彼女は運よく畑を持っていたので、自給自足の生活はできていたんですが、例えば子どもたちを学校に行かせるとか、風邪にかかった時にすぐに病院に連れていって薬をもらうといったことはできていなかったんです。ウガンダでは、教育を受けて、しかも最高峰の大学を出ていないと定期収入を得られる仕事には就けないというのが実情で、ほとんどの人が自営業で、例えば道端でものを売ったり、男性だとタクシーの運転手になったり、どうにか日々お金を稼いでいました。
ただ、ナカウチ・グレースはなけなしのお金を投資して、自分の生活を変えようという考えでちゃんと行動に移していて、そこが他の人とは違うなと思って、何かやるなら彼女を誘って一緒にやりたいなあというのがきっかけでした。
彼女を巻き込んで、他の人にも声をかけて3人プラス私の4人で始めたんですけど、ある時聞いてみたら皆シングルマザーだといっていて、調べてみたら成人女性の30%くらいがシングルマザーとして生活しているような統計が出てきたんです。
なかでも、都市部で暮らすシングルマザーは、土地もなければ畑もないので、家の家賃も食費も自分で払わなければならなくて、追い込まれやすい状況にあるんですね。農村部に暮らすシングルマザーだったら、実家に戻れば畑と家はあるので、助けてもらいながら何とか暮らしていけます。でも、そうじゃないと食べ物を買うことすらままならない状況で、追い込まれている人がたくさんいるんです。
そういう人たちの中にも10年とか真面目に働いてきて技術を持っている人もいます。そんな人たちがまずは報われるように、自分自身を取り戻すきっかけができればいいなあ、と。ただ、思っているだけでは何も変わらないので、取りあえず自分で始めてみようと会社を立ち上げたわけです。
萱島: シングルマザーが生まれやすい土壌があるんですね。
仲本: 社会的にそういう土壌はあると思います。結婚に関する価値観というか概念が日本とは全く違っていて、日本だったら婚姻届を出して、法律的な拘束力が生まれると思うんですけど、ウガンダではそういうのがなくて、コミュニティの中で認められればそれでいいということなのです。
萱島: 離婚も同じような感じですか。
仲本: そうです。双方の同意があれば成立するといった、そんな感じです。
慣習的に一夫多妻制があったり、男尊女卑の考え方も根深くて。家庭内暴力が起こりやすかったりとか、自分の知らないところで別の人と家族を作っていたりとか、夫婦間の問題が起こりやすい状況ではありますね。そうすると女性が子どもを連れて家を出ていくということが結構頻繁にあったりします。