【ethica副編集長対談】RICCI EVERYDAY 仲本千津さん(前編)
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【ethica副編集長対談】RICCI EVERYDAY 仲本千津さん(前編)

Photo=Ura Masashi ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

今回の副編集長対談はウガンダ発のファッションブランド「RICCI EVERYDAY(リッチーエブリデイ)」創業者の仲本千津さんを訪ねました。

「RICCI EVERYDAY」は、豊富なバリエーションのアフリカンプリントの中でも、ひときわカラフルでプレイフルな生地を使用し、デザイン性のみならず機能性も兼ね備えたバッグやインテリアアイテム、アパレルを展開しているウガンダのライフスタイルブランドです。

ブランド創業より5周年を迎えた仲本さんに、起業までの道のり、今後の事業展開、将来の夢についてお話を伺いました。

ウガンダと仲本さんを結びつけたストーリー

萱島: まず「RICCI EVERYDAY(リッチーエブリデイ)」を創業するまでのウガンダと仲本さんを結びつけたストーリーについてお聞きしていきたいと思います。仲本さんは日本人初の国連難民高等弁務官として活躍された緒方貞子さんに憧れて早稲田大学で学ばれ、その後、一橋大学の大学院で平和構築やアフリカの紛争問題を研究されたとお聞きしています。

仲本: ええ、その通りです。

萱島: この分野を学びたいと思われたきっかけはどういうことでしたか。

仲本: 中学生ぐらいの頃から、人って何で戦うのかなとか、人の命を奪ってまで自分の利益を追求しようとするのはなぜなんだろうということに興味があって、だからこそ傷ついた人たちのために私は何かできないだろうかと思っていました。

そして、高校生の時に緒方さんの存在を知り、こんな女性がいるんだとすごく感銘を受けて、彼女みたいになりたいなと思って彼女のことをいろいろと調べてみました。すると、緒方さんが国際関係論という学問の大学の教授をされていたことが分かって、それならば私も国際関係論を勉強しようと思って、そのコースがある早稲田大学の法学部に入りました。

そこでは国際法を法律的な観点から勉強したのですが、民族紛争の研究をしていくと、冷戦の崩壊以降、ルワンダやリベリアなど内戦が頻発していたサブサハラ・アフリカに辿り着いたんです。そして、大学院の時にアフリカに焦点を定めて、今度は政治学的なアプローチで研究を進めていったという流れですね。

Photo=Ura Masashi ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

萱島: 紛争に関して解決法を探る、というのは具体的にどのようなことなのでしょう。

仲本: 解決するというのは一筋縄ではいかなくて、いろいろな主張を持っているグループ、例えばゲリラ組織や政府組織などがあって、そういう人たちが1つの合意を持って内戦を一度終結させて、その後に国作りに入るというプロセスを踏むのですが、その中で私は選挙の動きに特に注目していました。

というのは、紛争が終わった直後には必ず選挙が行われるからです。選挙は武器のない戦いともいわれていて、新しい国を作るために誰を大統領にするのか、誰を国会議員にするのかというのはとても大事です。うまく行けば、新しい国作りの流れに乗れますが、反対に失敗すると紛争の再発につながります。その分岐点がどこにあるのかということを研究していました。

一度社会に出て世の中を俯瞰してみよう

萱島: 大学院を修了後、まず大手銀行に就職されたとのことですが、そこから社会起業家へはどのような経緯だったのでしょうか。銀行というのは何かきっかけがあったのですか。

仲本: その時は、あまり深く考えずに就職活動をしていました。もともとは博士課程に進んで大学に研究者として残ろうかとも思っていたんですけど、そうすると理想論ばかりが大きくなって、それを現実の社会に落とし込むとなると、自分には術がなかったというか、どうすればいいのかが分かりませんでした。

であれば、一度社会に出て世の中を俯瞰してみようと思って就職活動をしたところ、銀行で拾っていただいたんです。

萱島: 新入社員としての配属はどのようなところでしたか。

仲本: 大手町にある法人営業の拠点でした。銀行での仕事は勉強にはなりましたが、社風にはなじめなかったですね。

新百合ヶ丘の社宅から毎朝7時前の電車に乗って会社に行き、基本は20時まででしたけど、たまにプラス2時間の残業をして、帰って食事をしてお風呂に入って寝るという、その繰り返しの2年半でした。その日常や仕事の内容にフラストレーションを抱えていて、毎週末は六本木のクラブで発散していました(笑)。

萱島: とってもお忙しい中で転身を考えていらっしゃったんですね。

仲本: 大学院の時、2008年頃でしたけど、TABLE FOR TWO InternationalというNPO法人でインターンをしていたんです。

Photo=Ura Masashi ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

萱島: おにぎりアクションをやっている団体ですね。ethicaでもずっと追いかけていますよ。

仲本: そうなんですか。当時、代表の小暮さんともう1人のスタッフの方と私の3人でNPOを回していた時があったんです。私は、小暮さんの冷静な視点で社会課題を解決したいという熱い思いを持っているところに感銘を受けて、すごい人がいるなあ、私も将来的にはこんな人になりたいなと思って、30歳までにアフリカで何かしら起業しようと思いました。

銀行での仕事は自分には合わないけれど、人にはとても恵まれていたので、頑張れるところまでは頑張ってみようかなと思いつつ、でも本当はやりたいことがあるのに、とモヤモヤしちゃっていて、仕事にあまり集中できず、という時期がずっと続いていました。

東日本大震災

萱島: そこから、何か辞めるきっかけがあったのですか。

仲本: 東日本大震災が大きかったですね。あの時、多くの方が亡くなられたのを見て、私は自分のやりたいことがあるのに先延ばしにしていていいのかなとすごく考えて、それがきっかけで転職活動に力を入れ始めました。

アフリカに行きたいと思っていたので、NGOや大使館を受けて、それはそれで大変でしたが、どうにか拾ってくれるところが見つかり2011年の10月に転職しました。

萱島: ついに夢に向かって歩きはじめたわけですね。銀行時代に頑張って働かれたので、軍資金は貯まったのではないですか。

仲本: いえ、全然貯まりませんでした。ストレスの発散料として全部遊んで使っちゃいました(笑)。

それで、毎月アフリカに出張するような日々がスタートして、本当は早く駐在したかったのですが、まずは東京ベースで仕事をしながら毎月現地に行って活動状況を見てといったような生活をしている中で、2014年6月からウガンダに駐在が決まりました。

Photo=Ura Masashi ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

萱島: 駐在して携わったプロジェクトは、具体的にはどんなものでしたか。

仲本: 現地で農業支援をしているNGOで、ウガンダの小規模農家をサポートする内容でした。トウモロコシや大豆など主食となるような穀物を作っていた農家さんでした。

萱島: 農業支援というと、一緒に畑に行ったりするわけですか?

仲本: そうですね。でも、農業は専門ではなかったので、どちらかというとプロジェクト管理のほうをやっていて。たまには視察に行ってトレーニングやデモンストレーションをやりましたが、作物をどういうふうに作っているのかを見たりするのが面白かったですね。

萱島: ウガンダというと暑くて乾燥した土地というイメージですけど、作物が採れるんですね。

仲本: そう思われる方がほとんどでしょうが、実際に行ってみるとそのイメージは全て覆されると思いますよ。よくいわれるのは、ウガンダというのは1年中、初夏の軽井沢みたいに爽やかなところなんですよ。

萱島: そうなんですか。それは知りませんでした。

仲本: ウガンダは赤道直下ですが、標高1200mのところにあるので、朝晩は冷えて日中は30℃くらいまで上がるというような気候が基本で、毎日雨が降って、朝降ると空気が澄んで爽やかで気持ちがいいんですよ。

それと、湖に面した国なのですが、その湖はビクトリア湖といってナイル川の源流といわれています。国中をナイル川が流れているので、土地がとても肥沃で、だからこそいろいろな穀物や食べ物がたくさん育って植生も豊かなんですよ。

それに、人もとても穏やかで治安もそんなには悪くありません。

とても暮らしやすいので、日本の真夏と極寒の時期には私はだいたいウガンダに逃げます(笑)。

萱島: 軽井沢に避暑に行く感じですね(笑)。

仲本: ええ、まさにおっしゃる通りです(笑)。

(中編に続きます)

 

続きを読む(中編)>>>

仲本千津(なかもと・ちづ)

早稲田大学法学部卒業後、2009年一橋大学大学院法学研究科修士課程修了。大学院では平和構築やアフリカ紛争問題を研究し、TABLE FOR TWO Internationalや沖縄平和協力センターでインターンを務めた。大学院修了後は、三菱東京UFJ銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2011年同行退社し、笹川アフリカ協会(現ササカワ・アフリカ財団)に入り、2014年からウガンダ事務所駐在として農業支援にあたった。2015年ウガンダの首都カンパラでシングルマザーなどの女性が働けるバッグ工房を立ち上げ、母仲本律枝と出身地である静岡葵区に株式会社RICCI EVERYDAYを設立。アフリカンプリントを使ったファッションブランドを日本で展開する。また2016年ウガンダで現地法人レベッカアケロリミテッドを設立し、マネージングディレクターに就任。2016年第1回日本AFRICA起業支援イニシアチブ最優秀賞受賞、2017年日経BP社主催日本イノベーター大賞2017にて特別賞、第6回DBJ女性新ビジネスプランコンペティション女性起業事業奨励賞、第5回グローバル大賞国際アントレプレナー賞最優秀賞を受賞。

ethica副編集長 萱島礼香

法政大学文学部卒。総合不動産会社に新卒入社。「都市と自然との共生」をテーマに屋上や公開空地の緑化をすすめるコミュニティ組織の立ち上げを行う。IT関連企業に転職後はwebディレクターを経験。主なプロジェクトには、Sony Drive、リクルート進学ネットなどがある。その後、研究機関から発足したNPO法人に参加し、街の歴史・見どころを紹介する情報施設の運営を担当した。2018年11月にwebマガジン「ethica」の副編集長に就任。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

萱島礼香

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