[連載企画]人を癒す希望の火を灯す(第2話)キャンドル・ジュンさん SONG OF THE EARTH 311 – FUKUSHIMA 2021 – 【ethica副編集長対談】
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[連載企画]人を癒す希望の火を灯す(第2話)キャンドル・ジュンさん

(第1話)に続き、今回の副編集長対談はキャンドルアーティストCANDLE JUNE(キャンドル・ジュン)さんとオンラインで行いました。

キャンドル・ジュンさんは、1994年よりキャンドル制作を始め、2001年より平和活動『Candle Odyssey』を開始。紛争地や被災地を巡り、キャンドルに火を灯す活動を行っています。2011年3月11日に発生した東日本大震災から10年、被災地支援を現在まで続けてこられ、毎月11日の月命日には必ず現地で復興イベントを実施されています。

そんなキャンドル・ジュンさんに、キャンドルとの出会い、ご自身が率いる⼀般社団法⼈LOVE FOR NIPPONによる東北被災地域での支援活動、そして、これからの未来の作り方についてお話を伺いました。

自分が生きると決めたから

キャンドル・ジュン(以下CJ): そんなことをしていて、それなりに自分では悟ったような気持ちになって、また日常に戻っていったんですけど、気がついたら時折、瞑想を必要としていることを感じて。またキャンドルを点して、食べない・飲まない・寝ないで自問自答をするという、そういう繰り返しをしている時、これって自分が嫌いだった教会に通っているのと変わらないじゃないかと思ったんです。悟ったつもりでも何かしらで不安定になるとまたという自分が嫌になりました。

すると今度は、死ぬことを一生懸命考えて、いろいろな死に方も考えましたが、自分から死を作り出すことはどんな理由があっても自殺ととらえられてしまって、自分を知っている周りの人には自殺したというアクションが自分の最期になると考えた時、それはどうも違うなと思い直しました。

そして、とにかく今までの繰り返しをやめようと思って最後の瞑想の時間を持ちました。いつものように食べない・飲まない・寝ないで瞑想していた3日目、無意識のうちに近所のスーパーに行ってお弁当を買いました。その時、レジのお母さんに「ありがとうございます」といわれて、その言葉が僕には〈生きることを選択してくれてありがとう〉って聞こえちゃったんですよ。

本当の敗北を知ったというか、自分で決めたルールなのに、食べ物を買うという、生きるために一番直結する部分のところを破ってしまって、お弁当を買った。その時、ああ、もう負けだと思ってお弁当を食べて、それじゃあ、どうやって生きるのかということだけをローソクを点して集中して考えようと思って、ローソクを見たら、それは、かけらを溶かしたりして自分で作ったローソクだったんですね。そのローソクを見た時、自分で自分の寿命を作っていたんだな、これでいいんだと思って、自分が生きると決めたから自分で命を作ろうと考えてキャンドルを作ろうと決心したんです。

僕にとって、キャンドルを作ることはイコール自分で命を作ることですから、そのキャンドルが売れたら、それでご飯が食べられるようになるねとか、そのくらいのシンプルな構造になれば、もう悩むこともなくなるし、その部分で立ち止まることもなくなるだろうと思ったんです。自分のために作って点すということからスタートして、何か考える時も必ずローソクを点して考えるクセもつきました。

ダライ・ラマ14世が提唱した地球規模のプロジェクト「世界聖なる音楽祭」

萱島: ご自身のためだけだったのが、その後さまざまなイベントやセレモニーでキャンドルを点すようになるわけですね。

CJ: はい、そうです。2001年にダライ・ラマさんの呼びかけで「世界聖なる音楽祭」が広島で開催された際、トランぺッターの近藤等則さんから「キャンドルで平和の火を点してくれないか」というオファーがあって、これが自分のために作って点すというルールから、自分の火ではない平和の火を点すというきっかけになりました。

この時、平和の火ですから、そこには「消さないように大切にキープしていきましょう」「原爆の大変さ、悲惨さを訴えていきましょう」という、すごく強い思い入れの入っている火を点しました。それゆえに今の自分があるといえるでしょうね。

萱島: その2001年の「世界聖なる音楽祭」がジュンさんの活動のスタートということになるのですか。

CJ: いえ、すでに1997年くらいからファッション系や音楽系のイベントとかでやり始めていました。でも、当時はまだキャンドル・デコレーションというジャンルがないところからのスタートでしたので、イベントでは安全第一ということをとにかく意識することと、各現場でも自分がそれを考慮していることを訴えてきました。その中でキャンドルは必要な時に点して、役割を終えたら消す。そこまでをセットということでやってきましたので、平和の火を点した時も祈りが終わったら消すということをしなければ、自分の中では終わらないと思いました。

「世界聖なる音楽祭」の時に感じたのは、この平和の火がずっと消してもらえないのはすごく可哀想だということでした。8月6日に多くの人が広島に集まるのも「痛かったでしょう」「辛かったでしょう」といって集まるよりも、「あなたたちの犠牲のもとに、時間はかかったけどようやく世界が学んで世界中から核兵器がなくなったよ。ありがとう」って感謝を捧げる日にしなければいけないんじゃなかと思って、それをいつかは自分が実現させたいと平和の火を点して旅をしたり、アメリカのテロのあった場所を巡ったりなどの活動を始めました。

© CANDLE JUNE / ELDNACS INC. ALL RIGHTS RESERVED.

萱島: 火を点さなくてもいい日は、来るんでしょうか。

CJ: いつかはそうしたいですね。原発のない世界ができたという日を迎えたくて、いつか広島、長崎では悲しみの平和の火を点すのではなくて、喜びの平和の火をみんなで点せるのではないでしょうか。

広島と長崎で原爆の日を「ありがとう」といって感謝する日に変えたいんですよ。これからは8月の原爆の日には、みんなに感謝をする火を点して、みんなで平和な今を喜び合うお祭りにすることが広島、長崎でできたほうがいいんじゃないでしょうか。そうじゃないと、毎年毎年、あの頃になると、みんなが黒い服装をして「痛かったよね。辛かったよね」っていうわけでしょう。そうなると亡くなった人たちはなかなか成仏させてもらえないんじゃないかと思うんですよ。

そういう命日にキャンドルを点していると「これは追悼のともし火ですか」といわれますが、自分からすると、亡くなった人たちの気持ちになって考えたら、福島や宮城、岩手で津波に亡くなった人たちは自分が亡くなったことをまだ理解していないのではないでしょうか。実際に行方不明の方もたくさんいらっしゃって捜索している家族がいるということは、さまよっている人もいるんじゃないかと思った時に、特に福島でいえば帰れない町もあるわけで、その亡くなった人たちの魂は福島の現状や風化しつつある今を憂いているかもしれません。平和利用の原発というものもあって、実際に原発反対運動をやってみた結果が原発の事故とつながって、その事故の場所である福島にずっと通い続けているのも、いつかは世界中の人たちから寄せられた「福島から学んだよ。ありがとう」というメッセージを福島で福島の人たちに送りたいという思いがあるからですね。

連載企画「人を癒す希望の火を灯す/キャンドル・ジュン SONG OF THE EARTH 311 – FUKUSHIMA 2021 –」全8回にわたってお届けしてまいります。どうぞお楽しみに。

 

【連載】「人を癒す希望の火を灯す」を読む>>>

CANDLE JUNEキャンドルジュン

アーティスト/ フィールドデザイン/ ディレクター

1994年、キャンドル制作を始める。「灯す場所」にこだわり様々なフィールドで空間演出を行い、キャンドルデコレーションというジャンルを確立。

2001年、原爆の残り火とされる「平和の火」を広島で灯してからは「Candle Odyssey」と称し、悲しみの地を巡る旅を続ける。

2011年、東日本大震災を受けて「一般社団法人LOVE FOR NIPPON」を発足し支援活動を始める。

ethica副編集長 萱島礼香

法政大学文学部卒。総合不動産会社に新卒入社。「都市と自然との共生」をテーマに屋上や公開空地の緑化をすすめるコミュニティ組織の立ち上げを行う。IT関連企業に転職後はwebディレクターを経験。主なプロジェクトには、Sony Drive、リクルート進学ネットなどがある。その後、研究機関から発足したNPO法人に参加し、街の歴史・見どころを紹介する情報施設の運営を担当した。2018年11月にwebマガジン「ethica」の副編集長に就任。

ーーBackstage from “ethica”ーー

東日本大震災から10年を迎える福島で、CANDLE JUNさん率いる一般社団法人LOVE FOR NIPPONによる追悼復興イベント「SONG OF THE EARTH 311 – FUKUSHIMA 2021 -」が3月10日(水)から4日間にわたり開催されました。『One more action !』をテーマに、開催が叶わなかった2020年の想いとともに、CANDLE 11th、3.11夢の大凧あげ、FESTIVALやシンポジウムといったイベント実施されました。詳しくは公式サイトをご覧ください。

SONG OF THE EARTH 公式サイト
http://songoftheearth.info

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

萱島礼香

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