手段の目的化・・・してませんか?
最近INHEELSでは「エシカルファッションとは?」という質問に対して「30年後も持続可能なファッション業界と消費のしかたを実現する自爆回避的ものづくり」と答えています。30年というところがミソで、これはもう「子どもたちのために」とか「未来のために」という時間感覚ではなくて、サステイナブルな選択をするのは自分がまだ生きている間、自分のために、自爆回避するためだというメッセージを伝えたいから。ちなみに最近音楽家の坂本龍一氏はビッグイシューのインタビュー(http://blogos.com/article/84204/)で「未来ですか?あと20年持たないんじゃないですか、この世界は」と言っていましたが・・・。
それはともかく、私達は30年後も持続可能なファッションを作ること念頭に置いていて、例えばオーガニックコットンを使うとかフェアトレード取引をするとか、合成ではなく天然のモノを使うとか、そういうことは一つの「手段」にすぎないと思っています。この「手段」を「目的」化してしまうと、おかしなことになってしまいます。例えば「オーガニックコットンを使うこと」を目的化してしまって、大量の本来必要でないオーガニックコットンのTシャツを作ってしまうようでは本末転倒ですよね。INHEELSでは私達なりにその「モノ」のライフサイクルを1から考えて一番持続可能だと思われる選択をしているつもりです。
そして、そうしているとたまに、「一見持続可能じゃないような気がするけれど実はこっちのほうがいいんじゃ!?」みたいな事態が起こることがあります。
実は今年の新作に使った生地は全部、化学再生繊維のテンセル。「化学」と聞いて「それはエコじゃない!」と条件反射しそうになりますが、そこを踏みとどまって掘り下げてみます。実はこの繊維、エコ素材として広く認知されているオーガニックコットンより断然サステイナブルなのです。簡単に特徴をあげると、
・ー生産に必要な水の量はコットンに比べて約100の1
・ー原料であるユーカリ自体に殺菌性があるため、栽培過程でコットンのように殺虫剤を必要としない
・ー使用される溶剤は化粧品にも使われるそもそも無害なものだが、そのうち99%以上再利用可能かつ、回収できないものはバイオ水処理施設で完全に分解されるため環境汚染ゼロ(*Lenzing Fibers “Botanic Principles”より)
質感はてろてろとしているので、レディースでドレープ感のあるデザインのINHEELSにはもってこい。用途によってはとっても持続可能な素材であると考えています。
「天然」=良、「化学合成」=悪と決めつけず、最終的な目的 – 持続可能なファッションづくり – を念頭において、手段を目的化せずに正しい選択をしていきたいですね。
(といいつつ、エシカルジュエリーブランド「HASUNA」で婚約指輪を買うという「幸せになるためのひとつの手段」を白昼夢で夢見ていた私は、あとになってその手段が完全に目的化されていたことに気づいたのですが・・・)