平釜】

昔ながらの製法にこだわって沖縄の海水を100%使用して作られており、たくさんのミネラルがバランスよく含まれています。まろやかな味わいは、おにぎりや焼き魚などにぴったりで、塩麹を作るときにも使用しています。

 

・マグマ塩【原材料名:岩塩(インド)、工程:採掘、選別、粉砕】

ヒマラヤ山脈から取れる塩で、ゆで卵のような硫黄の風味が強いのが特徴です。ポリフェノールが多く含まれ抗酸化力が高いこと、ケイ素が多く含まれていることなど、健康効果が高い点が注目されています。風味を活かせるスープやサラダ、蒸し野菜をはじめ、飲み水にひとつまみ入れて使用しています。

 

「再生加工塩」

・青い海のシママース【原材料名:天日塩(メキシコまたはオーストラリア)、海水(沖縄県)、工程:溶解、平釜】

こちらは海外製の天日塩を沖縄の海水で溶かし、平釜で煮詰めて作られています。パスタ、塩もみ、梅干しなど、塩がたくさん必要な場面で使うことが多いです。

 

塩のマイクロプラスチック問題

海水から作られる塩は、海をめぐる環境問題とも大きく関わっています。

 

2018年に韓国の研究者グループと環境保護団体の「グリーンピース東アジア」による調査と研究で、世界の食塩39品目のうち36品目に、マイクロプラスチックが検出されたという調査結果が出されました。

世界的にも話題になったのでご存じの方も多いかと思いますが、この調査によるとマイクロプラスチックは東南アジアの地域の塩に多く含まれ、台湾、中国、フランスの一部の塩からは検出されなかったそうです。

 

日本の塩は調査外でしたが、日本周辺の海もマイクロプラスチックによる汚染は進んでいます。

人体への影響はまだ明らかにはなっていませんが、塩の多くは海水を元に作られているので、そのリスクを不安に感じる方も少なくないと思います。

 

塩を選ぶ際の原材料や製法はもちろんですが、環境からの影響なども選ぶ際の判断基準として重要だと感じています。

製造元で独自に調査しているものもあるので、HPなどでそういった情報を確認してから選ぶのもひとつの方法です。

美味しく安心して使える塩を毎日の食卓に

一言で塩といっても、原料や工程にはさまざまな種類があることがおわかりいただけたでしょうか。

 

毎日、毎食のように口にする、料理には欠かせない塩。

健康のためには減塩と言われがちな昨今ですが、大切なのはその質ではないかと思います。

 

コスト重視の外食やスーパーのお惣菜などの味付けに使われているものの多くは、安価で手に入る精製塩や、精製塩から作られた調味料です。

ほぼ塩化ナトリウムのみで構成されている精製塩ばかりを摂取していると、体内のミネラルバランスが崩れやすくなってしまいます。

 

できるだけ自然のミネラルを損ねていない天然塩を選ぶこと、天然塩を使った調味料や加工品を選ぶことで、伝統的な文化を守ること、より健やかな体を維持できるのではないかと思います。

 

数多くある塩のなかから、日々安心して使えるお気に入りのひとつと出会うきっかけとなれば嬉しいです。

【連載】キコの「暮らしの塩梅」を読む>>>

季子(キコ)

一児の母親。高校生のころ「食べたもので体はできている」という言葉と出会い食生活を見直したことで、長い付き合いだったアトピーが大きく改善。その体験をきっかけに食を取り巻く問題へと関心が広がり、大学では環境社会学を専攻する。

産後一年間の育休を経て職場復帰。あわただしい日々のなかでも気軽に取り入れられる、私にとっても家族にとっても、地球にとっても無理のない「いい塩梅」な生き方を模索中。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

季子(キコ)

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