ethicaがメディアパートナーとして参加した「サステナブル・ブランド 国際会議2021横浜(SB 2021 YOKOHAMA)」では多くのセミナー、ディスカッション、ワークショップが繰り広げられ、さまざまな貴重な提言や発表が紹介されました。同時開催イベントとして催された「第2回全国SDGs未来都市ブランド会議」では、持続可能なまちづくりに向けて、企業と自治体の連携事例をもとに活発な議論が展開。今回は、大手町・丸の内・有楽町地区を舞台に、SDGs達成に向けた活動を推進する、三菱地所株式会社の井上成氏のプレゼンテーションをご紹介します。 (記者:エシカちゃん)
ひも解けば武家屋敷の跡地からのスタート
ご紹介いただきました三菱地所の井上でございます。それでは早速始めたいと思います。今ご覧いただいている「大丸有SDGsACT5」のご紹介になります。
その前に、我々が大丸有といっております大手町、丸の内、有楽町地区のまちづくり体制について前段でお話しします。
大丸有というのは東京駅と皇居の間、約120ヘクタールに大規模ビルが100本くらいある地域です。ここは4300の事業所があり、約28万人というワーカーが行き来している場所でございますけど、ひも解けば1890年に武家屋敷の跡地を買ってからまちづくりがスタートしています。
その後、「まちづくり協議会」が1988年にできまして、それを皮切りに今のまちづくりが始まっております。この右側に「大丸有まちづくり懇談会」というのがありますが、まさに今日、千代田区の印出井部長に来ていただいておりますけれども、地元で合意したいろいろな約束事を、今度は行政、あるいはインフラ事業者のJRさんともきっちり共有をして、合意をしてまちづくりを進めているというのがこの大丸有地区の大きな特徴です。一般的にはP.P.P(パブリック・プライベート・パートナーシップス)といいますけど、そうしたまちづくりでございます。
「大丸有環境共生型まちづくり推進協会」を起案・立ち上げ
ハードだけではなくてソフト、特に今回のサステナブル・ブランド国際会議に関係する話としていえば、左側の緑のところ、2007年に「大丸有環境共生型まちづくり推進協会」というものを、実は私が起案し立ち上げたのですが、そこがソフトを中心にそうした活動のエンジンになっています。
120ヘクタールのエリアはビルの集まりというよりは道路、あるいは広場といったものも含めて、町を一体的に使っていくといったところの公的空間をマネジメントしていくところが、例えば右側の赤いところに書いてあるリガーレという「大丸有エリアマネジメント協会」になります。
昨年「大丸有SDGs ACT5実行委員会」を立ち上げ
こういったまちづくりの推進体制を下敷きにしながら、昨年「大丸有SDGs ACT5実行委員会」というものを立ち上げたということになります。三菱地所が実行委員長になりながら、地方にも基盤を置く農林中央金庫、あるいはメディアとして日経グループと一緒になって、5つのテーマ(*)でさまざまなアクション、それを我々はアクトと呼んでいますが、座学や知識のインプットだけにとどまらず、2030年に向けた17のゴールの解決策を少しでも早く見つけるために、各企業が連携してアクションをこなしていくということを念頭に活動をしたということになります。
(*注)5つのテーマ:「ACT1 サステナブル・フード」「ACT2気候変動と資源循環」「ACT3 WELL-BEING」「ACT4ダイバーシティ&インクルージョン」「ACT5コミュニケーション」
このページですが、アウトカムであり、課題でもあります。いろいろな企業がどんどんつながっていって、そういったリソースを各社が持ち寄って、例えばバリューチェーンの川上から川下までが、それぞれの得意分野で協力して解決策を見出していくというような、そのきざしというものを確信できたというのが成果ではあります。
そして、具体的に8000人の人を巻き込んだり、45社のパートナーから協力を得たりとか、そういうことができたわけですけど、我々が持っている課題感はまだまだ足りません。これをもっともっと個人も企業も巻き込んで、その解決策を1秒でも早く見出していくためには、やることがもっとあるんじゃないか、というのが我々が感じた課題ということになります。
東京都が実施するSDGs活動喚起事業「東京ユアコイン」
活動の詳細は、本日は割愛せざるを得ませんけれども、生分解性プラスチックを使ったサーキュレーションの取り組みだとか、社員食堂のフードロスがどのくらいあるのかを調査したりといった、わりと突っ込んだ取り組みもあれば、例えば7日間、24本の映画を昼夜ずっと上映するというSDGs映画祭といった啓発系の柔らかいものなど、さまざまなことをやったわけですが、我々としてはまだまだ巻き込みが足りないなあと思っております。
それを少しでも補うために、今、検討しているのが、去年、東京都の事業として「東京ユアコイン」というのをやりました。オフピーク通勤やテレワークといった時差Bizの推進や、プラスチックごみの削減、そういうことをやるとポイントがついて、いろいろなポイントの使い道、出口を用意して社会実証実験をやったわけですが、これを応用して、よりブラッシュアップして個人の活動の見える化、あるいはポイントをつけることによってインセンティブを作っていくというようなことで、今年もぜひACT5の2年目も頑張りたいと思っているところです。
私からのプレゼンテーションは以上です。
三菱地所株式会社の井上成氏のプレセンテーションに続き、ここからは、セッションで行われたディスカッションを紹介していきます。
――大手町、丸の内、有楽町という3地区は地域のゾーニングとしてもブランドとしても十分に他の地域と戦える力を持っています。この3つを束ねて、いわゆるアベンジャーズ状態にしてゾーニングしたところに、どういう目的やメリットがあるのでしょうか?
1890年に三菱合資会社が買ったところがベースになっていて、それがまさに大丸有として100年以上にわたって町を作ってきたということで、インフラが揃っているということなので、都市計画的にもおなじような都市計画を打てる場所ということで3つを束ねてスケールメリットを出そうという発想でございます。
――開発とSDGsの関係をどのようにお考えですか?
まさに、まちづくりそのものがサステナブルになっていかないと続かないわけですから、トリプルボトムラインといわれている経済、社会、環境にもきちんと目配せをしながらバランスを取ってやっていくというのが、まずは重要だなと開発の目線では思っています。また、運営のクオリティをより高めていかないと、その持続可能性は棄損してしまいますから、SDGsの視点でまちの省エネルギーも含めて、物質の廃棄といったところも含めて、運営をきちっと回していくというのがSDGsにつながるのではないかと考えています。
そして、もう1つ付け加えたいのが、大丸有というところは他の地域、あるいは地方に支えられているということです。モノを消費し作り、ごみを出しているわけですから、それをどう地域に還元していくかというのも大きなテーマだと思っていて、去年のACT5の活動の中でいえば、高速旅客バスの空きトランクを活用して、地方の物産を既存のインフラを使いながら持ってきて、一大消費地としてそれを消費する。そういうことで生産地が潤うということですから、そういった地域との関係性というのも十二分に視野に入れながら、まちづくりを実際に運営していくといった視点を持っていけば、サステナブルと開発というのが整合するのではないかと考えています。
――大丸有がこれから先どのように進んでいくのかというところに興味があるのですが、その点はいかがでしょうか?
働き方とかライフスタイルが多様化してきているので、みんなが同じ時間に出勤するというワークスタイル自体が、これからはなくなるだろうなと思っています。そういう意味でいうと、その人それぞれに目的があり、時間があるわけですから、それに対応できる町、機能といったものを提供していきたいと思っています。
今回の「サステナブル・ブランド 国際会議2021横浜(SB 2021 YOKOHAMA)」レポート記事は如何でしたでしょうか。
注目すべきセミナー、ディスカッション、ワークショップの様子を引き続きethicaで連載していきますので、お楽しみに!
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記者:エシカちゃん
白金出身、青山勤務2年目のZ世代です。流行に敏感で、おいしいものに目がなく、フットワークの軽い今ドキの24歳。そんな彼女の視点から、今一度、さまざまな社会課題に目を向け、その解決に向けた取り組みを理解し、誰もが共感しやすい言葉で、個人と世界のサステナビリティーを提案していこうと思います。
私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
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