(第9話)「娘の新しいおともだち 」【連載】かぞくの栞(しおり) 暮らしのなかで大切にしたい家族とwell-being
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(第9話)「娘の新しいおともだち 」【連載】かぞくの栞(しおり)

心身ともに健康で、社会的にも満たされた状態であることを意味する「well-being」。

一人ひとりがwell-beingであることが、社会や環境をより良くしていくことにつながるのだと思います。

では、「私にとって良い状態」ってどういうものなんだろう?

そのヒントは、意外と何気ない日常の中に散りばめられているのかもしれません。

新しく何かを始めるのも大切だけど、まずは身近な人や自分が「ごきげん」でいることから。

家族と過ごすなかで感じる、そんな一瞬一瞬を切り取って、綴っていけたらと思います。

だんごむし。

最近娘が夢中になっています。

 

家から駐車場に向かう途中でしゃがみこみ、保育園にお迎えに行けば、おもちゃのおわんに多数入ったのを意気揚々と見せてくれ、外を歩いていると、気がつけば娘の両手の指先にはだんごむしがおとなしく丸まっています。

 

つい先日には、実家の庭で大小たくさんのだんごむしをつかまえました。

牛乳パックで作ってもらった簡易虫かごに入れてニコニコ観察していた数分後、「ままー! たいへん!」と娘の叫び声。そばに駆け寄ると4、5匹のだんごむしが牛乳パックから脱走して四方八方に歩いています。

小さな指先で一生懸命1匹ずつ捕まえてパックに戻すものの、その間に違う1匹が脱走。「もう、どうしたらいいのー!」と慌てふためいている娘の姿に、大変だと思いつつも思わず大笑い。

 

その後あちこち探し回ったものの、だんごむしの足は意外と速く2匹は行方不明に……。

 

出先で捕まえた虫を「つれてかえりたい」と言われるたび、「うーん、虫さんのぱぱとままが心配するからねぇ」などとお話しつつ、娘が虫かごのフタを開ける姿を想像し(まだおうちに入れるのは危険かも……)と、だんごむし脱走事件が頭をよぎるのでした。

娘の虫好きは昔からかというと、そうではなく。

ほんの1年前には、アリやクモ(それもとっても小さい)を見ただけで「いやぁぁぁあ! こわい〜!!」と泣き叫びながら、私の足にしがみついていました。

 

慎重派で、特にはじめての人、場所、ことにはかなり警戒心の強い娘にとって、予測できない動きをする虫は怖く感じていたんだろうなぁと思います。

 

私もどちらかといえば虫は苦手なのですが(特に黒光りするものや足がいっぱいあるものなど……)、自然や生き物に親しんでほしいなぁと思っていた親にとって、虫は断固拒否! な娘の姿にはびっくり。

「これはおとうさんアリかなー」「こっちはあかちゃんかなー」

虫を見かけるたびに怖くないことを遠回しに伝えつつ、慣れる日まで気長に待つかと思っていたのでした。

 

なので、娘の虫への興味が自然と湧いてきたことはとても嬉しく、ミミズでも何でも平気で素手で捕まえる姿に、目を丸くするこのごろです。

虫の生態は知れば知るほど面白く、絵本に、お散歩先に、「虫」がキーワードになりつつある最近のわが家。

 

これまでキャベツや青菜の葉っぱに虫がついていたら、恐る恐る外に逃がしていたのですが、最近は「青虫いたよ!」とむしろラッキー! な気分で娘と観察している自分自身の変化にも驚いたり。

目下の楽しみは娘とセミの孵化を見ることです。

 

思いがけず訪れた娘の虫ブームは、普段目を向けることのなかった世界を豊かに広げてくれたのでした。

【連載】キコの「かぞくの栞」を読む>>>

季子(キコ)

一児の母親。高校生のころ「食べたもので体はできている」という言葉と出会い食生活を見直したことで、長い付き合いだったアトピーが大きく改善。その体験をきっかけに食を取り巻く問題へと関心が広がり、大学では環境社会学を専攻する。

産後一年間の育休を経て職場復帰。あわただしい日々のなかでも気軽に取り入れられる、私にとっても家族にとっても、地球にとっても無理のない「いい塩梅」な生き方を模索中。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

季子(キコ)

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