【ethica副編集長対談】RICCI EVERYDAY 仲本千津さん(後編)
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【ethica副編集長対談】RICCI EVERYDAY 仲本千津さん(後編)

Photo=Ura Masashi ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

中編に続き、今回の副編集長対談はウガンダ発のファッションブランド「RICCI EVERYDAY(リッチーエブリデイ)」創業者の仲本千津さんを訪ねました。

「RICCI EVERYDAY」は、豊富なバリエーションのアフリカンプリントの中でも、ひときわカラフルでプレイフルな生地を使用し、デザイン性のみならず機能性も兼ね備えたバッグやインテリアアイテム、アパレルを展開しているウガンダのライフスタイルブランドです。

ブランド創業より5周年を迎えた仲本さんに、起業までの道のり、今後の事業展開、将来の夢についてお話を伺いました。

“好ましい”より、”好き”を。

萱島: 5周年を迎えて「RICCI EVERYDAY」は「“好ましい”より、”好き”を。」という力強いメッセージを新たに発信されています。日本の女性たちに何を伝え、どのような価値を提供していきたいですか。

仲本:私たちはいろいろな関係性の中で生きていると思うんですけど、その中で、ありたい姿ではなくて、あるべき姿、例えば期待感とか役割を押しつけられることがあると思います。

でも、そちらにばかり目が向いてしまうと、本当に自分が何がしたいかとか、自分って本当はどんな人なのかを忘れてしまうことがあると思っていて、私も銀行に勤めていた時はとても苦しかった。みんなが同じスーツを着て、同じような仕事をしている中で個性っていったいどこにあるんだろうとよく考えていました。

その時、自分自身が消えていってしまうような感覚に陥っていて、その中で私のささやかな抵抗運動としては、スーツは仕方なしに着るんですけど、中のカットソーをすごい派手な色にしたり、網タイツを履いてみたり、そういうところで個性を表現して自分はここにいるんだということを出したいと思いました。

私は他の人がしないような服装をすることで、自分は自分と思えるようになりました。そこから自分ってこういう洋服を選ぶんだ、こういう色が好きなんだとか、私はキムチ鍋が好きなんですけど(笑)、今夜はキムチ鍋が食べたいから、何をいわれても絶対にキムチ鍋を食べようとか、自分の周りの小さなところから自分というものを出していったら、自分は何をして生きていきたいのかに気づけたんです。

今、私たちは「”好ましい”より、”好き”を。」と言っているんですけど、誰かの願望を基準に好ましいかどうかというよりも、自分が好きかどうかというところを大事にしよう、ということを訴えていきたいと考えています。

萱島: 先進国のなかでも日本人は自己肯定感が低いといわれていますね。自分の「好き」を大事にすることが自分自身を大切にすることにつながるのだと私も思います。

Photo=Ura Masashi ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

定期便サービスを開始

萱島: 最近アケロ・ボックスという定期便サービスも始められましたね。毎月違うテーマで世界を広げるきっかけとなるような読み物「5+1 senses」や心にスッと入ってくるメッセージが書かれた「ステートメントカード」も入っているのがとても素敵ですね。

仲本: アケロ・ボックスは今、力を入れて作っています。

コロナ禍で一番残念だなと思ったのは、偶然がもたらしてくれる気づきや出会いがなくなってしまったということなんです。基本的に家の中で過ごすとなると、入ってくる情報量もかなり限られてきますし、今までだったら道端を歩いていて誰かに偶然会って、その時に例えば面白い展示会があるから行ってみたらと教えてもらったり、何かのイベントに出ていろいろな情報を得て、ちょっと調べてみようかなと本屋さんをうろうろして、その中で気になった本を読んでみたりしていたんですが、そういう偶然の出会いが減ってしまった。アケロ・ボックスを通じてお客さまにそういうきっかけを提供できないかなあと思って、五感に訴える気づきをテーマに始めました。

Photo=Ura Masashi ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

萱島: 今コロナで家にいることが多くなって、観葉植物もいいんですが、こういう明るいビビットなものが家の中にあると、刺激があるというか、退屈な家の中が華やぎますよね。

仲本: そうなんですよ。アケロボックスに付属するアフリカンプリントもお客さまの使い方次第で、例えばお弁当を包んで持っていっていますとか、何か友だちに渡す時にアフリカンプリントを使っていますとか、おうちにある収納箱にかけて、毎月来るので並べて楽しんでいますとか、いろいろなご意見をいただいて、皆さんクリエイティブな使い方をしてくださっているなと嬉しく思っています。

Photo=Ura Masashi ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

その先にある風景を見たい

萱島: 「RICCI EVERYDAY」を今後どんなブランドに成長させていきたいですか。それと、仲本さんが今持っていらっしゃる夢はどんなことですか。

仲本: 生涯をかけて、社会通念とか固定観念を乗り越えて、例えば女性が生きやすくなったり、アフリカというところへのイメージが変わって、その先にある風景を見たいというのが、今の私の一番の夢ですね。そのためだったらどんなことでも時間をかけてでもやっていきたいと思っています。

この50年間、先進国から一方的に情報とかお金とか人が送られてきて、アフリカは援助体質だといわれたり、なかなかそこから脱却できないと言われもしているんです。でも、私が見る限りでは、アフリカは私たちにとっては対等なパートナーになり得る、一緒に何か新しい価値を生み出していけるところだと思います。

Photo=Ura Masashi ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

アフリカにはプロフェッショナルがいて、その人たちが素晴らしいものを作っているということを外に発信していきたいですし、ウガンダの人が日本のオフィスで働いたりしてもいいですよね。うちの会社は、国籍とか人種とか性別とか年齢とか、本当に一切バリアがないんです。上は60代のうちの母ですし、下は学生さんも一生懸命働いて、いろいろと意見を出したりしている。ダイバーシティーによって支えられているなと思うので、その流れをもっと加速させて私たちだからこそ作り出せる価値というものをちゃんと見出して、それによって固定観念を打破していくということをやっていきたいです。

それはプロダクツを通じてかもしれないですし、私たちの考え方とかメッセージ、あるいは別の全く新しい業態かもしれませんが、生涯を賭けてやっていきたい。これが最近の夢ですね。

私によくて、世界にイイ。

萱島: ethicaは「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトにしています。最後に、仲本さんにとっての「私によくて、世界にイイ。」とは何かをお聞かせください。

仲本: 何でしょう、たくさんあるんですよ。

「私によくて、世界にイイ。」ものに、私は囲まれているなと思っていて、私にいいものってドキドキしたり可愛いって思うもので、それに加えて、作り手の人の思いや技術がこもっていたりするものは、私にも世界にもいいものだと思います。最近はそれがだんだん増えてきていて、そのブランドのコンセプトを知れば知るほど欲しくなります。そしてうちのブランドも「私によくて、世界にイイ。」と思っています。

私をドキドキさせる可愛いプロダクツに出会うことが私によくて、それをみんなに広げていくことが世界にイイことですね。

Photo=Ura Masashi ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

萱島: とても素敵なお話をたくさんお聞かせいただき、今日はありがとうございました。

仲本: こちらこそありがとうございました。

(前編)を読む>>>

仲本千津(なかもと・ちづ)

早稲田大学法学部卒業後、2009年一橋大学大学院法学研究科修士課程修了。大学院では平和構築やアフリカ紛争問題を研究し、TABLE FOR TWO Internationalや沖縄平和協力センターでインターンを務めた。大学院修了後は、三菱東京UFJ銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2011年同行退社し、笹川アフリカ協会(現ササカワ・アフリカ財団)に入り、2014年からウガンダ事務所駐在として農業支援にあたった。2015年ウガンダの首都カンパラでシングルマザーなどの女性が働けるバッグ工房を立ち上げ、母仲本律枝と出身地である静岡葵区に株式会社RICCI EVERYDAYを設立。アフリカンプリントを使ったファッションブランドを日本で展開する。また2016年ウガンダで現地法人レベッカアケロリミテッドを設立し、マネージングディレクターに就任。2016年第1回日本AFRICA起業支援イニシアチブ最優秀賞受賞、2017年日経BP社主催日本イノベーター大賞2017にて特別賞、第6回DBJ女性新ビジネスプランコンペティション女性起業事業奨励賞、第5回グローバル大賞国際アントレプレナー賞最優秀賞を受賞。

ethica副編集長 萱島礼香

法政大学文学部卒。総合不動産会社に新卒入社。「都市と自然との共生」をテーマに屋上や公開空地の緑化をすすめるコミュニティ組織の立ち上げを行う。IT関連企業に転職後はwebディレクターを経験。主なプロジェクトには、Sony Drive、リクルート進学ネットなどがある。その後、研究機関から発足したNPO法人に参加し、街の歴史・見どころを紹介する情報施設の運営を担当した。2018年11月にwebマガジン「ethica」の副編集長に就任。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

萱島礼香

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