一日のなかで最も慌ただしい朝。
保育園の荷物をまとめたかばんを玄関に置き、洗面所で身支度をしていると「ままー!こぼれてるー!」とキッチンの方から聞こえる3歳の娘の叫び声。
お水でもいれようとしたのかなと不思議に思いながら向かうと、がーーーーーーーーーん。
床一面に広がる梅シロップ……。
それを前に、やってしまったという顔でしゃがんだ姿勢のまま固まっている娘。
お砂糖を行き渡らせるために引っくり返して置いていたビンのフタの金具を開けてしまったようで、そこからシロップがどくどくと溢れ出していたのでした。
悲惨な状況と裏腹に、キッチンに広がる梅の爽やかな甘い香り。
なにやってんのー! と叫びたい気持ちを抑え、ひとまずビンを起こしてシンクへ持っていき、異変を感じたのか「どうしたん?」と様子を見に来た夫に、手も足もベタベタな娘のシャワーを託し、ベタつくシロップを古いバスタオルですくうようにしてゴミ袋にいれ、仕上げの水拭きをしながら(飲むの楽しみにしてたのにな……)と思わず深い溜息。
シャワーを終えて戻ってきた娘に話を聞くと、「ふたあけちゃったから……。足があたってん!」
「そっか、今度からどうしたらいいかな?」
「ふたをあけない。きをつける」
「そうやね」
「……ごめんなさい」
もう少し話をしたいところでしたが、保育園に送らなければいけない時間も迫っており、とりあえずこの場は終わらせて家を出ることに。